「昭和の航空自衛隊の思い出」----その時何を考え立ち向かったか
1.教育担当第4科長として人事幹部課程学生に語りかけた短い講話
昭和56年8月17日~58年3月15日までの1年6ヶ月、第3術科学校第1教育部第4科長として勤務し、幹部・上級・初級人事課程、空曹要務特修課程、教育技術課程・講習及び上級空曹特別講習の教育担当の責任者となった。各課程教育は課程主任と教官が配置され教育を進める体制にあり、科長の職務は各課程主任及び教官を統括し、管理監督することにあった。
こうした教育体制下において、科長としての担当課目のほかに、随時、教育課目の合間に当該課程の対象者に応じた内容の短いワインポイント的な講話をすることにした。
とりわけ、人事幹部課程学生に対しては、初級幹部時代に要撃管制官として、航空警戒管制組織の第一線で勤務し、縁あって、人事幹部となり、作戦部隊の群・警戒管制団・航空団・航空方面隊・航空総隊と各級司令部を人事幕僚として勤務経験した。
こうしたことから、人事幹部課程学生に対して将来の活躍を期待して職域・職務・配置に求められる核心となるものを語りたかった。
合わせて、昭和30年に入隊以来、先輩たちに育てられてきた。それなりに隊務を経験してからは、職務を通じて後輩・後継者を育てることを常に心がけてきた。いつの日か教壇に立つ日があるとすれば、自分の言葉で、先輩たちから教えられ、経験したことの真髄を語り伝えたいという夢を抱いてきたことが背景にあった。
その内容は、自衛隊生活で経験し学んだことの中で、是非、後輩隊員・後継者に伝えたいこと、今後の勤務において迷いがあるときの道しるべとなり、職務上悩んだ時、壁にぶつかった時に参考として活かしてもらいたいことなどを自分の言葉で直接語ることにしたものであった。
特に高邁な話でもなく、学問的なものではない。自衛隊における勤務年数と経験においては学生より数段勤務年数と多種な経験を有する先輩の立場から、教範・教程・配布資料にかかれていない事柄を中心に学生に話しかけた。
そのため、いつなんどきでも話ができるよう、机の中には、15の項目を建ててテ-マと内容を常時準備しておいた。課程教育は所定の教育計画に基づいて整斉と進められるが、各教官において教務の進度から余裕が生まれるときがあるものだ。その時はいつでも声をかけるようにお願いしていた。連絡があればいつでも教室に駆けつけて短い話をした。話した後にはその日のうちに、例話など省き、講話の要旨を配付することにした。
それは、題名を「人事業務実践アドバイス」とし、❶「人事業務」・❷「ブリ-フィング、報告」・❸「文書要務」・❹「群本部と司令部の人事業務の関係」・❺「任命権行使の補佐」‣❻「人員掌握」・❼「配置管理業務」・❽「異動調整業務」・❾「服務規律の維持向上」・❿「懲戒業務」・⓫「入校業務」・⓬「勤務評定業務」・⓭「個人申告業務」・⓮「人的戦力の管理」・⓯「法規の解釈と運用」の15項目とした。
2. 第4科長として人事幹部学生に語りかけた「人事業務実践アドバイス 」の要点
人事業務実践アドバイス
まえがき
. この実践アドバイスは、第4科長として56年8月着任以来、人事幹部課程学生に対し、折にふれ人事総務業務について語りかけてきたことを要約したものです。
人事総務幹部として、当校でその基礎を習得し、直ちに部隊の第一線で人事、総務班長という重責を果たさなければならない学生に対し、一先輩の立場から機会あるたびに15分程度の事例を含めた小話を通じて人事総務幹部としてのものの考え方、あるべき姿、あるいは人事総務の精神なり心を訴えてきましたが、その話のネタが実践アドバイスなるものです。
第4科の担当する各課程は、諸先輩たちの御努力により逐年充実し教育内容も立派に整備されております。また、人事総務業務についての知識経験といった面では他に優れた幹部がおられますが、第4科長という職責と私たちが先輩から受け継いできた人事総務の精神を次の時代に語り継ぎたいと思う情熱から、浅学を顧みず、自分なりの言葉と砕けた表現で(ときには命令口調で)まとめたものです。
この実践アドバイスのねらうところは、各業務についての着意事項等をとりあげながら、指揮官の指揮統率とのかかわりと人事の役割や戦力基盤となる人事のあり方等を強調し、単に法規の解釈や運用のみに専念したり、数字をつつくだけのいわゆる事務屋になり下がってもらいたくない、任務遂行のために運用装備等の部門と一体となって活動ができる幹部に育ってほしい。
指揮官から最も信頼され、部隊で真に役立つ幹部に育ってほしい。また、次の後継者を育てていく幹部になってもらいたいと願望するところにあります。
❶. 人事業務