元自衛官の時想(16)  常に相手を上回る対案であるかを選択基準

1. 英知を絞って最良の策案を創出 せよ

  35年余の自衛隊勤務では、何事をやるにも、常に英知を絞って最良の策案を創出すこと、実施後は適宜見直し、不具合点があれば改善向上を図ることが求められ、あくなき最善の努力をすることを信条としてきた。

    厳しい自衛隊の任務を完遂するためには、固定観念や過去の踏襲は阻害要因となるものだ。とりわけ昭和の時代の航空自衛隊は  常に最良の創造が求められた。

   隊務運営や部隊行動するにあたっては、目的を明確にし、状況の分析検討を綿密に行い、刻々と変化する状況に対応かつ耐える最良の行動方針を決定する。実行段階においても、たえず状況を判断し、補備修正を行って目的を達成することに全力を傾注してきた。これが有事における戦勝への道であるからであった。

 この考え方、やり方は、なにも自衛隊におけるものだけではなく、世の中すべてに通じるものではなかろうか。あらゆることの進歩発展の原点はここにあるのではなかろうか。

    こうしたことから在隊間は、徹底して実行してきたので、退官後の自動車保険料率算定会(現保険料率算出機構)調査事務所勤務における業務でも同じ考え、やり方で実行した。地域における自治会等の諸活動でも同様である。その習性は今日も多少持続している。

2.常に相手を上回る対案を出し競い合う

 官民を問わず、事業を行うには組織体の総力を挙げて最良策を求め実行するものである。政治・経済産業・社会・文化・科学技術などすべてにわたって、その基本となるところのものは同じであろう。

 これに対して、政治的闘争、主義・主張や宗教的な対立などにおいては、複雑怪奇極まり一口では表現できないものがある。反対のための反対と揚げ足取りが行われたりして、理屈があるようで理屈がない世界であるからだ。あるとすれば、もっともらしい屁理屈である場合が多い。

 若いころから、一つの策案に対して反対、不賛成・不同意の場合は、常に相手を上回る対案を出し競い合えと徹底して教えられてきた。批判したり反対することは簡単であるが、みんなを「なるほど」と納得させる対案を出し競うことは難しいものである。

3.相手を上回る対案であるかどうか選択判断

 私はこうした類の事案についての判断基準を、単なる論評や空理空論、理想論ではなく、策案が合法性・合理性・経済性・実行性・実現性・受入性などの面から現状で取りうる最良案であるかどうかに視点を置いてみることにしている。

 どんな最良策でも、時代とともに状況の変化によって改善しなければ対応できなくなってきている。上は憲法・法律・制度から私たちの身の回りのことまで対象となってくるものである。

 毎日の新聞・テレビで報道される政党の政策や行動のニュ-スや雑誌・書籍を読むときに、その内容が相手を上回る対案であるかどうかを選択判断としている。こうして読み比べると興味尽きないものがある。

 それには、それなりの平素からの調査研究と思索が必要であるが、個人で収集できるものは限られている。十分に選択判断できる資料が少ないからである。そこでいっぺんに飛びつかないでじっくりと考えてからと思っている。こうして考えていると、なかなか、ボケるわけにはいかないようだが、人間の身体・歳というものは争えないものである。