昭和の航空自衛隊の思い出(383) 昭和62年改正の准空尉、空曹及び空士自衛官経歴管理基準(1)・ダイジェスト版

 1. 准空尉、空曹及び空士自衛官経歴管理基準改正への参画

   平成61年(1966)12月、空幕人事課人事第2班長に補職され、63年(1988)6月末まで務めた。空幕人事課人事第2班は、班長以下8名の陣容で、航空自衛隊全般の准空尉・空曹及び空士約3万7千名の人事に関わる施策、充員・異動・昇任・昇給等の業務を担当した。

    空幕勤務は、 航空自衛官生活30年余、50歳となっており、最終段階に近づいていた。幸いにして、昭和42年(1967).要撃管制幹部から人事幹部へ転進して以来、胸に秘めた 四つの命題にその時々の職務を通じて取り組むことができた。

 航空幕僚監部において、航空自衛隊全般の准空尉、空曹及び空士自衛官に関わる人事を担当する人事課人事第2班で総括担当を経て、1佐の班長として人事施策・人事管理を主導する機会を与えられた。

 振り返ってみると、空幕勤務で二つの大きな仕事を果たせたことは 最高の喜びであった。

   その一つは、昭和60年(1985)8月 空幕勤務になるや、利渉弘章空幕人事課長から人事第2班の業務の見直しについて特命を受け検討した。

   准空尉、空曹及び空士人事の骨幹となる充員計画の作成・実行の一体化は、人事第2班の命脈であるとの所見を報告し、取り上げられ、高橋和夫班長時代に、准空尉・空曹及び空士充員計画の作成が、61年度分から人事第2班担当となりスタ-トをした。人事計画室からの移管‣移行も円滑に行われ、以後、人事第2班が本来のあるべき姿になり、その機能を発揮できる体制が確立されたことであった。主管班長として充員計画を手がけることもできた。

 もう一つは、当時、人事計画室(企画室)において、改正作業が行われていた「 准空尉、空曹及び空士自衛官経歴管理基準」について、 准空尉、空曹及び空士人事に関わる担当班の立場から積極的に改善を要する事項と具体策を提案し改正内容に反映することができたことであった。

   特に、懸案の上級空曹の能力の活用、先任空曹等の役割などについて明文化するなど将来の准曹士先任制度の基礎作りができたことであった。

 人事教育部人事計画室(企画室)における「准空尉、空曹及び空士自衛官経歴管理基準}の改正作業は、優秀な人事幕僚として活躍していた高橋守男2佐が担当したと記憶している。両者の相互の連携は緊密であったことが強く印象に残っている。

 

2.准空尉、空曹及び空士自衛官の経歴管理の推移

   准空尉、空曹及び空士の経歴管理基準は、昭和62年3月12日、「准空尉、空曹及び空士自衛官の経歴管理について(通達)」が発出され航空自衛隊報に登載された。 

 当時のメモ資料の中に、古びた「准空尉、空曹及び空士自衛官経歴管理基準 ダイジェスト版」が残されていた。

  

3. 昭和62年改正の准空尉、空曹及び空士自衛官経歴管理基準 ダイジェスト版の編集・作成・配布

    准空尉、空曹及び空士の経歴管理基準は、昭和62年3月12日、「准空尉、空曹及び空士自衛官の経歴管理について(通達)」が発出され航空自衛隊報に登載された。 

 航空幕僚長から通達された経歴管理基準をいかに具現化し、有効に運用するかは実人員を担当する人事第2班の役目であった。

     単なる通達でなく、そこに命を宿させ、准空尉、空曹及び空士自衛官の経歴管理のねらいと基準を定着させるように、特に各級指揮官及び准空尉及び空曹に周知徹底することに努めた。

    そのためにはどのような手段方法があるか検討した結果、硬い通達文面のみではなく、要点とポンチ絵的なものを入れたりして視覚に訴えることに着目して、関心と理解を容易にしようとの考えから、航空自衛隊で屈指のマンガが得意の山本茂雄1佐にお願いしてイラストを描いていただいた。

    当時、マンガは時代の流行として定着しており、班員が知恵を絞って編集したものである。今まで通達の趣旨、内容をダイジェスト版として、これほどイラストを取り入れたものはなかったので画期的なことであった。

    この発想も、なにしろ堅い人事の分野であることから、小冊子とはいえ多少の反対もあるかと思ったが、全員に賛同していただき、人事課長、人事教育部長に了解を得て発行に踏み切ったことを覚えている。

 初任空曹長集合教育での配布はもとより、全国の編成単位部隊以下まで配布し、隊員が身近に手にすることができるように努めた。この種のもので、これほど多くの隊員に読まれたものはなかったと自負している。

 編集に携わったのは、当時班員のうち、2佐桒原主税、曹長染谷忍、2曹福田文紀、事務官安斎敬子、イラストは空幕調査第1課調査第1班長山本茂雄1佐であった。

 

4.  准空尉、空曹及び空士自衛官経歴管理のねらいと方向   

 空幕人事第2班長として、全国の各基地を訪問した折は、所在部隊の隊長・小隊長と上級空曹の二つのグル-プに分けて、所管班長の立場から准空尉、空曹及び空士の経歴歴管理について、ねらいと概要に加えて実際の人事管理の運用状況を説明した。どこの場であっても真剣に耳を傾けてもらったことが鮮明に残っている。

 経歴管理とは「隊員の昇任、転任、補職、入校等を計画的かつ継続的に管理することをいう」であり、それぞれの隊員が自分の自衛官人生と重ね合わせていたからであった。 准空尉、空曹及び空士の経歴管理の責任者は、「隊員を管理する各級指揮官」である。第一線部隊の隊長・小隊長がいかに経歴管理の趣旨を理解し、日常勤務の中で具現化に努めるかにかかっていたからである。そこには、上から下までの一貫した努力が求められていた。

 各種の説明や講話の席に立って、いつも念じていたことは、一人でも多くの隊員に自分の自衛官生活の将来像を描けるようにすることであった。各級指揮官には、部下隊員の経歴管理に最大の努力を払ってもらうことをお願いした。そのことが航空自衛隊の任務遂行能力の向上、わけても人的戦力の精強化に資するものであったからであった。

 隊員の経歴管理においては、空幕班長としての大きな役目は、空幕という准空尉、空曹及び空士人事の総元締めの立場から充員計画の作成、昇任・異動、特別昇給などの部隊別の枠組みの設定、予算の配分、各種要員や入校者等の選定などにおいて、注意深く経歴管理基準が履行できるよう業務を遂行することであった。

 

5.昭和62年改正の「 准空尉、空曹及び空士自衛官経歴管理基準」 ダイジェスト版の紹介

 いずこの組織においても、人事管理の基本的路線は創設時代からの長年の歴史を経て形成されるものである。時代の進展とともに改善向上し、時にはダイナミックに改革が行われ方向転換することもある。

 昭和62年(1987)の改正でも、50年(1975)ごろの制定から10年を経ると部隊の新設・任務・隊員の意識はもとより社会環境の著しい変化があった。

 今日の航空自衛隊は、昨日の航空自衛隊ではないほど充実発展している。昭和62年に改定された経歴管理基準は当然、時代の進展に応じてダイナミックな改革・改善が行われ、改正を重ねてきているであろう。

 こうした中で、昭和から平成の初めにかけての 准空尉、空曹及び空士自衛官経歴管理基準ダイジェスト版を紹介しよう。

 

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《 昭和62年制定の「 准空尉、空曹及び空士自衛官経歴管理基準」 ダイジェスト版の表紙・はしがき・最終面