昭和の航空自衛隊の思い出(302) カウンセリング講習と隊員指導

    昭和58年3月から60年7月末まで西部航空警戒管制団司令部人事部長をしたおり、毎年、隷下部隊の服務指導幹部及び服務准尉等に対して カウンセリング講習を実施した。毎回、2泊3日、35~40名で3回約120名が受講した。部隊は約2300名であった。

   ブリタニカ国際大百科事典によると、カウンセリングを「心理相談のこと。健常なクライアント (来談者) がいだく心配,悩み,苦情などを,面接,手紙,日記などを通じて本人自身がそれを解決することを援助する方法。」と解説している。

 時あたかも、社会全般に深く根を下ろして蔓延したサラ金苦の問題、覚せい剤の乱用など次々と新しい問題が表面化してメディアで取り上げられていた。自衛隊員の生活面でどんなに強固な防波堤を築いても、家族を含めた諸問題は通り一遍の訓示や対処策では不十分であった。

 国家・国民を守る厳しい任務の遂行は、上官と部下、先輩と後輩、同僚相互の心の交流と信頼くしてなくして成り立たない。自衛隊では指揮官の「指揮統率」という言葉がある。指揮官が部下をして心服せしめる「統御」なくして心からの服従はない。

 隊員の相談相手となる幹部及び准尉、上級空曹に「カウンセリング」の意義や手法を理解させ隊員指導に役立たせるものであった。

 どんな悩み、悲しみ、怒り、苦情であっても、じっくりと「相手の話を聞く」だけで、人の心は晴れやかになるものだ。胸の内を吐き出すだけで、すっきりとし、安心するものだ。このことは老若男女を問わない。自然に己の取るべき道が見えてくるものだ。

 こうしたことは子供の頃から幾たびか経験してきたことである。頭から否定されないで、「うん」「うん」とうなずいて、黙って話を聞いてもらっているうちに、当事者はどうしたらよいか分かってくるものだ。

 講習の担当部長として、部隊に「カウンセリング」についての理解と技法を習得した人材がいることが明朗闊達な風通しの良い部隊づくりに寄与するものと期待したものであった。時代の進展とともに隊員意識・気質の変化に対応して設けた試みであった。

 

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《 昭和58年 7月 カウンセリング講習、両側は招へいの講師 》 

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《 昭和59年7月  カウンセリング講習、両側は招へいの講師 》

 

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《 昭和60年  カウンセリング講習、両側は招へいの講師 》