平成2年4月 航空自衛隊を退官すると同時に、航空自衛隊OBで組織している「つばさ会」へ入会した。
退官後の第二の人生の途中で、つばさ川柳の主宰・選者が願法満氏に代わられたのを機会に、平成14年から18年まで、つばさ会川柳同好会の会員となり、年4回の投句に毎回参加するようになった。その後、平成19年から24年ごろまで約5年にわたり、自治会活動や病気で休止したことがあったが、平成25年から再び参加するようになり、今日まで相変わらず投句を続けている。つばさ川柳の投句は、最近、課題句2句と自由句3句をもって参加している。
1 つばさ会川柳のきっかけ
川柳を作ってみようと始めた背景には、航空自衛隊在隊間において、年末の忘年会等では一年間の総決算として、上司・同僚・部下の立場から見た勤務ぶり、人物像、特色などを川柳的な発想で文句を作り発表する機会を作り融和を図ったものである。また、隊員の転任、退職にあたっては同じ発想で川柳的な形式にして思い出をこめた文章を作り贈ったりしたものである。
こうしたことがあって、その後、「つばさ会だより」に掲載される先輩たちのつばさ川柳に触発されて興味を抱くようになり、つばさ川柳同好会に仲間入りをさせてもらうようになった。
2 川柳句はわが心の遍歴
今回、終活整理の一環として、つばさ会の機関紙である「つばさ会だより」に登載された自分の作品を整理してみた。初回の投句から今日までを顧みると、国内外の情勢、私自身を取り巻く社会・生活環境の推移に伴う「心の中の動き」が当時の作品の中に反映されており、往時のさまざまなことがよみがえり、わが胸に万感迫るものがある。まさに心の遍歴でもある。
3 投句した川柳句の整理
整理をした背景の一つに、最近心配しだしたことは、偶然ではあっても、詠んだ句が過去のものと全く同じものになって投句することを危惧するようになったことである。投句するときには家内に一度チェックしてもらおうと思って整理をすることになった。
よく見かけるのは、後期高齢者ともなると、同じことを何度も同じ人にしゃべっている人に接することが多くなったからである。まさに他人事ではなくなったからである。そのことが歳をとったということであるからだ。
4 つばさ川柳投句集
今回は、平成25年5月から28年1月までの間に、つばさ川柳に投句したもので、「つばさ会だより」に掲載された吟句を紹介する。
つばさ川柳の選者は、願法みつる氏である。願法氏は、自衛隊OBで大体同じころに航空自衛隊を定年退官したと記憶している。埼玉川柳社代表で「川柳さいたま」編集人・発行人をされており、つばさ川柳でご指導いただいてきた。
つたない川柳であるが、いろいろな社会や日常生活の出来事をわが心に映ったものを川柳の作品を通して表現した。こうしてみるとわが心の遍歴のようなものでもある。
つばさ川柳 平成25年5月~28年1月
潮騒の香りを浴びて気が満ちる
来賓の長広舌へブ―イング
題「見舞」
歳重ね仕分けに悩む見舞い方
(平成二十五年五月第125号)
懐かしむ無念無想の遍路旅
大病を患って得た死生観
題「無形」
むき出しの観観観が発火点
(平成二十五年七月第126号)
アルバムをめくれば開く玉手箱
誇りなどかなぐり捨てて他国打つ
題「名案」
亡き親と暮らしができる夢枕
(平成二十五年十月第127号)
回想もわれ健在と主役ぶる
花畑咲かせてほっとえびす顔
題「漏れる」
秀 歳なのか言わぬ誓いをふと忘れ
(平成二十六年一月第128号)
勝ち負けを超えて日暮らし心富む
カラオケも仲間同士で満ち足りる
題「役者」
幕引きは自分で決めて終わりたい
(平成二十六年五月第129号)
花畑話題集めて荷を下ろす
分かっても認めたくない我がいる
題「揺れる」
防人の信念今だ頑固爺
(平成二十六年十月第130号号)
いたわりが甘えに転じ老いの坂
まだまだと身辺整理はかどらず
題「用心」
用心の二文字踊るわが国土
(平成二十六年十月第131号)
日暮しが平凡だから落ち着ける
勝手知る基地も久しく他所の人
題「楽観」
秀 老いてなお背筋伸ばして気が満ちる
(平成二十七年一月第132号)
天命と悟ったようでただの人
日薬の忘れた分をそっと飲む
題「旅行」
順番があってないのが次の旅
(平成二十七年五月第133号)
同期会薬の数で序列付け
一里塚旗を立てては乗り越える
題「留守」
老々がいることだけで喜ばれ
(平成二十七年七月第134号)
花づくり喜ぶ顔に励まされ
コスモスと秋風揺らす赤トンボ
題「例外」
秀 心地よい平和ことばに惑わされ
(平成二十七年十月第135号)
待ち望む情景撮れてえびす顔
新築と子供の声が活気呼ぶ
題「ロマン」
杖つかず背筋伸ばして好々爺
(平成二十八年一月第136号)
《 次回に続く 》