元自衛官の時想(21) 浜松基地と地域社会との共存共栄

1.夜間飛行訓練に関する自治会回覧

 毎月の月初めの自治会回覧板の中に、浜松基地から翌月の夜間飛行訓練の予定の文書がその他の回覧文書と一緒に回ってくる。この文書は第一航空団監理部長名で、基地周辺の自治会の皆様へ発出されたものである。この中には夜間飛行訓練の予定となぜ夜間飛行訓練をするのかを説明し、住民の皆さんに理解をいただこうというものである。

 航空自衛隊OBの立場から拝見していると、一枚の文書であるが、多様かつ困難な夜間の飛行訓練に励む隊員の苦労が目に浮かんできて、「ご苦労さん」とつぶやき、「無事故でね」と祈っている。

 基地周辺に住んでいるので、昼夜を問わず時、時折、航空機のエンジン音が聞こえてくると、実任務や訓練が始まった、静かになると無事に訓練等が終了したことを知る。

 現職時代、人事幕僚として戦闘航空団に勤務した時は、夜間飛行訓練が終了するまでは、所定の業務が終わっていても基地にとどまり、「全機着陸、訓練終了」の放送が終わってから帰宅したものであったことを思い出すことがある。

 そこには操縦者の空中における厳しい任務に対する練成に練成を重ねる心意気に共感し、万が一航空事故等への迅速な緊急対処を行うという確固たる信念と行動のようなものがあったように思う。

2.エンジン音と国家防衛への認識・理解による受け止め方

 航空機のエンジン音一つとってもその受け止め方や感じ方は人さまざまである。民間航空機に旅行や用務で乗ってもエンジン音はそれほど苦にならないものでも、国際情勢への認識、国防・軍隊への認識、自衛隊の任務と隊員の職務に対する理解の程度により、自衛隊機の発するエンジン音に対する受け止め方や感じ方はずいぶんと度合いが異なってくるものである。民間機と同類の機種であっても同様である。

 最近起きている、幼稚園や小学校の子供の遊び声も元気な良い子が育っていると受け止める人と、うるさいと感じる人との差はどこから来るであろうか。私の町では若い家庭が隣近所に増えて、子供の元気な声がよみがえってきた。元気な声が聞こえると目を細めてほほえましくうれしくなるものだが、これなどは理屈を超えたものなのかもしれない。

 現職時代、航空基地の当直幹部についていて、夜間飛行訓練でたまに苦情・抗議の電話のある基地と全くない基地を経験したことがある。

 ジェット航空機が空中を飛行するにあたっては、機能的にエンジン音を発することになる。このため基地周辺の施設の防音対策の他、飛行運用に当たっては、地域住民にできる限り迷惑をかけないよう対策を推進し、「お知らせ」のように、これが広報により理解協力をいただく努力は大切なことと思う。

 一部の自衛隊・基地の存在不認や為にする反対のための反対等、特定の主義・主張の立場からのものについては言及しないことにした。これが民主主義の世の中というものであるからである。

3.航空自衛隊の基地の存在と地域との共存共栄

     航空自衛隊の基地は、飛行場を有する大きな航空基地から航空警戒監視部隊の所在する離島のレーダー基地に至るまで様々な任務を持った部隊等が所在する基地がある。  

 浜松基地は昭和31(1956)年から平成2年までの間に5回勤務したが、浜松基地と地域社会との関係は、浜松基地創設以来良好な関係にあると言える。全国各地を勤務したり、職務で訪れた離島等を含めた各基地の状況も同様であった。沖縄も特定の団体等を除けば、基本的に地域住民と航空自衛隊基地との関係は共存共栄であったように受け止めていた。

 航空自衛隊の基地は、国民から負託された使命を果たす部隊・機関が任務遂行の基盤となるところである。任務を効果的に果たすには基地周辺との共存共栄は必要不可欠である。すべての隊員はそのことをよく認識・理解している。

   特に今日においては、飛行と安全は航空基地の円滑な運営にあたって極めて重要な事柄であるからだ。

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《 航空自衛隊浜松基地からの夜間飛行訓練等のお知らせ 》

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 《平成29年9月13日夕刻の西の空、鮮やかな天空に魅せられしばしばたたずむ 》

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《 平成29年9月13日夕刻、早期警戒管制機(awacs)が離着陸訓練を繰り返した。 》