元自衛官の時想( 95 ) 人生における自分の立場と役割をどれだけ果たせたか

   長い人生における職業活動、地域社会奉仕活動、趣味活動などにおいて、自分がどのような立場に立つかは様々である。

    学校を卒業して社会人になってから 今日までの自分の人生を省みて、社会的な立場と役割を分類すると、段階的に次のように三つに区分することができる。

1  人生活動期の自衛隊時代

❶  一般的立場と役割の時代           操縦学生、一般隊員

❷  幕僚的立場と役割の時代           専門特技幹部、班長、部長

❸  指揮官的な立場と役割の時代    副司令

   人生の活動期であった自衛隊勤務は、主として一般隊員と幕僚勤務が主体で、少し指揮官職であった。

2   人生熟年期の自算会時代

❶   一般的立場と役割              所員

❷   幕僚的立場と役割              課長

❸   指揮官的な立場と役割       所長

    航空自衛隊を定年退官してからの第2 の勤務は前半は幕僚的な立場と役割、後半は指揮官的な立場と役割であった。

3   人生晩年期の地域社会時代

❶   一般的立場と役割            会員

❷   幕僚的立場と役割            自治会部長、会計

❸    指揮官的立場と役割       会長、副会長

    職業を終えて、年金生活となってからは、地域社会で自治会、OB団体、県人会、花の会、シニアクラブなどの活動は主として指揮官的な立場と役割であった。

 総合してみると、誰もが一般的な立場と役割から年齢を重ね知識経験を経て、指揮官的な立場と役割を担うことになる。

    自衛隊時代は幕僚的立場が主であったが、退官後は指揮官的立場が主であった。長い人生においては、この関係がバランスよくできているものだと感じるものがある。

 職業生活においては、組織のトップに立って判断・決心・実行を指令する指揮者的立場と指揮者的立場を支える事務処理・調整・まとめの役割を持つ幕僚的立場を上手に使い分けられるかどうかによつて、円滑な人生が過ごせるかどうかにつながってくる。

    人は社会的な経験を積み重ねながらそれぞれの立場を体得し、修練によって、状況に応じてどちらにでもなれる資質・能力を備えていくものではなかろうか。

   中には、一般的な立場で存分に能力を発揮し現場では神様的な存在、なくてはならない者、幕僚的立場で優秀な参謀能力を発揮する者、指揮官的立場で全体をまとめ、指揮統率するのに優れた者など様々である。

    人間の資質・能力は育ちや学歴だけで推し量ることができないものがある。また、持って生まれた性格と天性があるからである。

    人間できれば、全てを兼ね備えたいが、これまた千差万別である。兄弟姉妹と言えども同じではない。まさしく十人十色であるから、人間社会は面白い。

    どんな立場を経験し歩むかによっても資質能力や性格等は磨きがかかり向上の差はいちじるしいものがある。

 長い人生には山あり谷ありであるが、平たん地の平静、平安の日々もある 幸福感いっぱいの時機のあれば、一方、落胆・破綻の時機もあるものだ。

    老いも80路に至ると、指揮官的立場だ、幕僚的立場だと言っていた時代はとっくに過ぎて、皆んな一般的立場になっていくものである。

    人生の終盤に立って、自分がそれぞれの時代に、与えられた立場と役割をどれだけ果たしたであろうかと自問自答している。やり直しがきかないのが人生でもある。

     他人の評価より自分が自分の人生をどう思うかではなかろうか。やれることはやった。やらせてももらったと思っている。

    最後は静かに、「ありがとう」と感謝と満足感をもって終わりたい。