航空自衛隊第1期操縦学生(22) 航空学生制度創設60周年記念行事参加の記・記念式典

1. 航空学生制度創設60周年記念行事の全般

 航空学生制度創設60周年記念行事の諸計画は、用意周到なるものであった。自衛隊らしく各種状況に応じて対処できるよう行事も、荒天の場合1.2が計画されていた。幸い上空には雲があったが晴天となり、ブル-インパルス飛行展示は画通り実施された。

 6月7日は防府北基地の航空祭であることから実質的には 飛行展示は予行を兼ねたものとなった。基地内はあらゆる場所が整理整頓されており、航空祭の準備が万端整っていた。

 

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《 受付 》

 

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《 式典までの控室 

 

2.記念式典

    式典の次第は次の通りであった。団司令の式辞、航空幕僚長の祝辞及び防府市長の祝辞は、航空学生制度の創設の経緯、発展の過程、航空学生出身者の航空自衛隊における位置づけ、役割と評価、期待につながるものであった。

 私は第1期操縦学生の一人として、再びこの式場に立つことはないであろうと万感の思いで参列させていただいた。航空学生制度創設60周年の節目であることからお三方の式辞・祝辞を要約してみた。記載内容は今なお私の脳裏に残ったものをまとめたものであり、タイトルや文責等はいっさい私にあることを明記しておきます。

 記念式典式次第

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 《 式典は時間通り進められ、厳粛な中に整斉と進められた。西部航空音楽隊の演奏が厳粛な式典に花を添えてくれた。》

 

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《 式次第 》 

 

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《 主要な来賓、斎藤航空幕僚長、遠竹・吉田元航空幕僚と松浦防府市長のほかVIPのご臨席をいただいた立派な式典となった。》

 

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 《 壇上の来賓席 》

 

 〇団司令式辞

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《 第12飛行教育団司令伊藤哲1佐の式辞 》

第12飛行教育団司令式辞の要旨

(航空学生制度の創設)

 「航空自衛隊は、昭和29年航空機148機、隊員6061名で誕生し、6年間で33飛行隊を整備するため約2000名の操縦者を養成しなければならない重要な課題に直面した。

 旧軍の操縦経験者に対する再教育のリフレッシャコ-ス及び操縦未経験者を対象とする新人教育としてのプライマリコ-スを開設し操縦者の養成をスタ-トした。

 このプライマリコ-スのソ-スとして大学卒の幹部候補生に加えて、将来における新進気鋭の航空自衛隊操縦者を養成するため高校卒業者から心身ともに優秀かつ適任の者を選抜する方針のもと航空学生制度が創設された。

 そして、昭和60年6月2日選ばれた207名の若人が防府基地に着隊、2等空士に任命され、幹部学校所属並びに第1期操縦学生として幹部学校への入校を命じられた。これが現在の航空学生制度の起源となった。

 そして操縦学生第1期から第16期までの当初5年間に2,103名が採用され、航空自衛隊の創設期における操縦者養成に多大な貢献をした。」

(航空学生制度の変遷)

 「航空学生制度は、防府基地幹部学校の「操縦学生基本課程」として、創設以来、所属部隊は幹部学校、幹部候補生学校幹部候補生学校芦屋訓練隊、飛行教育集団直轄部隊の航空学生教育隊と変遷した。

課程名称は「操縦学生基本課程」、「航空学生基本課程」、「航空学生基礎課程」、「航空学生課程」と変わった。子の間、所在地は防府、奈良、芦屋を経て、昭和45年3月周防揺籃の地防府北基地に安住の地を得た。平成元年、航空自衛隊の組織改編により航空教育集団第12飛行教育団に航空学生教育群として現在に至っている。

 創設以来60年間、5102名の卒業生を輩出し、平成6年から女子学生の教育を開始し、女子学生22名を卒業させた。現在第70期、第71期の91名、女子学生4名を教育中である。

 航空学生制度の存続に関しては、過去に議論されたこともあったが、原点回帰ともなる60周年ともなる節目を無事迎えることができた。これはここに参列の皆様をはじめ,旺盛な責任感と熱意をもって任務遂行に当たられた先輩のご尽力、それを見守り支えてこられたご家族の支援の賜物である。心から敬意と感謝の意を表する。」

(航空学生出身操縦者に期待される役割と責任)

  「我が国の周辺海域、空域における周辺国の軍事的活動等は活発化し、その範囲は拡大し内容も多様化しつつある。防衛大綱に示された統合防衛機動力の構築、要地要域における航空優性の獲得、南西地域の防衛体制の強化に当たって、航空自衛隊全操縦者の6割を占め、第一線の現場部隊の中核となっている航空学生出身者の操縦者の役割と責任は益々重要となってくる。

 防衛大綱にもとずく 統合運用、日米共同、グロ-バルな防衛環境のキ-ワ-ドもとで、第5世代戦闘機、F-35、無人機の運用さらには次世代戦闘機への採用を見据えた場合、これからの航空学生に求められるものは、操縦技量はもとより高い知見、指揮能力、状況判断力、調整力、高い英語能力が求められる。

 これらの要求に応えるべく、空を制するものはものは作戦全局を制するとの教えを精神的基軸として、先輩から受け継いだよき伝統をしっかり守り、厳しく、愛情をもって、学生教育に邁進する所存である。

 それにより航空学生出身者は引き続き部隊の中核として、一部は組織後継者として活躍できるように、明朗闊達で強くたくましい戦闘機操縦者としての素地を育成することが与えられた使命である。 

 この60年間に教育訓練、任務遂行に当たり志し半ばにして殉職した130柱の英霊に対して衷心より哀悼の誠を捧げるとともに御霊の安らかならんことを祈念する。航空学生制度の発展に尽力されたすべての皆様に感謝する。」 

 (式辞の記載内容は私の脳裏に残ったものをまとめたものであり、文責等はいっさい私にあることを明記しておきます。)

 

航空幕僚長の祝辞

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《 航空幕僚長斎藤治和空将の祝辞 》

航空幕僚長祝辞の要旨

航空学生は航空自衛隊の槍の鉾先として、航空自衛隊の宝である。

 「航空学生制度は、航空自衛隊の創立とほぼ同じくして、昭和30年6月2日防府基地の幹部学校操縦学生基本課程として産声を上げた。その後奈良、芦屋の両基地を経て昭和45年3月再び防府の地に移転した。

 この間、幹部学校隷下、幹部候補生学校隷下、飛行教育集団直轄、名称も「操縦学生基本課程」、「航空学生基本課程」、「航空学生基礎課程」と変遷し、12教団教育群における「航空学生課程」に至っている。

 この60年間に航空自衛隊を取り巻く環境の変変化において根操縦者に求められる能力の変化に的確に対応するため教育内容、教育期間等を見直しを図った。

 地域に支えられ、5102名の卒業生、航空自衛隊の航空戦力発揮の中核である操縦者の6割の人材を育成し、航空自衛隊の精強化に貢献してきた。これらは他方面のご協力ご支援、諸先輩のご尽力現役所感の真摯な努力にある。

 大空に夢を馳せ自由に飛んでみたい。この夢を最も早く実現できるのが航空学生である。しかし夢の実現への道のりは平たんではない。入隊当初から厳しい制限の元様々な困難、同期生の団結と教育訓練にいそしみ進んでいかなければならない。

 航空学生は航空自衛隊の鉾先として航空自衛隊の宝として大変誇らしく思っている。」(祝辞の記載内容は私の脳裏に残ったものをまとめたものであり、文責等はいっさい私にあることを明記しておきます。)

 

 〇防府市長の祝辞

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《 防府市長松浦正人様の祝辞 》

防府市長松浦正人様の祝辞の要旨

防府市は基地・自衛隊とともに栄え、歩んでいく土地である」

 「わが国の領土・領海・領空が近隣の諸国によって脅かされている危険極まりない大変な事態に至っている。その中で祖国の平和と独立を守る崇高な使命のもと4万数千人の航空自衛隊が日夜奮闘している。

 なかんずく、戦闘機を操縦する65%が航空学生で占められており、ここ45年間はすべて防府の地から誕生していることは恐るべきことであり、ありがたいことである。当市にとって航空自衛隊はなくてはならぬものであるとともに防府市の発展にとって基地の拡大と充実が課題であると認識している。

 本職18年間を迎えるが、航空自衛隊の用務は最優先との考えの元諸行事に参加している。かって豊岡学生が訓練で急逝したことがある。幾多の困難に負けず御身を大切に、国防の最前線でご尽力お願いしたい。航空学生の益々の隆盛発展を祈念する。」(祝辞の記載内容は私の脳裏に残ったものをまとめたものであり、文責等はいっさい私にあることを明記しておきます。)

 松浦正人防府市長様のこれほど力強い堂々とした祝辞は素晴らしかった。18年間市長を務められ、12万市民から信任された市長の祝辞に感動した。

防府市長の祝辞に対する所感

 私は、退官後いろいろな場所で市民を代表する首長の自衛隊における祝辞を聞いてきたがこれほど国の守りに対する信念の披瀝、迫力のある自信に満ちた激励の挨拶にお目にかかっていない。老兵になって久しいが、かって国の守りに就いた一人として厳しい防衛に従事する者にとってこの心情・精神が最もありがたいものである。

 いついかなる時でも生命の危険を顧みず任務を遂行する自衛官にとって、国家国民の負託にこたえる使命感の根源は「国民の信頼」以外にないからだ。市民から選ばれた市長の言葉は千金の重みがあった。航空学生出身の殉職者130柱の英霊はさぞかし草葉の陰から喜んでいてくれるであろう。本来はこれがほんとうの姿でろう。

 私は80歳を迎えた。生きながらえていたら90歳までに、現役時代に歩んだ勤務地を静かに訪れたいと思っている。まず、最初の地は防府となるであろう。私の航空自衛隊における出発点であるからである。改めて最新の防府市の観光案内パンフレットを手にして、かくも歴史のある防府の地で自衛官として育まれたことに感謝した。

 

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《 航空学生の歌 》

 

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《 来賓席 》 

 

 

 《 式典の参列部隊 防府北基地ホ-ムぺ-ジから出典転載 》