1.人事2班の業務全般についての見直し
昭和60年(1985)8月、空幕人事課人事第2班へ配置となるや、人事課長から新鮮な目で「人事2班の業務全般についての見直し」の特命を受けた。
そこで、まず、着手したのが、「人事2班の所掌業務の見直し」の主柱となる「年度准尉・空曹及び空士充員計画」のあり方であった。
当時の空幕の内部組織訓令で定められた人事第2班の所掌である「准尉・空曹及び空士の充員計画」が計画は人事計画室が担当し実行を人事2班とする変則的な状況にあった。
この点に重点を置いて、充員計画作業の全過程を細部にわたって確認し、准尉・空曹及び空士充員に関する計画と実行に関して忌憚のない所見をまとめ人事課長に提出することにした。(総隊・方面隊等で主務幕僚として准尉・空曹及び空士充員計画の作成と実行を何回も経験してきた事が役立った。)
准尉・空曹及び空士充員に関する計画と実行は、航空自衛隊の准尉・空曹及び空士の人事をつかさどる人事2班の所掌業務の主柱となるものであり、両者は不離一体であるべきであった。現行の問題点と是正策について、「 年度准尉・空曹及び空士充員計画に関する所見」としてまとめ報告した。
(1)日記にみる准尉・空曹及び空士充員計画に関する所感
この間、当時の私の日記には充員計画に関する所感が認められていた。その一部を紹介しょう。
❶ 年度准尉・空曹及び空士充員計画作業のあるべき姿
10月18日の日記には、「充員計画作業のあるべき姿」と題して次のとおり記していた。
① 人的戦力の質の確保(バランス化) レベル・階級の均衡
〇 数合わせの排除
〇 充足率にとらわれない
② 人的戦力構成の是正 准曹と士の構成比
③ 異動管理の是正 沖縄・サイト交流等の諸問題の解決
❷ 人事課人事2班の位置付け
10月21日の日記には、「人事課人事2班の位置付け」と題して次のとおり記していた。
人事課人事2班の位置付け
❶ 全般人事についての実権を回復すること。(実際の実権を持ち自信を持つ)
❷ 各方面隊の指導力に影響を与えること。 (部隊へ向けての顔を持つこと)
❸ 日ごろから実力を積み上げる努力を必要とする。 (実力は実力を生むものである)
❹ 計画・実行及び調整の一貫性を持たせること。(ロ-ティションはプラスを生む)
❺ 人事部門の主張を明確にすべきである。
3.充員計画報告会と人事2班の役割
「幹部及び准曹士充員計画報告」が、10月24日、人事課長、人事計画室長に対し、翌25日 人事教育部長、副部長に対して行われ立会した。当日の日記に「人事2班の役割」と題して、次のように記していた。
人事2班の役割
「充員計画作業報告に立会したが、実に人事2班の業務を人事計画室が行っており、腰がムズムズする思いであった。当然やるべき立場にある班が、自己の立場・責務を放棄した格好であり、早急に是正されるべきである。2班が空自准曹士の総本山としての役目を完全に果たすことこそ、准曹士諸官のみならず空自の人的戦力の充実向上に資するものである。」
4.年度准尉・空曹及び空士充員計画に関する所見
10月24日夕、人事課長に対して、昭和60年度准尉・空曹及び空士充員計画作業状況及び結果を踏まえて「年度准尉・空曹及び空士充員計画に関する所見」は次の通り報告した。
《 当時日記に「年度准尉・空曹及び空士充員計画に関する所見」の自筆の原稿がつづられていた。》
年度准尉・空曹及び空士充員計画に関する所見 60.10.24 濵田2佐
1.現状とあるべき姿
空幕内部組織訓令に定める人事第2班の所掌業務のうち、年度充員計画は同訓令の定めるとろとは別に人計室伺により人計室年度第2計画班が担当しているが、准曹士人事の2本柱である異動と昇任の一つを人計室が担当するという変則状態が生じている。
充員計画の部隊等に及ぼす影響は大であり、本来のあるべき姿に早急に是正されるべきものと考える。
2. 現状の分析と問題点及び今後の方向
❶ 計画と実施の二元化の弊害
任免権を有する部隊等の准曹士充員計画は、すべて人事班が所掌し、計画と実施の一元化を図っている。空幕のみ計画部門と実施部門を分離し二元化となっており、充員の計画と実施は不離一体であることから積極的に同業務を実施すれば両者(計画と実施部門)の区別がつきにくくなっている。
このため、部隊等は空幕に対し人事第2班及び人計室年度第2計画班の両班と調整する等調整先が二つ存在し業務を複雑化している。一方、部隊等に対しては、両班が複雑に絡み合う等二元化の弊害が生じやすく、適切な充員管理を阻害する要因となっている。
❷ 准曹士人事上の諸問題と充員計画に反映対処
航空自衛隊が直面している准曹士人事上の諸問題は、定員増ゼロでの主要事業への所要人員の抽出、定年者の大量退職による空曹戦力の低下への対応、中部・西部各方面隊の曹士構成、西部地区所在部隊の高階級化、高齢化による戦力構成の不均衡の是正、長期勤務者、離島サイト等勤務者の異動管理の適正化による勤務環境の公平化の推進等がある。どれ一つ取り上げても充員計画に反映して対処できるものであり、充員の計画と実施は准曹士人事のキイ・ポイントとなっている。
❸ 充員計画の方向 数的管理から質的管理へ
人的戦力の充実向上をねらいとする充員は、任免、補職、昇任、特技管理その他の人事管理を考慮し、総合的に行われるものである。特に、航空防衛力の基盤をなす人的戦力の管理は、従来以上にきめ細かさが求められ、今後量(マス)から質(中味)の管理を必要としており、充員計画も充足率を中心とした数的管理から質的管理へと方向転換し、逐次改善を図る必要がある。
3.人事第2班になじむ理由
充員計画は、最終的にはすべて数字で表されるが、計画にあたっては部隊等の任務、充足状況、階級、レベル構成等の細部を把握し、異動交流、特技転換等は隊員個人の勤務歴、勤務状態、資質能力、性格、家庭事情等に至るまで検討して生きた隊員を数字に置き換えたものであり、実態は人事業務そのものである。
充員計画の大部分はがこの種の内容を含むものであり、かつ、今後の充員計画の在り方等からも人計室の業務にはなじまないものでと考える。また、充員の計画及び実施は一貫した方針のもとに同一班で常にフォロ-アップしつつ、適時適切に状況の変化に対処することが必要であり、これは人事第2班の業務になじむものであると考える。