元自衛官の時想( 160)   憲法改正して、国家の基本をなす国防・国軍を明記することを強く訴えたい。

 最近の国内外の諸情勢を考察すると、昭和、平成の時代よりか、さらに状況は激動的かつ深刻化してきた。確固たる国家の基本を堅持していかないと、これからの厳しい世界情勢に対処できないのではないかと考える。

 航空自衛官を平成2年春、定年退官して以来、終始一貫して、わが国が独立国家として、民主主義を基本とする国家を保持するためには、「国家の基本となる憲法を改正して、国防・国軍を明記して国家の基本となすこと」が必要不可欠であると考え主張してきた。

 35年余の国家防衛の任務を全うした自衛官生活とその後の地域社会の一員としての自治会長・シニアクラブ会長などを歴任し、市民生活を通じて痛感していることは、わが国の政治・外交・安全保障・産業経済・社会福祉・教育・科学技術など全てにわたって、世界の民主主義を基本とする国家と同じように、一日も早く、「普通の国」になることであった。

 大東亜戦争敗戦後、78年の年月が経った。この間、あらゆる面で「普通の国」になる努力が行われたが、特に、安全保障面に関しては、国家の基本となる国防・国軍についての条項が欠落している現行憲法の壁に阻まれて、あっちいったりこっちいったりと迷走し、中途半端となっていることを憂えるものである。

 世界の各国において、国家の基本は国防であり、国軍の設置により主権、領土、国民を守ることを憲法に明記している。これが「普通の国家」である。

 これに対して、国防の骨幹をなす国軍の明記が、わが国の憲法には明らかに欠落している。国家の基本である憲法に、国防の基幹となる国軍を明記することが必要不可欠である。

 古くから「砂上の楼閣」という言葉がある。基礎のしっかりしていない家はいつか崩れる。どんなに繕っても基礎のしっかりしていないものは欠陥建築のようなものである。

 自衛隊の任務・人員・武器・装備・調達・運用から隊員の募集・処遇・教育訓練・人事管理、退官者の処遇など全てにわたって、諸問題が生起したり、阻害要因が存在する最たるものは、自衛隊の存在が国家の基本となる憲法に明記されていないところに帰結するものである。国民の理解と支持がどんなにあっても、法律による設置存在ではその任務を十分に果たすことができない。また、自衛隊を取り巻く諸問題を抜本的に解決することは困難である。

 いみじくも、本日の産経新聞には、論説委員兼政治部編集委員阿比留瑠比氏の「改憲して戦後脱却」、正論欄に杏林大学名誉教授田久保忠衛氏の「憲法改正へ新時代の志士を求む」が掲載された。お二方の所論に全く同感である。

 元自衛官として、憲法を改正して、国家の基本をなす国防・国軍を明記することを強く訴えたい。

❶ 産経新聞 令和5年8月16日掲載記事

  「改憲して戦後脱却」 論説委員兼政治部編集委員 阿比留瑠比

❷ 産経新聞 令和5年8月16日掲載記事

  憲法改正へ新時代の志士を求む」 杏林大学名誉教授田久保忠衛