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昭和の航空自衛隊の思い出(379) 空曹海外短期留学と准曹士先任制度の基盤づくり

1.空曹海外短期留学と先任制度の基盤づくり 

 昭和61年(1986)12月、空幕人事課人事第2班長に補職され、63年(1988)6月末まで務めた。空幕人事課人事第2班は、班長以下8名の陣容で、航空自衛隊全般の准空尉・空曹及び空士約3万7千名の人事に関わる施策、充員・異動・昇任・昇給等の業務を担当した。

    班長在任間、昭和62年度模範空曹等の航空幕僚長招待行事と同様に、昭和62年10月に実施した昭和62年度 空曹海外短期留学とその後の人事処遇、更には将来の先任制度の資料収集、研究調査など基盤づくりに着手した時期であった。

   空曹海外短期留学については、主管班長として計画、実施に当たったが、担当班員の石田敏晴3佐が実に精力的にこの事業に取り組んでくれたことが今日に至るも忘れられない。

   上級空曹に関わる役割の拡大と活用事項は、人事幹部へ転進した時の胸に秘めた四つの命題と直結した事柄であり、真剣に取り組んだ。

 当時、先任空曹・上級空曹の職務と責任、地位の向上策は大きな課題であったが、足元の准空尉・空曹及び空士の経歴管理基準の改正による異動等人事管理の改善充実、模範空曹等の航空幕僚長招待行事、空曹海外短期留学などを着実に充実発展していくことが将来の准曹士先任制度の基盤づくりにつながっていった。

 

2. 空曹海外短期留学の概要

⑴ 経緯

  空曹海外短期留学は、昭和51年度(1976)から実施した事業、60年(1985)までは、指揮官たる幹部自衛官(3佐)と、空曹3名(2曹)が海外短期留学を実施してきた。61年度(1986)、10回目から、より多くの空曹を留学させるため、空曹長が指揮官となり、空曹4名を海外短期留学させることとなった。

⑵ 海外研修概要

❶ 目的 

 空曹に対し、米国空軍部隊及び社会事情並びに高射群の年次射撃訓練等を実際に見聞させ、空曹の地位、役割の重要性を認識させるとともに、服務意欲の向上を図る。

❷ 研修先 アメリカ合衆国中、西部の空軍基地等

❸ 期間 毎年 10月下旬ごろ(約12日間)

❹ 参加人員  4名

❺ 研修日程等

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❻  要員の選定

 全国の部隊・機関から適任の優秀者を選抜し候補者として上申させて選定した。

指揮官となる空曹長は、空曹長講習修了者で成績優秀者、日常の会話ができる(空自英語検定2級以上)、人物・識見ともに優れ、指揮官としての能力が高いものが選定された。

    研修要員は、若手の2曹で初任空曹課程、術科教育課程で成績の優良者、海外出張経験がなくて、ある程度聞き取りができるものを選定した。61年度から留学後は特別な場合を除き航空教育隊の教育班長を2~3年勤務させることにした。 

   当時のメモによると、60〜62年度における留学研修者は次のとありであった。

60年度 7空団2曹中井耕三(計器整備)・総司飛2曹星安人(計器整備)・西警団2曹佐藤昌男(警戒管制レ-ダ-整備)

61年度    管気団曹長松山昌二(航空管制)・北警団2曹田中彰(警戒管制)・南警隊2曹土赤和敏(警戒管制)・11教団2曹石黒勝利(教育)

62年度   管気団曹長岸孝雄(航空管制)・6空団2曹本田久範(人事)・5空団2曹高見靖彦(飛行管理)・2術校2曹嵯峨憲水(ナイキ管制)

  62年度指揮官の岸孝雄曹長は、その後幹部となって活躍された。また、本田久範2曹は、准空尉となって、創設期の第3代航空自衛隊曹士先任に任命され航空幕僚長を補佐することとなった。

    准曹士先任制度については、別項で触れることにしている。

 

3.  空曹海外短期留学から学んだもの

 本事業の成果として、選ばれた研修者は大きく羽ばたいたが、特に注目したことは次のことであった。

   当時、米国陸軍上級下士官学校の概要と上級曹長の位置づけを次のようにメモしていた。とりわけ、過去の空曹海外短期留学の指揮官及び研修空曹の所見を克明に確認し、主務班長として、将来の航空自衛隊の発展に資するには、空曹海外短期留学の成果をどのように諸施策に反映・発展させていったらよいかとの視点で調査研究・検討を継続した。 

米国陸軍上級下士官学校の概要と上級曹長の位置づけ

・1972 創設、下士官教育体系の最上位に位置する教育を担当

・上級曹長課程(6ケ月)1973年1月開始、1コ-ス260名 年間2コ-ス 合計約500名

 選抜基準 曹長以上、在隊年数など省略

 入校者の選抜は陸軍省、全陸軍上級下士官の4%が入校(平均入校者 平均年齢38歳   

 在隊年数18年、単科大学以上の卒業者83%以上)

曹長課程(8週間)

下士官として必要な指揮管理、教育訓練、軍事学等について、入校学生それぞれ   

 の階層に応じて教育

・学校の運営及び教育の実施は、すべて下士官が実施している。 

 

4.先任空曹の役割・職務等の拡大と改善向上策

 私が最も感銘を受けたのは、米国陸軍上級下士官学校において、米軍の上級下士官に対する教育はもとより、学校運営そのものを上級下士官で行っていることであった。建国以来の長い歴史の中で国軍が培った最先任上級曹長の位置づけと役割であった。

 こうしたことから昭和62年度指揮官の岸孝雄曹長には、留学後も横田空軍基地へ派遣し第5空軍司令部における司令官と最先任上級曹長との関係など勤務室・日常勤務・パ-テイなどに密着して体験してもらった。さらには司令官の三沢視察に随行する最先任上級曹長に同行した結果、先任上級曹長制度の運用の実態は想像以上に有効に機能していることに驚嘆したものであった。

 一方、各国に派遣されている航空の防衛駐在武官を通じて、当該国の空軍等における上級下士官の役割・職務等の位置づけのレポ-トをお願いした。これらを含めて各国軍隊における資料整理してみて将来方向が見えてきた。

 昭和30年(1955)、創設期の航空自衛隊に入隊以来、空士・空曹を経験し、識見・技能と指揮統率に優れた輝く大先任空曹に接してきたことから将来の航空自衛隊はこうあるべきではなかろうかと若年の空曹であったころから思ったことが間違いないことを確信したものであった。

 部内幹候、要撃管制幹部を経て、人事幹部に転進した当時、胸に秘めた四つの命題は何十年たっても、常に古くて新しい課題であった。また、第一線部隊で勤務した折、試行した内務班長を中心とした自主的な内務班運営と基地納涼大会の企画運営、先任空曹を中核とた隊員指導などからも、航空自衛隊の空曹の資質能力から問題なく進めることができることを確信したものであった。

 今日、航空自衛隊は准曹士先任制度が運用されている状況に触れるとき、模範空曹の空幕長招待行事、空曹海外短期留学などと合わせて感慨深いものがある。