昭和の航空自衛隊の思い出(387) 昭和62年改正の准空尉、空曹及び空士自衛官経歴管理基準(5)・昇任管理

1. 昭和62年改正の准空尉、空曹及び空士自衛官経歴管理基準・ ダイジェスト版について

    昭和62年(1987)3月に、航空幕僚長から通達された経歴管理基準をいかに具現化し、有効に運用するかは実人員を担当する空幕人事第2班の役目であった。

     単なる通達でなく、そこに命を宿させ、准空尉、空曹及び空士自衛官の経歴管理のねらいと基準を定着させるように、特に各級指揮官及び准空尉及び空曹に周知徹底することに努めた。

    そのためにはどのような手段方法があるか検討した結果、硬い通達文面のみではなく、要点とポンチ絵的なものを入れたりして視覚に訴えることに着目して、関心と理解を容易にしようとの考えから、航空自衛隊で屈指のマンガが得意の山本茂雄1佐にお願いしてイラストを描いていただいた。

    当時、マンガは時代の流行として定着しており、班員が知恵を絞って編集したものである。今まで通達の趣旨、内容をダイジェスト版として、これほどイラストを取り入れたものはなかったので画期的なことであった。   

 初任空曹長集合教育での配布はもとより、全国の編制単位部隊以下まで配布し、隊員が身近に手にすることができるように努めた。この種のもので、これほど多くの隊員に読まれたものはなかったと自負している。     

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 《  昭和62年改正の准空尉、空曹及び空士自衛官経歴管理基準・ ダイジェスト版の表紙、このイラストは実によく経歴管理のねらいを表しており、あらゆる場所での説明・講話で使わせてもらった。》

 

2.昭和62年改正の准空尉、空曹及び空士自衛官経歴管理基準・ ダイジェスト版(5)・昇任管理  

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  3.30年後の所感

❶  昇任管理について

 隊員の最大の関心は、当然のことながら昇任と異動であった。自衛官の昇任数は、定員数・定年等の減耗、予算などいろいろ複雑な要素から年度の昇任枠が決まってくるが、昇任選考の評価要素など昇任管理の方針はいつの時代もそう大きな方向転換や変動はないであろう。

 隊員の昇任数が年度によってあまり変動がないよう安定した方策がとられていた。

   准空尉、空曹及び空士経歴管理基準においては昇任管理の方針が明示されている。経歴管理基準の中で異動に関する項目内容と比べて見ると昇任管理の項目の字数が少ない。

    昇任に関しては、自衛隊法以下訓令や経歴管理基準などを受けて任命権者において昇任選考に関する基準・要領が定められていた。通常、准空尉及び空曹の昇任選考の評価要素は点数化する方式が行われていた。

    これらは、慎重な人事取扱上の事項とされている。したがって、経歴管理に関する説明や講話においては、どこまで触れるかという機微な事柄であったが、基準で明示された内容を分かりやすく話をして理解してもらったことを覚えている。

 資料の提供について

 各部隊の人事担当者には、指揮官を適切に補佐できるように、中央部で作成している所定の資料の関係分を積極的に配布することに努めた。各級司令部の人事幕僚を経験してみて、上級の司令部にあるのに、第一線部隊の指揮官を人事担当者として補佐する立場から知りたい資料などが入手できなくて苦労したことがあった。

 経歴管理基準の運用にあたっては、さらに突っ込んだ人事統計資料などが必要となってくる。現場で最も必要としているものは何かを十分経験してきたので、班長在任間、全国の人事担当者に対して、准空尉、空曹及び空士に関わる昇任、異動などの資料を積極的に提供したことが強く記憶に残っている。そこには「公正で開かれた人事」を推進したい思いがあった。