9月7日から第19回国民の自衛官に選ばれた9人1部隊の横顔が産経新聞に随時掲載され.るようになった。
「国民の自衛官」顕彰に敬意を表し、顕彰事業創設以来、毎回受賞の紹介記事を自衛隊OBの一人として関心を持って拝読している。
この顕彰事業の特色は、自衛官の顕彰を通じて、国民の前に第一線の部隊等で国家防衛の使命を黙々と遂行している自衛官の姿を浮き彫りにしその実態の一端が紹介されることにあり、大変喜ばしいことである。
こうしたことから、多くの国民に知ってもらいたいの一念と優れたもったいない記事であるので、逐次紹介したい。
❶ 国民の自衛官横顔「自衛隊佐世保病院院長 田村格1等海佐(48)」
❷ クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の客船感染対策処置
わが国における新型コロナ集団感染の最初の対処は、クルーズ船ダイヤモンド.プリンセス号に代表される諸活動で、自衛隊中央病院及び陸上自衛隊を主力とする部隊であった。
その活動概要は、防衛省のホームページに「新型コロナウイルス感染拡大をけた防衛省・自衛隊の取組」2020年4月10日に概要が報告されている。実によくやったというのが実感である。
当時、国民の目にも、連日新聞テレビで、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」への対応・ 医療支援、 生活支援等、 船内の共同区画の消毒及び 下船者の輸送支援の状況が報道された。
突如として、新型コロナに集団感染したクルーズ船の出現により、自衛隊部隊が派遣され、巨大で複雑な客船上での前例のないオペレーションが展開された。また、感染患者の自衛隊中央病院への受け入れを整斉円滑に実施した。
これらは、極めて 感染リスクの高い活動であったにかかわらず、活動従事者から1名の感染者を出さなかったことが強く印象に残っている。コロナウイルスへの具体的な感染対策の先導役を果たしたともいえる。
❸ 防衛医科大学校 防衛医大ホ-ムベ-ジ 出典
設立の目的
医師である幹部自衛官となるべき者を養成し、かつ、自衛隊医官に対して自衛隊の任務遂行に必要な医学についての高度の理論、応用についての知識と、これらに関する研究能力を修得させるほか、臨床についての教育訓練を行うことを目的として設立されたものであります。
防衛医科大学校の沿革
1973年11月 |
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1975年 9月 |
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1977年12月 |
病院の開設 |
1980年 3月 |
第1期医学科学生卒業 |
1985年 4月 |
初の女子学生入校(第12期学生) |
1987年 6月 |
医学研究科を開設 |
1987年10月 |
医学研究科学生の教育を開始 |
1991年 9月 |
第1期医学研究科学生修了 |
1992年 3月 |
医学科卒業生(第13期学生)に学位授与機構から学位授与開始 |
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医学研究科修了生(第1期学生)に学位授与機構から学位授与開始 |
1996年10月 |
防衛医学研究センター開設
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2007年 8月 |
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2012年 4月 |
がん診療指定病院として埼玉県より指定受け |
2014年 4月 |
看護学科を開設 |
2016年 4月 |
高等看護学院を廃止 |
2018年 3月 |
第1期看護学科学生卒業 |
❹ 所感
① 自衛隊中央病院対策チ-ムのリ-ダ―としての活躍
田村1佐は、新型コロナ集団感染に際して、自衛隊中央病院対策チームのリーダーとして立派に任務を果たしたとして顕彰されたものである。
緊急事態は突如として生起するものである。普段からあらゆる事態を想定して、対処計画の作成とそれに基づく訓練演習を行っているから即応体制が機能する。実任務による行動経験ほど各級指揮官と隊員の識能の向上に資するものはない。
特に、各級指揮官にとっては、状況は刻々と推移する中で場数を踏んだ経験は、胆力を鍛え自信をつけて、問題点の把握と改善の方向を明確にし、指揮統率力が向上するものである。
② 防衛医科大学卒業生の活躍
防衛医大が昭和48年(1973年)11月に開設され、昭和55年(1980年)3月第1期生が卒業
して41年が経過した。現在、自衛隊中央病院長は第8期生の福島功二防衛技官である。
今や防衛医大卒業生の医官が自衛隊の各病院、部隊等のほか町の名医として活躍している。頼もしい限りである。
私は自衛隊在隊間、一度も自衛隊病院には入院したことがなかったが、同期生にはお世話になる者もいた。息子は自衛隊在隊間に自衛隊中央病院に入院したことがある。自衛隊現役時代は人事担当として、空幕衛生部、司令部医務官、部隊医官と関係事項について連絡調整することがあった。また、中央病院には✕線技師等養成所の入所式、卒業式に参列し、その折、病院内の一部を見学する機会があった。
かってオウムのサリン事件で陸自の化学学校、特殊防護隊が出動して活躍したことが思い出される。新型コロナ感染症に対しても、自衛隊の病院及び部隊は各種の活動をして高い評価を受けた。田村1佐の「自衛隊の今後の感染症対応の在り方は質を上げていくべき」との意見は、対策チ-ムのリ-ダ-としての経験から発した言葉であろう。備えあれば憂いなしである。
各国軍隊は、軍事作戦における各種感染症について軍人の衛生救護面から対処策を研究調査、訓練し危機に備えている。そのことが有事において国民を感染症等から守ることにつながっていくものある。