元自衛官の時想(84) 終戦の日を迎え、全国戦没者追悼式に寄せて

    あの日から74年の歳月が流れた。昭和・平成を生き令和の時代を迎えた。

  今日「8月15日は、戦没者を追悼し平和を祈念する日です」と新聞各紙には政府広報が掲載された。

    大東亜戦争終戦は10歳の時であった。それから74年を迎えた本日は、政府主催の全国戦没者追悼式が日本武道館で開かれた。5月に即位された天皇陛下が臨席されお言葉を述べられた。

 天皇陛下のおことばをはじめ内閣総理大臣の式辞、衆議院議長参議院議長、最高裁判所長官及び遺族代表の追悼の辞全文は、最も関心のあるところであるが、陛下のおことばを除き全文が省略されているところが多かったので。あらためてインタ-ネット等で再確認するとともにユ-チュ-ブで追悼式全部を視聴した。

 産経新聞ニュ-スは、 安倍内閣総理大臣の式辞において、「初めて広島・長崎の原爆投下や沖縄の地上戦に言及した。令和に入って初めての追悼式ということもあり、先の大戦で犠牲となった軍人・軍属約230万人だけでなく、空襲や唯一の地上戦沖縄戦で亡くなった一般国民約80万人にも改めて思いを致し、すべての戦没者の御霊の平安を祈った。」と報じた。 

〇 天皇陛下のおことば  

    本日、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来七十四年、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき、誠に感慨深いものがあります。
 戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、ここに過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

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《 テレビ画像から 天皇陛下皇后陛下 》

〇 内閣総理大臣式辞 首相官邸ホ-ムベ-ジ
 天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、戦没者のご遺族、各界代表、多数のご列席を得て、全国戦没者追悼式を、ここに挙行いたします。
 先の大戦では、三百万余の同胞の命が失われました。祖国の行く末を案じ、戦陣に散った方々。終戦後、遠い異郷の地にあって、亡くなられた方々。広島や長崎での原爆投下、東京をはじめ各都市での爆撃、沖縄における地上戦などで、無残にも犠牲となられた方々。今、すべての御霊(みたま)の御前(おんまえ)にあって、御霊安かれと、心より、お祈り申し上げます。
 今、私たちが享受している平和と繁栄は、戦没者の皆様の尊い犠牲の上に築かれたものであることを、私たちは決して忘れることはありません。改めて、衷心より、敬意と感謝の念を捧(ささ)げます。
 未(いま)だ帰還を果たされていない多くのご遺骨のことも、決して忘れません。ご遺骨が一日も早くふるさとに戻られるよう、私たちの使命として全力を尽くしてまいります。
 我が国は、戦後一貫して、平和を重んじる国として、ただ、ひたすらに歩んでまいりました。歴史の教訓を深く胸に刻み、世界の平和と繁栄に力を尽くしてまいりました。
 戦争の惨禍を、二度と繰り返さない。この誓いは、昭和、平成、そして、令和の時代においても決して変わることはありません。平和で、希望に満ち溢(あふ)れる新たな時代を創り上げていくため、世界が直面している様々な課題の解決に向け、国際社会と力を合わせて全力で取り組んでまいります。今を生きる世代、明日を生きる世代のために、国の未来を切り拓いてまいります。
 終わりに、いま一度、戦没者の御霊に平安を、ご遺族の皆様にはご多幸を、心よりお祈りし、式辞といたします。
令和元年八月十五日
内閣総理大臣 安倍 晋三

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《 テレビ画像から 安倍内閣総理大臣 》

〇 衆議院議長追悼の辞     衆議院ホ-ムベ-ジ

 天皇皇后両陛下の御臨席を仰ぎ、全国戦没者追悼式が挙行されるに当たり、衆議院を代表して、謹んで追悼の言葉を申し述べます。
 数多くの方々が亡くなられた先の大戦終結から、七十四年が経ちました。極めて厳しい状況の中、戦い、働いた方々、また、暮らしていた方々が、戦場や、戦禍をこうむったそれぞれの地、あるいは、戦後、異郷の地において、国や家族を思いながら無念のうちに犠牲となられたことを思うと、悲しみが尽きることはありません。ここに、戦没者の方々に対し、衷心より哀悼の誠を捧げます。また、長い間にわたり、計り知れぬ御労苦を重ねられた御遺族の皆様に、深くお見舞い申し上げます。
 戦後、変化を続ける国際社会の中にあって、私たちは、一貫して平和な世界の実現を希求し、平和国家としての歩みを進めてまいりました。この間、先人の懸命な努力により、我が国は戦争を経験することなく、戦災からの復興と経済発展を成し遂げることができました。私たちは、今日の平和と繁栄が、戦没者の方々の多くの犠牲によって築かれていることを決して忘れず、これからの時代においても、思いを共にして平和のために不断の努力を行っていかねばなりません。
 世界では、今もなお、テロリズムや民族紛争、宗教間の対立などにより多くの方々が犠牲となっており、適切な対処を模索していくことが必要です。また、我が国を取り巻く地域においては、より安定した秩序を築き上げていくことが不可欠です。内外の歴史への理解をより一層深めるとともに、我が国が果たすべき役割を自覚し、世界の全ての人々と相携えて地域と世界の平和と発展に貢献していくことは、私たちに課せられた使命です。
 終戦以来長い年月が経過し、戦争を直接知らない世代が国民の多数を占めるようになりました。戦争のもたらした多くの犠牲や苦難について、戦争を体験された方々から学び、次の世代へ語り継いでいくことは、戦争の惨禍を二度と繰り返さないためにも、極めて重要であります。
 我々国会議員は、先の大戦に思いを致し、日本国憲法の精神を体して、恒久平和の実現、国民生活の安定と向上に全力を尽くしてまいる所存です。
結びに、戦没者の御霊の安らかならんことを心からお祈り申し上げますとともに、御遺族の皆様の御平安と御健勝を切に祈念いたしまして、追悼の言葉といたします。

令和元年八月十五日

衆議院議長 大島 理森

〇 遺族代表追悼の辞  中日新聞1.8.16朝刊記事

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【所感】

❶ 天皇陛下のおことばをはじめ内閣総理大臣の式辞、衆議院議長参議院議長、最高裁判所長官及び遺族代表の追悼の辞全文読み返してみると、戦没者への思い、平和への願い、遺族の皆様のご苦労と心情が伝わってきた。

❷ 今までは、全国追悼式をテレビ中継や二ュ-スとして拝聴してきたが、今回あらためてユ-チュ-ブで追悼式全部を視聴した。約1時間献花の終わりまで拝聴して、これからも政府が「戦没者を追悼し平和を祈念する日」を継続することの意義を深めた。

➌ 英霊・戦没者への慰霊・追悼は誰しも同じであるが、 「終戦の日」についての取り上げ方は、新聞各紙の「戦争と平和への考え方と立場」によって、記事の取り上げ方や切口がかなり異なるようだ。読者たる私が一番知りたい記事は、天皇陛下のおことば、内閣総理大臣の式辞と衆議院議長参議院議長、最高裁判所長官及び遺族代表の追悼の辞の全文であった。記者の考えや受け止め方ではなく、言葉の全文を知って自分なりに考察したかったのである。

❹ 74年の歳月を経ても、戦地で果てた、未だ帰還を果たされていない多くのご遺骨があることは痛ましい。ご遺骨の収集帰還事業は、猶予ならない国家挙げての事業ではなかろうか。 

❺ 追悼式を通じて強く感じたことは、平和への祈念と望求を、厳しく冷徹な現実の国際社会において、どのように実現し、世界に貢献していくかの確固たる「国家のありよう」、「国家の基本」がなければならないということである。

 そのためには、自分の国は自分で守るという理念を憲法に規定することが最も重要であると考える。自らの身は自らが守るという当たり前のことがしっかりしないと平和への道は開けないであろう。

追記 参議院議長、最高裁判所長官の追悼の辞全文を後程入れたいと思っています。