山門の人生の教示 裸になって一から出直すと決めたら心は軽い

  毎月1日と15日は天竜山洞雲寺にある墓参りをしている。山門掲示板には道しるべが掲示されている。示唆に富んだ言葉である。

 人生航路においては、順風満帆の勢いに乗った晴れの日ばかりではない。大嵐や荒波にもまれ難破したり、失敗・破綻・挫折の危機的な状況に直面することがある。そこまでいかなくても、精神的・肉体的に不安・苦悩に陥ることがあるものだ。

 誰もが多かれ少なかれ、この世に生を受けてから息を引き取るまでの間にはいろいろなことを経験し、再び立ち直り人生を歩むものである。人間は生きていかなければならないからだ。

 「裸になって一から出直すと決めたら心は軽い」この言葉は、置かれている立場によって受け止め方が異なるが、どんな場合でも、再起するには「裸になって一からやり直す」覚悟と固い決意が必要であることを示している。

 裸にるなど言葉では言えても、いざとなれば、人間は他人とのしがらみ、見栄・虚勢と甘え、恥と外聞、義理と人情、名誉とプライドなど言うは易くとも、己の心は許さず、断ち切れないものだ。裸になるということはまずすべてを捨てるということである。裸になったつもりが、実際はちょっと衣を脱いですぐに衣をつけ、裸になっていない場合が多いものだ。人間の弱さであり業というものであろう。

 若い時代の失敗や挫折は立ち直れ、やり直しがきくが、後期高齢者となっては、人生のやり直しがきかない。後がないのである。誰でも、他人のことは見えるが、自分のことは見えないものだ。残された人生を己の心に恥じないように生きていきたいと思っている。

f:id:y_hamada:20171001054046j:plain

《 浜松市西区神ケ谷町 天竜山洞雲寺山門の10月掲示 》