昭和の航空自衛隊の思い出(61) 幹部自衛官への道

1.自衛官人生の様々な進路の選択   

   私は、自衛官として、陸上と航空自衛隊、新隊員・操縦学生・一般空士及び空曹・一般幹部候補生(部内)・部内出身幹部、要撃管制等作戦運用部門と人事総務等後方管理部門、レ-ダ-サイト等一線部隊・各級司令部・学校・空幕等、階級は2士から1佐まで、各種の勤務経験をしてみて、自衛官の生き方、生活はさまざまであり、どのように進むかはその人の人生観によるところが大きいと思った。また、その生き方は自分の生まれ育った環境、自衛隊における勤務環境や上官・同僚・部下との関係、家族、個人の資質能力などに影響、左右されるものがあるように思える。

   自衛官生活で、目指す最終目標を幹部自衛官として活躍するか、准尉・曹長になって准曹士先任・先任伍長・職域技能の神様的存在として活躍するかの二つの大きな選択がある。

   どの道も選んだとしても、自衛隊の各種任務の遂行を通じて国家・國民にご奉公することに変わりはない。

    自衛官には、階級、職位、職務に違いはあっても、与えられた職務と責任を誠実に果たすことが求められており、そこには貴賎や価値の差があるわけではない。いずれを選ぶにしても、自分の歩んできた道に終生誇りを持っているかどうかではなかろうか。

    私は、自分が歩んだ幹部自衛官を志すもよし、一方、私が35年余の自衛隊生活で最も尊敬した福田正雄先任空曹(現在でいえば准曹士先任)を目指すもよし、己の信念と考えで選択すれば良いのでなかろうかと思っている。

    自衛隊組織がその実力を発揮するためには、どにらも必要不可欠な人材である。組織を構成する隊員が自分の職務と責任を遂行して任務を完遂することができる。

    ここでは、主題を部内幹部への道に絞っていきたい。

 

2.幹部自衛官への様々な道

   自衛隊で幹部自衛官を志すには様々な道がある。詳しくは防衛省地方協力本部等のホ-ムぺ-ジ等で各種の採用・募集について示されている。

 また、市販の自衛隊関係の受験参考書に詳しく記述されているものがあるので省略する。

 法令面では、防衛庁訓令第63号・昭和33年7月23日「幹部候補者たる自衛官の任用等に関する訓令」に任用等に関する基本的事項が規定されている。これらはインタ-ネットでも見ることができる。 

 幹部候補者たる自衛官の任用等の主要点は、幹部候補者の種類、年齢の範囲、一般幹部候補生・医科幹部候補生・歯科幹部候補生・薬剤幹部候補生及び飛行幹部候補生の細部規定、任命権者、試験、教育訓練、幹部勤務、昇任などが定められている。

     

3.   操縦幹部への志が破れ部内幹部への道を選択 

 一般隊員から部内の選抜試験を受けて、幹部へ進む道については、当事者であった者が語ったものは少なく、詳しく触れられていない面があるので、OBの立場から思い出を含めて取り上げることにした。

   一般幹部候補生(部内)選抜試験については、「昭和の航空自衛隊の思い出( 58)   一般幹部候補生(部内)選抜試験」で少し触れ、重複する部分もあるが、全体の流れから記述することにした。
    昭和29年3月高校卒業した。3年生の中途で進学を断念するも、進むべき方向が見つからず、しばらく模索しているところに、戦後初の高校卒バイロツット幹部養成制度が創設される事を知つた。
    何れにしても、「自衛隊に行こう」決心したので、翌30年1月陸上自衛隊に入隊した。新隊員教育を受けている途中で、「バイロツット=幹部幹部」を目指す操縦学生の採用試験を受験した。幸い合格し、同年6月航空自衛隊に入隊した。
     第1期操縦学生基本課程、英語課程、操縦地上準備課程を経て、操縦課程で飛行訓練中、操縦免となり、整備学校へ所属となった。
     操縦幹部の夢が破れ、挫折、苦悩を味わいながら奮起して新天地を見出した。現場で黙々と職務に精励しながら、進む道は異なるが、「初心に志した幹部となって、再び同期生の後を追っかけよう」と胸に秘めた。これが部内幹候を目指した動機であった。
    この間、空士長から順次2等空曹へ昇任し、自衛官としての様々な経験をし、青年隊員らしく充実した毎日あった。2曹昇任1年で受験資格ができたので受験した。
     
4.部内選抜試験に合格した一般幹部候補生の取扱い

❶ 部内から選抜された一般幹部候補生の任免  

 部内から選抜試験に合格した一般幹部候補生については、前述の防衛庁訓令第63号・昭和33年7月23日「幹部候補者たる自衛官の任用等に関する訓令」に「一般幹部候補生」の中の一つとしてその任用等が規定されている。

❷ 部内の選抜試験の受験資格

 「部内幹部候補生選抜試験の受験資格」については、防衛庁訓令第63号・昭和33年7月23日「幹部候補者たる自衛官の任用等に関する訓令」の(一般幹部候補生)の関連条文の項第4条に規定されている。   

第4条  次の各号の1に該当する年齢36歳未満の者で、勤務成績が優良であり、かつ、部内選抜試験に合格したものは、第1号に該当する者についてはそれぞれ当該階級において、第2号から第4号までに該当する者についてはそれぞれ陸曹長、海曹長又は空曹長に昇任させ、一般幹部候補生を命ずる。
(1) 陸曹長、海曹長又は空曹長たる自衛官
(2) 1等陸曹、1等海曹又は1等空曹たる自衛官
(3) 2等陸曹、2等海曹又は2等空曹に任用後1年を経過した自衛官
(4) 前各号に定めるもののほか、陸曹、海曹又は空曹に任用後4年を経過した年齢25歳以上の自衛官

  【 訓令の主要点】は、
  幹部候補生の部内選抜試験の受験資格は、36歳未満であること。(つまり35歳が上限)、勤務成績が優良であること、3等陸・海・空曹に昇任後は4年経過で25歳以上であること。一般幹部候補生に任命されたら、3曹・2曹・1曹も曹長に昇任することになる。

   私が、部内幹部候補生に任命された当時は、准尉、曹長の階級はなく、曹は1曹が最上位であった。したがって、昭和35年2月1付で、航空幕僚長から「1等空曹 一般幹部候補生」に任命され、「幹部候補生学校に入校を命ずる」と発令された。
 
3.部内幹部候補生選抜試験の内容
 防衛庁訓令第63号・昭和33年7月23日「幹部候補者たる自衛官の任用等に関する訓令」
(試験)
第10条   試験は、次の各号に掲げる方法によって行う。
(1)筆記試験
(2)身体検査
(3)口述試験
2 前項各号に掲げるもののほか、航空機の操縦を志望する者については適性検査を、一般幹部候補生として部内から選抜する者については術科試験をそれぞれ行うものとする。
 
【 訓令の主要点】は、
部内選抜試験は、筆記試験、身体検査、口述試験及び術科試験とすることが規定されている。 
    筆記試験については、当時過去の出題された問題を自習したほか整備学校主要幹部の課業時間後に行われた教育等を熱心に受講した。
 一般学科は、操縦学生課程で基礎課目を学んできたこと、大学進学の準備をしていたことが役立った。自衛隊に関することは、恵まれた環境で徹底的に指導され、積極的に受け入れ、経験し、自ら学んできた事が生きてきた。
    また、2曹へ昇任し、自衛官としての将来方向も固まったことから、34年に尊敬する郷里出身の福田正雄先任夫妻の媒酌で、浜松育ちの女性と結婚することになった。結婚が一層部内幹候受験への決意をさらに高めたように記憶している。
      昭和35年2月10日、航空幕僚長から「第23期一般幹部候補生課程学生を命ずる。(43週)」の個別命令を受けた。
   19歳で自衛隊入隊し、航空自衛官歴4年10月で、24歳9月であった。ようやく、飛行幹部候補生として歩んでいる第1期操縦学生の同期の後にくっつくことができたのである。その後、同年12月13日、課程を無事卒業し、幹部勤務を経て、36年2月1日、3等空尉に任官した。 
 
幹部候補生記章 

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《 私が昭和35年 2月1日~36年1月31日まで1年間着用した幹部候補生記章である。アルバム帳に綴じられていた。55年の歳月を経て台紙はしみがついてきたが、底光りは消えていない。 大空を目指した操縦幹部への夢は絶たれたが、部内から幹部への登竜門である選抜試験に挑戦した若き日の勲章のようなものだ。
     真新しい幹部候補生の桜の記章と1等空曹の階級章をつけて、奈良の幹部候補生学校の 門をくぐった。私だけしか値打が分からないお宝の一つである。》