元自衛官の時想( 4 )   自衛隊の災害派遣装備体制の充実強化

1.自然災害への対処と自衛隊の装備体制

 熊本県は5月30日、熊本地震による県内の被災地支援で派遣されていた自衛隊に撤収を要請し、中谷元防衛大臣は同日、撤収を発表した。(2.防衛大臣の記者発表参照)

    4月14日熊本を震源とした地震は、熊本・大分両県を中心に被災地が拡大し、連続して長期にわたって地震が頻発したこと、地震発生直後から道路網の寸断で交通が途絶したこと、特に山間部の道路の途絶は人員・機材・物資の輸送を困難する事態が継続したこと、18万人に及ぶ避難者の発生、多数の住民が長期の避難所生活を余儀なくされたことなどを挙げることができる。

 OBの一人として、この種の災害派遣部隊に関して、いつも注目していることの一つに出動部隊の装備についてである。どの時機に、どのくらいの人員・装備で出動するか関心を持って見守っている。また、逐年、災害派遣部隊の装備体制がどのように充実強化されてきているのか関心がある。

 災害の状況、任務及び作業内容によって装備機材など使い分けるであろうが、メディア報道を通じて人力作戦のほか重機等機械力の投入状況の一端を知ることが出来る。紙面の写真や画像はほんの一部でしかないが、防衛大臣の記者会見及び災害派遣部隊状況の発表によって、大体の状況を推測できる。     

   その点、限られた情報であっても、 長年自衛隊で勤務した者には、どんな小さなニュースでもその意味するものが何であるか、その背景には何があるのか手に取る様に分かるものである。

2.防衛大臣の記者発表(防衛省自衛隊ホ-ムぺ-ジ出典)

 大臣臨時会見概要    平成28年5月30日(09時24分~09時36分)

 発表事項

 先程ですけれども、本日9時に、熊本県知事から、県内生活インフラの復旧が整い、また、民間の事業者等による代替手段が整い、生活支援終了の目処が立ったということで、自衛隊に対しまして、部隊の活動終了の要請がありまして、第8師団が、その要請を受けたところでございます。それを踏まえまして、本日、自衛隊災害派遣活動は、全て終了をするということになります。自衛隊は、地震が発生しました4月14日から、総力を挙げて、災害対応にあたってきたわけでありますが、特に、本震であります4月16日に、二度目の震度7地震が発生しまして、それ以降、西部方面総監を指揮官といたしまして、統合任務部隊を増強して、最大で約2万6,000人態勢で、災害対応を実施してきたわけでございます。対応等につきましては、私が、かねがね、災害派遣には、「牛刀主義」で臨めと。とにかく早く、大量に、そして大胆に対処しろということ、それから、先手先手を打つということで、プッシュ型の支援をせよということで、自衛隊が独自に、物資を集めて、直接、避難所に運搬するという方式をとりました。その後は、プル型という、できることは全て、被災者のニーズを踏まえた活動をするということで、実施してきたところでございます。熊本県知事から、昨日、コメントが発表されまして、各地で人命救助を最優先に、昼夜を問わずに、懸命の活動が展開されたと。また、道路が至るところで寸断する中で、プッシュ型で、物資輸送が行われていたと。そして、時間の経過とともに変わるニーズに対応したことなど、県民の生命・財産を守ることに対しまして、感謝と御礼の言葉がございました。併せて、平素から、熊本県は、自衛隊と、顔の見える災害対応訓練などを実施してきたということが、非常に、今回、迅速な活動につながったということで、今後とも、密接に、県との連携ができるように、引き続き、よろしくお願いしますというようなコメントがございました。私としましても、やはり、平素からの、こういった協力・訓練が一番なことではないかと思っております。実績等を申し上げますと、延べ約81万4,000人の隊員、航空機延べ約2,600機、艦艇約300隻で、活動を実施いたしました。人命救助・行方不明捜索につきましては、南阿蘇村で10名、益城町で5名、宇城市で1名、計16名を捜索いたしました。また、生活支援につきましては、物資の輸送が一日最大227ヶ所でありました。食料品は約180万食です。給食支援は、最大一日約49ヶ所でありまして、約91万食、給水支援は最大一日約147ヶ所、約1万900トンの水、そして、入浴支援は最大一日25ヶ所、約14万1千人、医療支援は最大一日9ヶ所、約2,300人、こういった方々に対する生活支援を実施いたしました。米軍からの支援につきましては、MV-22オスプレイ、延べ12機による輸送支援を行いまして、食料品などの生活物資を約36トン、自衛隊員22名、車両8両、そして、避難所など2ヶ所で音楽演奏を実施しました。また、八代港に「はくおう」を停泊をいたしまして、休養施設として、合計17回、約2,600名の被災者の方々が利用しておりまして、利用者のアンケートによりますと、97%が好評であるといただきました。次に、即応予備自衛官につきましては、2回目の招集となりますが、4月23日から5月2日までの間、約160名による生活支援活動を実施しました。「ガレキ等」の仮設場への搬送も、トラック164台分、搬出いたしました。さらに、エコノミークラス症候群対策といたしまして、6人用天幕20張を、テクノリサーチパークに展張いたしました。その他、入浴、声がけ、医療、マッサージ、炊き出しなど、可能な限り、被災者の方々に、寄り添った支援を実施してまいりまして、子供さんから、夜、見回りに行った隊員に対して、「がんばり賞」という賞をいただきまして、そういう点でも、皆様に喜んでいただいた支援ができたのではないかと思っております。現在も、まだ、余震が続いておりますので、雨期の時期と重なります。災害の発生も予想されますので、派遣終了後も、不測事態の際におきましては、直ちに、万全の態勢で対処ができるように、引き続き、心がけてまいりたいということでございます。

3.自衛隊災害派遣装備体制の充実強化

    かって、平成26年2月において、 ソチ五輪に沸いている時、関東甲信越や東北地方の豪雪による被害は凄まじいものがあり、自衛隊の部隊が派遣動員されたことは記憶に新たである。

  メモによると、 同年 2月18日、官邸で開かれた政府の豪雪非常災害対策本部の初会合において、安倍晋三内閣総理大臣は、「国民の生命、財産を守るため、対策に万全をきしてほしい」守るためと指示したと報じていた。

    被災地への自衛隊派遣も規模が増強されていった。この中で、注目したことは「自衛隊の装備体制を大幅に強化し、次の降雪に備えて総力をあげて除雪対応を加速せよ」である。

 安倍総理大臣は実に適切にして明確な指示を発出している。自然災害へ対処する自衛隊の装備体制について、国民が関心を持ち支持することが一番大切である。最新の装備を持っ事によって、有効適切に運用し、迅速に対応でき、国民の生命、財産を守ることができるからだ。

 

 平成26年2月18日総理指示(豪雪による災害に関して) 

平成26 年2 月18 日11:30

内閣総理大臣指示事項

1.今後、孤立による凍死等による犠牲者を一人も出さないこと。

2.自衛隊の人員やヘリ等の装備の体制を大幅に強化するとともに、警察、消防、国交省の関係機関が連携し、次の降雪にも備えて、最大限の総力を挙げて、除雪等の対応を加速させること。

3.電気、ガス、水道などのライフラインの復旧や道路の通行確保に努め、国民生活の早期の改善に全力を挙げること。