昭和の航空自衛隊の思い出(69)  小休止では立っておれ、座るな!

1. 小休止では立っておれ、座るな

  昭和35年2月、航空自衛隊幹部候補生学校に入校し、第23期幹部候補生課程(部内)で10か月間、初級幹部自衛官として の職務を遂行するに必要な知識及び技能を修得させるための教育訓練に励んだ。

    航空自衛隊幹部候補生学校で、指揮官・幹部たるものは行軍途中の「小休止程度では立っておれ、座るな」と徹底して教育された。行軍においては区隊長等は実践されていた。また、陸上の新隊員教育隊のときの小隊長も同じようにしていたように記憶している。

   中国三国時代の宰相、諸葛孔明の兵書の教えに、「部下の兵がまだ腰を下ろしていないならば、上官たる者腰を下ろして休んではならない。」とあるが、指揮官のあるべき姿でもある。小休止は短い時間の部下隊員の休息であり、装具の点検や体調を整えるためのものである。

 行軍は、軍事行動を想定しての訓練だから当たり前のことである。

 陸上自衛隊の足元には及ばないが、航空自衛隊でも部隊の野外行動は行われている。当然、行軍では計画的に休憩を取って、水分の補給・体の手入れ・足の手入れ・体調の調整等を行って次の行軍に備えさせる。

 この間、指揮官・幹部は、全員の休息状況・異常者の把握及び対処・周辺及び前方ル-トの偵察確認など行う。指揮官は直接一人ひとりの隊員の顔色・身体全体の様子を確認することが必須である。 

 要は「まんべんなく自分の目で見て回って確認してから休め」ということである。 行動間は、四周に目配りをして緊張感を失わず指揮せよということであり、まさに油断大敵だ。指揮官は指揮官としてなすべきことをしっかりと果たした後に腰を降ろせということであろう。

 

2.体力気力の練成と精神的粘り強さの保持

 長距離の行軍等野外行動は肉体的にも精神的にも苦しくなる。誰しも苦しい時だからこそ我慢して、平然とした余裕を見せることは大事なことである。ましてや指揮官がくたばってしまったのでは部下に動揺が起きる。

 これは行軍のみならず防衛行動、諸事万般に同じである。精神的にも体力的にも鍛えて余裕を持つことが求められる。突発的な事態発生時に、部下はまず指揮官の顔を見るものだ。平然と冷静沈着にして状況を判断し、適切な命令指示を与えれば、部下は整然としてその命令指示に従って行動するものである。

 これは言うは易く行い難しの如く、平素からの心構えと鍛錬によって培うことができる。平素からやせ我慢するところは毅然としてやり抜き自信と度胸を付ける以外にない。

 このためには体力気力と精神的な粘り強さが求められる。幹部候補生の教育訓練はその基盤を築くものであり、厳しいのは当然である。卒業後自らをどのように律し練成していくかが自衛官人生を左右することになる。

 

f:id:y_hamada:20141231153850j:plain

《 52キロ行軍 ひたすら歩け歩け 》