山口県周防大島町で行方不明になっていた藤本理稀ちゃん(2)を発見した尾畠春夫さん(78)=大分県日出町=は20年以上、災害被災地や山などでボランティアに取り組んできた。「人に、世の中に、恩返ししたい」が口癖で、2016年に大分県佐伯市で行方不明になった女児(2)の捜索にも携わった。「人の命より重いものはない。尊い命が助かってよかった」と涙を浮かべた。

 尾畠さんは14日に山口県周防大島町に到着し、理稀ちゃんの家族に自分が見つける決意を伝えた。15日午前6時ごろから単身、裏山に入り、30分ほどで沢沿いに座っていた理稀ちゃんを発見。バスタオルにくるんで抱きかかえ、約束通り、家族に引き渡した。

 親族によると、尾畠さんは65歳まで大分県別府市鮮魚店に勤務。40代で登山を始め、休日は由布岳などを登っていた。「今の自分があるのは周囲のおかげ。社会に貢献したい」と自費で登山道の清掃や案内板の設置を続け、14年には環境省表彰を受けた。

 被災地支援にも取り組み、東日本大震災では宮城県南三陸町で家族写真など「思い出の品」を捜すボランティアに従事。熊本地震では熊本県益城町で、他のボランティアを統率し、がれきの撤去などに当たった。

 16年12月には女児(2)の捜索に加わり、無事に見つかった。「行方不明者のニュースを見ると『早く見つけてあげないと』とすぐ車に乗り込み、現地に向かっていた」と親族。「これまでの経験が、今回の捜索に生きたのかもしれません」と話した。

=2018/08/16付 西日本新聞朝刊=