令和の徒然の記(4) 「もつたいない」の意識と感謝の心

   「もつたいない」の言葉は実に柔らかく、優しく、響きが良い言葉である。子供の頃、家族全員が食卓を囲んで食事をする時、一粒のご飯を残しても、「もつたいない」と親から言われたものである。そこには厳しく指摘をしたり、叱るというより、優しく諭すという感じであったように記憶している。

    今年10月から食品ロス削減推進法が施行された。今日、飽食の日本にとって食品のロスを減らすことことは喫緊の課題であると叫ばれてきたからである。

    戦後、国民の多くは食料難の時代を過ごした経験がある。今日、平成、令和と豊かになった日本で、食べ物が無駄に捨てられてしまう風潮に多くの人が危機感を抱き、これではいけないとの意識が高まってきたのは当然であった。

    10月は、国連が制定した世界食料デー月間でもあった。これを機に、飢餓や食料問題を考える機会としたいものである。近時、国内で話題になり、最も注目を集めたのは、コンビニエンストアの賞味期限の切れた弁当などの破棄であった。ことの是非はさておいて、あまりの豊かさの中の出来事であったように思われる。

    推進法には、政府、自治体、消費者それぞれに努力義務が織り込まれた。色々な点で改善が進んでくるであろうが、何と言っても消費者たる一人ひとりが食べ物を大事にする「もつたいない」の意識と感謝の心が求められているのではなかろうか。

    食事のたびの「いただきます」「ありがとう」「ごちそうさまさまでした」の言葉の表現と「もつたいない」の言葉は、日本が世界に誇れる言葉と精神ではなかろうか。

    「もつたいない」は、食べ物だけではなく、すべてのものに共通するものである。資源の乏しいわが国においては生活の基本ではなかろうか。

    私自身も豊かさに慣れて、ついつい色々な面で無意識に無駄、ロスの多い生活をしていること気付くことがある。自省を込めて「もつたいない」の言葉を噛みしめている。