昭和の航空自衛隊の思い出(380 ) 先任空曹と准曹士先任制度

1.先任空曹と准曹士先任制度

    航空自衛隊の准曹士先任の人事発令や新任の挨拶を航空自衛隊、各基地のホームページなとで拝見するたびに、昭和の時代にこの制度を確立したいと模索した当時のことが思い出される。 

    昭和の時代、空幕人事第2班長当時、准空尉・空曹及び空士経歴管理基準の改正時に、創設時から職位組織図だけに明示されていた「先任空曹」を個別命令で発令することを提案し取り入れてもらったことがあった。

   これらは「先任空曹」を名実共に職位と職務の明確化によって、最先任空曹制度に一歩でも近づけたい思いがあったからであった。

     その根底には、 航空自衛隊の創設時代において、各級指揮官は先任空曹を通じて曹士隊員の服務指導などを行っていた。制度的に確立されたものではなかったが、「先任空曹」という名称がある如く、曹士隊員の服務指導や技術指導は、先任空曹や上級空曹の役割・担当であった。 

 航空自衛隊の組織の骨格ができ充実発展する過程で、「服務指導」が強調され、その役割は一層増したが、幹部の指導熱心さから、いつの間にやら先任空曹のやっていた分分野・仕事を幹部がやったりするのが散見されるようになった。

 言うなれば、各級指揮官が曹士隊員の指導を先任空曹を通じて実施すればよいのに、直接あるいは幹部に行わせたりして、ややもすると先任空曹や上級空曹の役割や領分を幹部がぶんどったり、活用が不足する傾向が見られるようになった。

 その要因として、「先任空曹」の役割や位置づけが明文化されていなかったことなどが挙げられた。特定監察等においても服務指導体制など指摘されたが、「先任空曹」制度の規定は不十分であったように思えた。

2 米国軍隊の最先任上級曹長制度についての所感

 空幕人事第2班長として、准空尉・空曹及び空士に関する人事施策・人事管理を担当し、米国軍隊における最上級下士官学校や最先任上級曹長制度の運用、処遇状況を垣間見て、国情は異なっても、航空自衛隊における先任空曹の本来のあるべき姿がここにあると思ったものである。

    最先任上級曹長が、第5空軍司令 官・在日米軍司令官(空軍中将)の補佐官として主要幕僚の部長(大佐)と同じ処遇を受けている状況から、航空自衛隊の創設以来の空曹の資質・能力の発揮と実績を見たら米国の軍隊以上になれるとの確信があった。

3.当時イメ-ジしていた先任空曹制度

 昭和30年(1955)6月、創設期の航空自衛隊に第1期操縦学生として入隊するも、飛行適性面から転進し、一般の空士・空曹を経験し、部隊勤務において、識見・技能と指揮統率に優れた輝く大先任空曹に接してきたことから将来の航空自衛隊はこうあるべきではなかろうかと若年の空曹であったころから確信したものであった。

 その後、部内幹候、要撃管制幹部を経て、人事幹部に転進し、指揮幕僚課程を卒業して各級司令部の人事幕僚を経験した結果、若いころに目標とした先任空曹像はいささかも変わることなく同じものであった。当時の先任空曹制度のイメ-ジは、現在、航空自衛隊が採用している准曹士先任制度にほぼ近いものであった。

 現行の運用については承知していないが、当時の私のイメ-ジとしては、軍事組織における指揮官の立場・指揮権・指揮系統・階級・責任と権限・命令と服従の特質を踏まえながら、旧来の枠組を超えて大胆に、各級指揮官の補佐と曹士隊員の服務指導、技術指導、意見具申にとどまらず、各級指揮官が行う精勤章等や昇任選考・異動管理などの上申にあたって先任空曹の意見がかなり考慮されるものを想定していた。先任空曹の職務遂行にあたって、相応の能力発揮できる裏付けをすることが制度の有効性を高めることになるからであった。  

陸自「上級曹長制度」、空自で准曹士先任制度  

   防衛情報紙  防衛ホ-ム  2006年4月15日号 出典抜粋

❶ 陸自「上級曹長制度」を試行 

「准曹集団の活性化図る」

 陸上自衛隊では、18年度から「上級曹長制度」が実験的に試行(制度検証)されることになった。
 最先任上級曹長とは、陸上自衛隊における各級部隊の准曹の最上位者、かつ指揮官の幕僚であり、上級陸曹が曹士の育成・管理の業務に対してより積極的に取り組み、また、指揮官をより効果的に補佐し得る体制を作るにあたっての中核となる存在である。
 最先任上級曹長は、各級司令部・本部などに配置され、それぞれのレベルの部隊の准曹の最上位者として、幹部である人事、訓練、兵站幕僚等と同様に指揮官を直接補佐することになる。
 この制度の背景の一つとして、今後より一層の活躍が期待される災害派遣、国際平和協力活動等において、小部隊のリーダーである陸曹がより重要な役割を担うことになったことや、任務の多様化により指揮官の判断事項が増加したことがあげられる。

 これと同様のものが、海上自衛隊では「先任伍長制度」として既に実行され、航空自衛隊では「准曹士先任制度」として18年度から部隊で試行されている。また、米国陸軍においてもベトナム戦争以降、本格的に導入された。
 制度検証は、実員による検証でしか得られない制度上の効果・問題点を把握するとともに、これまで机上で検討してきた制度内容の適否を評価することを目的としており、陸上幕僚監部のほか、様々な地域・部隊の特性をもった中部方面隊で、2年を目途に実施される。
 最先任上級曹長の活躍により、准曹集団の活性化が図られるほか、幹部の幕僚とは異なる視点で曹士の育成・管理の業務に取り組み、従来以上の効果を上げることが期待される。
 陸自では制度検証のあと、更に全方面隊での試行を経て制度化を目指すとしている。

❷  空自で准曹士先任制度始まる 

 航空自衛隊は3月27日、准曹士先任制度(仮称)の試行を開始し、着任式を行った。
 この制度は、服務指導態勢の充実、組織の活性化及び陸海自衛隊、米国などとの交流の活発化をねらいとしたもので、平成20年度までの2年間に、試行しながら准曹士先任の職務内容などについて検証を行い、制度の判定や設計への反映に係る判断の資を得るとしている。
 初代准曹士先任に選出された鹿股龍一(かのまた・りゅういち)准空尉(51)は福島県出身で、特技は警戒管制員。准曹士先任制度に対する問題意識が高く、また、入間基地勤務の経験から米国との交流や人脈もあることなどが選出の決め手となった。
 着任式では、吉田空幕長に申告を行った後、准曹士先任識別章を授与され、「航空自衛隊の准曹士先任の頂点に立ち、部隊の課題を吸い上げて、空幕長の目、耳、口となり、サポートしてほしい」との訓示を受けた。
 鹿股准尉は、服務指導の面で空幕長をしっかり補佐すること、末端の部隊の准曹士の意見や考えが自分の耳に届くよう各准曹士先任との連携を密にし、組織の活性化を図りたいなど抱負を語った。

5.准曹士先任制度への期待

 現行の准曹士先任制度については、各種資料等で公開されているので省略する。准曹士先任識別章の制式及び着用要領は航空自衛隊服装細則に規定されており、よく見かけるようになった。自衛隊が国民から負託された使命・任務を遂行するためには、精強な部隊づくのがあって達成できる。准尉及び上級の曹たる自衛官の能力発揮と活用が不可欠である。

 旧軍においても、日本の下士官は世界一だと評価されていた。現在の自衛隊もしかりである。曹たる自衛官のあらゆる面での最大能力発揮と活用ができる指揮官こそ有能な指揮官と言えるのではなかろうか。

2014-11-01 昭和の航空自衛隊の思い出(46)  目指す理想の先任空曹に出会う