元自衛官の時想( 37 ) 平成29年度政策提言書に寄せて(1)

平成29年度政策提言書の防衛省への提出

   私は平成2年4月定年退官以来、隊友会及びつばさ会の会員です。平成29年11月.公益社団法人隊友会」、公益財団法人「偕行社」、公益財団法人「水交会」及び航空自衛隊退職者団体「つばさ会」の4団体が合同して作成された「平成29年度政策提言書」が発表された。

1.公益社団法人隊友会と政策提言書

    隊友会(会長藤縄 祐爾氏)は、自衛隊退職者及び予備自衛官等を正会員とする全国組織の団体で、平成28年には創立以来56年目を迎え、23年度からは公益社団法人として公益事業の充実強化に努めている。
   会の目的は、「国民と自衛隊とのかけ橋として、相互の理解を深めるとともに、防衛意識の普及高揚に努め、国の防衛及び防災施策、慰霊顕彰事業並びに地域社会の健全な発展に貢献することにより、わが国の平和と安全に寄与し、併せて自衛隊退職者の福祉を増進すること」である。

 隊友会は、「国民と自衛隊とのかけ橋」として、国民の防衛意識の高揚や国の防衛・防災施策等への協力に関する各種活動を実施している。これら活動の一環として防衛環境の改善・防衛基盤の育成発展に寄与する防衛諸政策のあり方などに関する「政策提言書」を昭和47年から毎年、防衛省に提出・報告してきた。平成28年度から偕行社、水交会及びつばさ会の3団体が加わり4団体合同となり、より深く幅広い提言書となっている。

2.  航空自衛隊退職者団体つばさ会と政策提言書

   つばさ会(会長外薗健一朗氏)、昭和40年、航空自衛隊退職者団体として、会員相互の親睦と航空防衛力の発展に寄与するために発足した。会の目的は、「会員相互の支援及び親睦を図るとともに、航空自衛隊の諸業務に対する必要な協力と支援、航空自衛隊殉職者等の慰霊顕彰、並びに社会に対する貢献等を行い、もって会員の福祉と航空防衛力の発展に寄与する」とある。
 これから50年余にわたる諸先輩のご尽力により、航空自衛隊の退職者全員が会員になる資格を有するようになり、会員数も大きく拡大した。また、航空自衛隊の活動に対する支援も、対象項目、規模、内容ともに大きく発展・充実してきました。更に、近年では、隊友会、偕行社、水交会との協力関係も進展して、平成28年度からは、防衛省に対する政策提言を4団体共同で行うようになったのである。 

3.防衛省への政策提言書と各界への理解

 平成29年度政策提言書は、隊友会、偕行社、水交会及びつばさ会の4団体合同により防衛省に提出された。この政策提言書は当初から国会議員や各界有識者などに送付していたとのことで、新たに、統合幕僚長・陸・海・空幕僚長に対しても説明が実施されたと会報「隊友」・「つばさ」は報じている。

4.OBとして政策提言書に寄せる思い

 この提言書は、長年にわたって国家防衛の任務に服したOBと現職の声なき声を代弁する内容のある提言と言って過言ではない。政策提言に寄せるOBとしての思いは、28年度政策提言書が発表された折に、ブログに記した。

 2016-11-17 元自衛官の時想(9)   隊友会・偕行社・水交会・つばさ会の4団体の「政策提言」に思う

OBとして29年度政策提言書に寄せる思い

❶    我が国の国家防衛の第一線にあって任務を全うしたOBとして、この政策提言書は、今日 厳しい環境下で世界各地における国際平和協力活動や国内での諸活動・訓練に励んでおられる自衛隊員の皆様の任務達成と安全を支える立場からも、国家存立の基本である安全保障・防衛について国民の皆様の理解が一層深まることを願ってやまない。

❷ 世界のどの国家であっても、憲法等の国家の基本法には、国家防衛、軍隊について明記している。憲法上、国を防衛するための実力組織を明記し、その地位・役割を明らかにすることが必要と考える。それは国家の平和と独立、国民の生命財産の保護・主権の基盤をなすものではなかろうか。一介の元自衛官であるが、この政策提言書の内容は多くのOBが現職当時からの長年の願望であり、政治的な駆け引きは全くなく、現実を踏まえ長期的視点に立った、実によくまとめられた内容と確信するものである。

❸ 国家の安全保障・防衛は、憲法とこれに基づく諸法令に基づいて行われる。民主主義国家おいては、国民の支持と国民から選ばれた政治によって達成されるものである。政策提言とされたゆえんもここにあるであろう。防衛省の防衛政策、防衛諸計画の策定はもとより、国会における安全保障、防衛政策の審議・議論、政党の政策策定・提示にあたり、この政策提言書が、一人でも多くの方に理解され支持されることを願うものである。

5.  平成29年度政策提言書

  政策提言の主要項目は、6項目である。個人的なブログであることから、提言内容について所感をのへることにした。

  

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提言の項目内容

 はじめに
憲法の改正
(1)国を防衛する実力組織を軍(国防軍)として憲法に明記
(2)軍(刑)法や軍事裁判所などの軍事司法制度の整備
(3)緊急事態条項の整備
(4)国民の国を守る義務の明記
2 安全保障法制の充実;グレーゾーン事態に応ずる法的整備
(1)日米安全保障条約の改定検討
(2)国際平和協力活動等における武器使用基準の見直し

3 日米共同防衛・国際共同行動の実効性の確保

(1)日米安全保障条約の改定検討
(2)国際平和協力活動等における武器使用基準の見直し
4 防衛体制の強化
(1)着実な防衛力の整備
(2)防衛産業の維持・育成
(3)島嶼部における防衛態勢の強化
(4)着実な弾道ミサイル等の脅威への対応
(5)宇宙空間及びサイバー空間の利用及び対処
(6)海洋状況把握(MDA)体制の構築
(7)任務の多様化・国際化等に対応する人的防衛力の確保
(8)有事等における元自衛隊員の有効活用
(9)国民に対する安全保障教育の充実
5 任務遂行のための環境整備(自衛隊員の処遇改善等)
(1)隊員の再就職に関する施策の推進
(2)隊員の即応性確保を第一義とした宿舎整備及び隊員が後顧の憂いなく任務に邁進し得る家族支援施策の推進
(3)隊員の任務・職務の特性を適正に評価し得る給与制度
(4)隊員の使命感を醸成し得る栄典・礼遇の付与
(5)戦闘における殉職者の追悼
(6)予備自衛官等の制度の充実
(7)働き方改革への対応
防衛医科大学校の改革

 はじめに
 本提言書は、隊友会が昭和47年以降行ってきた政策提言を昨年度から偕行社、水交会、つばさ会の3団体を加え、4団体合同で実施する2回目の政策提言書であり、昨年度よりも多くの意見・要望が各団体から出され、密度の濃い議論が行われたと考えています。
 今年度は、トランプ米政権の誕生や文韓国政権の誕生等、東アジアの安全保障を共に担っていくべき国々の政権が大きく変わるとともに、北朝鮮による度重なる弾道ミサイル発射及び威力を格段に向上させた核兵器の開発等、東アジア情勢は今までにない不安定な状況となっております。
 本政策提言書においては、これら情勢を踏まえて、中・長期的な展望に立脚し、憲法に関するものから、防衛政策、防衛力整備、自衛隊員の処遇等に関することまで広範なものについて提言を行っております。
 これは、我が国が、国際社会において国力に相応しい責任を果たすことが不可欠な情勢にあるとの認識に立ち、現職自衛隊員が透徹した使命観のもとに後顧の憂いなく、高い誇りと自信を持って国内外の各種任務遂行に専念できるよう、その環境の改善・整備に貢献することが我々の役割と確信するからです。
本年は、以下の6項目の政策について提言します。

(次回、1.憲法改正 を記載します。)