87歳の雑感( 260) 70代からの生き方の一つに、身近な地域社会における諸活動がある。

 先日、新聞を読んでいたら、広告欄に2022年上半期ベストセラー第1位「70歳が老化の分かれ道」著者医師和田秀樹氏の広告が目に入った。

 本の中身は読んでいないので知らないが、広告文は、タイトル「70歳が老化の分かれ道」{70代からの生き方があなたの「老いの速さ」と「寿命」など実に 的確な表現に感心した。70代を通過し、90歳に迫っている自分の体験からして、まさにその通りと言えるからだ。

 人生を大きく区切ってみると、20代〜60代は、現役時代の「人生の最盛活動期」であり、70代〜80代は「最後の活動期」である。

 「人生の最盛活動期」の役目を終えたら、次は「最後の活動期」が待っている。現役時代が人生の全てではない。「有終の美を飾る」ことの大切さは昔から強調されてきた。また、「終わりよければすべてよし」とも言われてきた。実に70代の「最後の活動期」こそが人生の分かれ道の決め手となる。

 特に、70歳からの10年間の生き方が、自分の「老いの速さ」と「寿命」を決めているからだ。老いの速さと寿命を制するものは、この時期に何を目標とし、何をやり遂げるか、健康のために何をなすべきかが最も重要ではなかろうか。

 そこで、 70代からの生き方の一つに、医学的な見地からの生活管理法や健康法ではなく、身近な地域社会の諸活動への参加を通しての実践によって、充実した70代を過ごすとともに地域社会に貢献する方策を推奨するものである。それが自動的に「老いの速さ」と「寿命」を決めるからである。

 地域社会の諸活動に積極的に参加する。

 今日「最後の活動期」は、地域社会にとどまらず、価値観の多様化と行動の広範化によって、広い世界があり、自由に選択できる時代になった。また、家に引きこもり、個人的な趣味を楽しんだり、自由行動で70代を有意義に過ごす人も多くなった。

 どの道を進むも有意義であるが、単独ではなく、地域社会、人々との繋がり、絆があれば、人生をさらに豊かにするものがある。

 自治会、町内会、シニアクラブなど地域社会での活動は、地域の自治、住民相互の連帯、福祉、環境美化、防犯、交通安全など様々な分野がある。

 固い決意と勇気をもって、初回門をくぐれば、あとは自動開門である。

❷   地域社会の諸活動で経験・得意・特技・持ち味を生かして活動する。

 人生の最盛活動期は、学歴、出身期別、年功序列、家門、財産などさまざまな要素と運に左右される。そこには、満足感のある人もあれは、不運な人生だったと思う人もいる。

 現在の地域社会は、古い因習が強かった時代から、新世代となって、開かれた社会となってきた。昨今はむしろ、町内・隣保の交流、連帯が減少する傾向にある。所によっては、隣の人は何者ぞという時代に変化しつつある。

 自治会・町内会やシニアクラブなどの諸活動では、現役時代の地位など全く関係ない世界である。縦と横の関係が少なく、みんな平等である。

 地域社会の諸活動において、現役時代と異なり、やる気と意欲さえあれば、過去の経験・得意な分野・特技・持ち味を生かして活動することができる。 

❸ 積極的に地域社会の役割を引き受け、実力を発揮する。

 大部分の人は、現役時代、職業を通じて自分の役割を果たしてきたが、自分の住んでいる地域社会に直接関わり、貢献することは少なかったのではなかろうか。

 そこで、70代の活動期は、自治会・町内会、シニアクラブなどに関わり、自主積極的に参加し、出来れば、役員を引き受けて活動すると新たなる世界が開けてくるものである。地域社会にはさまざまな活動があるからだ。

 地域社会活動は、順番、くじ引き、仕方なくではなく、自ら寒極的に誠心誠意、全力投球で奉仕すると別世界が開けてくるものである。本当の自分の実力を知ることもできる。

 地域社会における諸活動は、無償の奉仕活動が主である。これらのすべてが「自分のために行うものである」と割り切ると気持ちもすっきりとし、物事が円滑に進展するものである。「地域社会のため、他人のためではなく、自分のために活動する」との固い信念と考え方を堅持すると諸問題に直面しても解決しやすい。自らの諸活動が、結果として地域社会に貢献することになれば一挙両得というものである。

 第2の人生を自己満足だけで終えるのではなく、自分のために行った諸活動が、やがて地域社会に役立ち公共性と社会性を発揮してくると、密かな誇りと満足感をもって人生の終末を迎えることができるのではなかろうか。