先人たちは、簡潔明瞭にして含蓄のある、味わい深い、しかもウエットと人情の機微に富んだ諸々の名言、格言、人生訓、心にしみる詩や言葉など人生の道しるべとるものを残している。
今回取り上げた「つもりちがい十ヵ条」もその一つで各所でよく見かける。ネットでは額装したものまで手に入れることができるようだ。
この十ヵ条は、ネットで調べてみたら、長野県飯田市にある元善光寺という寺の住職が書いたものと言われているようだ。
もりちがい十ヶ条
1 高いつもりで低いのが 教養
2 低いつもりで高いのが 気位
3 深いつもりで浅いのが 知恵
4 浅いつもりで深いのが 欲望
5 厚いつもりで薄いのが 人情
6 薄いつもりで厚いのが 面皮
7 強いつもりで弱いのが 根性
8 弱いつもりで強いのが 自我
9 多いつもりで少ないのが 分別
10 少ないつもりで多いのが 無駄
2 低いつもりで高いのが気位
❶ 気位について
「気位」とは、どんな定義があるであろうか。辞典を調べてみると、一般的な用語としての「気位」と剣道用語の「気位」がある。
次ような自分と他人の二つの要素が絡み合い、どのように受け止めるかによって、低い高いの差が出てくるようだ。
一般的には、「気位」は、「他人と比べて自分が上だと考える」上位指向と「それを保とうとする気持ち」向上志向という両面があるものである。
剣道用語では、「修練から生じる威厳・威力であり、名人、達人におのずから備わったもの」という意味で、「修練を積むことによって自然に備わる気品」のことを表している。」と解釈されている。
❷ 自然に醸し出される気位
こうしてみると、「気位」は文字通りその人から自然に発する、醸し出す人間的な厳・寛・和の雰囲気、気高さであり、その度合いをいうものと理解する。
社会生活において、自分が他より上だと態度で顕示するものより、堂々とした態度と謙虚さのある人の方が人物・格が上だと伝わり受け止められるものである。そこには心身ともに内面が充実した人からは自然に人間力が醸し出され伝わるものである。
果物でも、中身の美味しいものは、形が整い色艶が良く皆さんから好かれる。
❸ 低いつもりで高いのが気位
多くの庶民は、気位など気にもしないで毎日を過ごしている。シニアクラブなど高齢者集団ともなると高齢化が進み、お互いに似たり寄ったりである。世の中は広く色々である。入会者が減少傾向にあるが、そこに潜む要因に実は「気位」がある。
ご本人は、それ相応の歳になっていても、気力体力の低下した高齢者集団の一員に見なされたくないとの潜在意識が邪魔をしている。いうなれば気位が高すぎて、地域の高齢者集団になじめず、人生を終わろ方もある。
現役時代の地位や名誉を忘れて、市井の高齢者となって。「高い気位」から「低い気位」へ転換すると新しい世界が見えてくるものである。