昭和の航空自衛隊の思い出 (348) 准空尉・空曹及び空士充員計画の作成と講習

1.初の人事第2班担当の准空尉・空曹及び空士充員計画の作成 

 昭和60年(1985)8月空幕人事課勤務となるや、人事課長利渉弘章将補の特命を受けて「人事第2班の所掌業務の見直しと准空尉・空曹及び空士の充員計画のあり方」を検討し報告した。

 いろいろの経過を経て、翌61年(1986)2月から准空尉・空曹及び空士の充員計画の担当が人事計画室から人事第2班となった。早速、月初めに「昭和61年度准空尉・空曹及び空士充員計画構想」について人事教育部長の決裁を得て、人事第2班中心の充計作業を幕内で約半月間実施し作成した。これには人計室の協力と航空総隊司令部担当幕僚及び人事空曹の支援により充実した計画が出来上がった。

2.准空尉・空曹及び空士充員計画業務講習と各種異動交流の推進

 その後、同年2月17日から21日まで、髙橋和夫人事第2班長主導の「准空尉・空曹及び空士充員計画業務講習」を沖縄・那覇基地で開催し、第1日の冒頭に利渉人事課長が挨拶をした。人事第2班にとっては念願がかない画期的なことであった。

 この講習は、全国の部隊・機関の准曹士人事担当者60名余が一堂に会し、沖縄交流・サイト交流・教官交流等を中心に綿密な調整を行った。懇親会は100名の人事関係者が参加した。

 特に、任免権者を異にする全国的規模の異動は単なる数字上のものではなく、各部隊担当者が人事上のデータを網羅した異動候補者名簿等を用意して異動者の受け入れと交代者の差出しを固有名詞や部隊等名で調整していく方式を取り入れた。離島等厳しい勤務環境で長期にわたって勤務した隊員が希望する勤務地へ異動できるよう着実に実現する方策を取り入れたものであった。

 こうして61年度の「准空尉・空曹及び空士充員計画業務講習」は、実質的には准尉・空曹及び空士充員計画の講習と調整会議を兼ねたものとなり、准曹士人事の充員・異動をきめ細かに行う方向性を確立し、改善充実を図り定着していった。

3.准空尉・空曹及び空士充員計画業務講習と人事第2班の機能発揮

 また、年一回全国の准曹士人事担当者を集めることによって、人事第2班の所掌業務全般について、方針・重視事項・細部の運用要領を周知徹底する講習会でもあった。又、人事課の関連の班長も参加し所掌業務に関し説明する機会でもあった。最後の夜は懇親会を開き裃を脱いで語り合い、全国の部隊・機関の担当者間の緊密な意志疎通ができ人事業務の質的向上に資するものがあった。

 充員計画の作成と実施の一体化により、名実ともに人事第2班が准尉・空曹及び空士人事の総元締めとしての機能を発揮できる基盤が固まった。時の利渉弘章人事課長の慧眼と関係上司の理解と英断無くして、これほど早くあるべき姿にはならなかったであろうと思われる。こうした転換期にわが自衛官人生の最初にして最後の空幕勤務ができたことに感謝した。

4.充員計画にみる「数字と心眼」

  昭和60年10月19日(1985)の日誌には「数字と心眼」と題して次のとおり記していた。これは特命を受けて、人事計画室担当の充員計画修正作業に参加した時の所感でもあった。

 「  物事には、多くの場合、表と裏がある。表面だけにとらわれず内面を見抜く力も必要である。心眼をもって本質を把握し、数字の魔術を見抜く能力が重要ではなかろうか。充員計画作業にあっては、部隊戦力の充実を主眼に質・量ともに戦力アップに寄与する努力が必要である。紙背を見抜く心眼、この実力を身につけることだ。」とあった。

    充員計画は、数字の羅列で一見わかりにくいが、数字の中にどのように人的戦力を構成していくがポイントである。充員計画作業にあたって、人員数だけの数量的な数字に惑わされず、人的戦力の質的中身を考えて、現有人的戦力を分析評価して、各種の異動・交流、課程修了者の配員などをもって、部隊の任務遂行と指揮官が期待する人的戦力の充実を図るべきである。

 このためには、計画と実行の一体化、実員を掌握して、日々実務を行っている部門が行うのが、あるべき姿であり、充員計画上の数字の中身の吟味の重要性とそれを見抜く実力が求められていることを強調し、人事担当者としての識能の向上と数字を見抜く心眼が必要であることを認めたものと思われる。 

5.准空尉・空曹及び空士充員計画と人的戦力形成

 空自全般の「准空尉・空曹及び空士充員計画」は、部隊の人的戦力の数的・質的面の形成上極めて重要な計画であった。また、全部隊・機関の准曹士人事担当者が集合した充員計画業務講習の実施により、5日間と時間はかかったが沖縄交流・サイト交流・教官交流等の異動は個別に一案件ごと調整・決定することができ異動交流の推進を図ることができるようになった。

 准空尉・空曹及び空士人事の主要な課題である異動について、各種異動交流の推進が図れるようになって、人事管理と部隊及び隊員の士気を高めることができた。

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《 昭和61年春、空幕人事課長利渉弘章将補を囲んで、那覇基地で准空尉・空曹及空士充員計画業務講習会の記念写真、人事2班長が充員計画の作成を主導することになった。全国の部隊・機関の優秀な人事部門の実務担当者が一堂に会すると壮観であった。利渉人事課長の特命から実に短期間で人事第2班が准空尉・空曹及空士充員計画を担当し実員を充足する業務を着実に進めることができるようになったのが印象的であった。空幕人事機能を十分に発揮して、沖縄交流はもとより、サイト交流、教官交交流などの異動調整を効率的に処理し、懸案事項の処理を推進することができるようになった。》

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《 昭和61年2月17日~21日、平成62年度准空尉・空曹及び空士充員計画業務講習参加者及び懇親会参加者、当時の錚々たる人事担当者を知ることができる。 》

6.  准空尉・空曹及び空士人事の方向(舵取り)

     准空尉・空曹及び空士充員計画業務講習を終えて2月25日の日記には、「准空尉・空曹及び空士人事の方向(舵取り」と題して所見を記していた。

「人事第2班は准空尉・空曹及び空士人事の舵取りの中枢である。将来にわたって方向を誤らぬ施策の推進、人事業務の充実が重要である。」