昭和の航空自衛隊の思い出(258) 上司の望む先任空曹5章(1)

1.教育担当第4科長として要務特修課程学生に語りかけた短い講話

  昭和56年8月17日~58年3月15日までの1年6ヶ月、第3術科学校第1教育部第4科長として勤務し、要務特修課程学生に対して、「上司の望む先任空曹」の小話を語り問いかけた。

 小話の根底となったものは、昭和32年4月、第1期操縦学生として大空への雄飛を志すも操縦免となり、第1術科学校総務課に勤務し、空士・空曹時代の数年を福田正雄先任空曹のもとで鍛えられた。

   上司の絶大にして全幅の信頼を得て、空曹空士を束ねる先任空曹の卓越した識見技能、指導力の発揮振りを見て「これぞ自分の目指す上級空曹だ」とあこがれ、目標としてきたものであった。

 部内幹候出身幹部として、幾多の部隊経験で出合った先任空曹の活躍ぶりも同様であった。精強な部隊には必ず優れた先任空曹が存在することを確信し、航空自衛隊の精強化のためには先任空曹制度の拡充活用が必要であるとの信念に至った。

 題名は「上司の望む先任空曹5章」とし、❶「片腕になれる人」・❷「前向きの姿勢の人」・❸「隊員指導を委せられる人」・❹「後継者を育てる人」・❺「空白(自分で設定)」の5項目とした。

 当時、自分の言葉で綴り足らざるところはあったが、具体的な活動事例を項目ごとに準備した。

 先任空曹制度については、昭和60年8月航空幕僚監部人事課人事第2班に配置され、61年12月准尉・空曹・空士人事を担当する人事2班長に補職された。

   この間、新准空尉、空曹及び空士経歴管理基準の制定に参画し、62年度から先任空曹制度の施策化と運用、幹部自衛官同様に准空尉、空曹及び空士の個人申告制度の導入と運用を推進する役目を担うことになった。 

 

2.    第4科長として上級空曹に語りかけた「上司の望む先任空曹5章 」の要点 

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殻を破れ・・・新しい視点で見直す  

1.   諸官は、長年自衛隊に勤務し、上級空曹として、豊富な知識と経験を持つ者が大部分であり、各職域においては、「自分こそはその道のベテランであり、空自の第一人者である。警備のこと、給養ののこと等俺にまかせておけ。」という自負やプライドを胸に秘めていることと思う。

 また。誰が何と言おうと物事に対し「こうだ」という確固たるものを持っているであろう。そして各自が自分なりの入れもの、容器をつくり殻をつくりあげているものである。

2. 人間誰しも自分が長年にわたって礎きあげた入れものや容器を大きくしたい、ふくらませたいと望む一方、何とかして現状を固執したいと思うのが人の情である。

 しかし、今ここで上司や同僚 、部下の目から見れば、どんな風に受け止められているかを考えてみることも必要である。

    自分が思っているほど周囲が満足していなかったり、上司が期待するものはもっと大きなものであるかもしれない。あるいは自分で入れものの大きさや容器を決めてかかり、後生大事に守り通してきたかもしれない。もっと入るのに入れる努力をしていなかったかもしれない。

   課程(講習)を機会に自分の意志で入れものの大きさや中身を確認し、「殻を破って」謙虚に考えてもらいたいものである。

3.  そうすればこの課程(講習)で学ぶすべてのことが、意外にフレッシュな気持ちで受け止められるに違いない。職場における自分の姿を鏡に映し、任務遂行に対する自己の信念、姿勢、上司の補佐や部下に対する指揮監督・指導のあり方、業務のやり方、他職域との連けい等のあり方等、新しい別の観点から見直してもらいたい。

 

第1章  片腕になれる人

1   「女房役」であり、陰の「大黒柱的存在」

〇 上司が「言えぬこと」「言わぬ方がよいこと」「言いたくないこと(本当は言いたいこと)」を「言える人」

〇 上司(主人)をたてることが出来る(たててくれる)人

〇 上司の目のとどかぬところに目がとどく人 

〇 かゆいところに手がとどく

〇 間違いを見て見ぬふりをしない人(メンツをたて腹をたてさせぬようにできる人)

〇 ワサビの効いた助言をしてくれる人

〇 ピンチのとき助けてくれる人(最悪のときこそ全力を尽くして助けることが出来る人)

〇 早まった決心をさせない人(ブレ-キがかけられる人)

〇 不利(悪い情報)なことを早めに言ってくれる人(タイミングを失しないで耳打ちしてくれる人、最悪の事態を躊躇することなく言ってくれる人)

 

2  そのためには

〇 自己の役割、立場をしっかりと果たす

〇 上司の本心を知る(意図の明察)     「ツ―カ―」の関係となれ

  わからなければわかるまで付き合え(垣根を取り払え)

        誰よりも最も多く接触(話す)チャンスを作れ

〇 誠心をもって尽くす   私心を捨てよ 

 

 その人の存在、実力、努力は知る人ぞ知る・・・・・・

 上司がいつまでも「よくやってくれた」「ありがたかった」と「忘れず」「思い出す(出せる)」人