昭和の航空自衛隊の思い出(67)  メシは行き渡ったか、食いはぐれはないか

 

1. メシは行き渡ったか、食いはぐれはないか

  昭和35年2月、航空自衛隊幹部候補生学校に入校し、第23期幹部候補生課程(部内)で10か月間、初級幹部自衛官として の職務を遂行するに必要な知識及び技能を修得させるための教育訓練に励んだ。

  部隊指揮官になったら、食事は、「部下全員にもれなく行き渡っているか確認してから食事を取れ」「部下が食べ始めたのを確認してからハシをつけよ」と徹底して教育指導を受けた。部隊行動において、1名でも「食いはぐれ」を出すようでは指揮官失格だ。

 それは自衛隊だけではなくて、どこの社会においても当たり前のことだが、トップに立つ者の責務でもある。指揮官・幹部として部隊規模の大小を問わず、率先垂範して初めて指揮統率が成り立つ。

 ある人の訓育に関する資料を読んでいたら、中国三国時代の宰相、諸葛孔明の兵書の教えに、「部下の兵がまだ腰を下ろしていないならば、上官たる者腰を下ろして休んではならない。部下がまだ食事をとっていないのに上官が先に食事をしてはならない。お互いに苦しみをともにし、苦労や楽しみを等しく分け合っていくことが大事だ。」との紹介などがあった。まさに至言であろう。

 35年余の自衛隊生活で、最初の「指揮官と食事」についての指導は心に響いた。この心がけは全国どこの部隊に勤務しても忠実に実行されており、部隊団結の根源がここにあると思った。

 陸上、海上自衛隊でも、言葉の表現は異なるが、幹部候補生に対する教育で共通するものを読み取ることができる。幹部自衛官に求められる心がけは共通の普遍的なもので、指揮統率と部隊団結の根源であるからであろう。

 

2.  学校給食と先生の食事

 毎年、神久呂協働センタ-主催のふれあい大学講座で、小学校の一日入学に参加して児童と一緒に給食を取ることがある。担任の先生が必ず、配食完了を確認してからおもむろに食事を始めておられる姿を拝見して安心した。そして児童が食べ終わる頃には急いで自分の食事を終えて、後始末の指導にあたっておられた。ごく当たり前のことであるが心が和やかになった。

 それにしても、児童生徒の給食と担任先生との関係は学校教育で密接な関係にある。「食もまた教育」との感を強くした。「食事もまた指揮統率と部隊団結の根源」である。

 退官して25年たつが、遅く食事を始めても一番早く食べ終える癖は直らない。「お父さん、もっとゆっくり食べてよ」と小言をもらっているが一向に直らない。

 

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《 野外宿営地の飯盒炊さんの準備 》

  

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《 食堂における食事 》