昭和の航空自衛隊の思い出(367)   人事担当者の実務能力の向上と各級指揮官の補佐

1.人事関係通達類の整備と適正な人事業務処理

 空幕人事課において、各部隊の人事担当者の人事業務処理能力の向上について、指導しやすい立場にあるのは人事第2班であった。

 全部隊の人事担当者の識能の向上、人事業務の適正な処理に資するとともに、第3術科学校における人事総務教育において部隊の実務に直結した教育の推進の面から、航空自衛隊における人事関係通達類を一冊にまとめて、常に最新の内容に維持する事業を推進した。

   人事幹部・上級人事員・中級人事員及び初級人事員課程に対する術科教育に必要な最新の人事関係通達類の所要部数の整備と活用にも努めた。又、空幕から発出する人事通達及び人事デ-タ資料は人事教育の現場に同じものを配付することにより人事教官の識能の向上に資するとともに実務に直結した人事教育ができるよう配慮した。

 この事業の推進にあたっては、人事第2班員石田敏晴3佐が俊腕を発揮し、人事関係通達類集の整備と必要経費の確保、教材整備隊へ造修発注と部隊配付などが整斉と進められ、現場部隊から喜ばれた。

 

2.各級指揮官を積極的に補佐できる支援

    各級指揮官にとって、最も知りたいことは、部隊指揮統率と最も関係のある昇任・異動など人事に関するデ-タ資料である。当該部隊の人事幕僚が指揮官を補佐する上で必要なものは、全体の中における自分の部隊及び隊員に関わる人事面の状況であろう。

 こうした点から、航空自衛隊の全部隊・機関において、人事幕僚が指揮官を補佐する上で最も重要なことは、指揮官の最も知りたい人事デ-タ資料を適時適切に報告・提示できるかにかかっている。

 したがって、人事第2班長在任間、特に重視して実行したことの一つに、准空尉・空曹及び空士の人事に関する資料を積極的に部隊に提供し隊員の理解と任務遂行意欲の向上に資することであった。

 こうしたことを実行しうる立場にあったのが、空幕人事第2班長の職位であった。空幕には豊富なデ-タと資料があり、部隊の状況に合わせて、人事部長会議、人事班長講習、充員計画業務講習のほか適宜、全国の部隊・機関人事担当者あてに諸資料を配布することに努めた。

     部隊の立場で真に有効に役立つ、常に使われる人事データ資料の作成・提供であった。

3 人事担当者が指揮官の全幅の信頼を得る要諦

 部隊の人事担当者が、空自全般デ-タ資料と自己の部隊デ-タ資料と合わせて活用し、部隊指揮官を積極的に補佐し、部隊及び隊員の適正な人事管理に資することであった。指揮官が指揮統率に当たって最も知りたい事項に的確に答えられるがどうかは、平素からのデ-タ資料の整理である。これこそ幕僚の腕の見せ所であり、指揮官の信頼を得る要諦である。

 デ-タ資料配付により、全国の部隊・機関の人事担当者の識能の向上、人事業務処理能力の向上を図るとともに有効な活用により指揮官の信頼を得るとことができると確信したからであった。

 人事幹部になりたての頃からの長年の願望であった分析検討したデ-タ資料を配付できる立場にあることに感謝した。空幕第2班長というポストがそのことを可能にしたからであった。

 人事担当者が机の中にしまって、単なる業務参考資料としてしまうか、配付されたデ-タ資料を基に更に自分の部隊デ-タと組み合わせて、味付けして指揮官に適時提示できるかどうかによって、人事担当者に対する指揮官の信頼度、人事担当者の能力・活躍の場が大きく変わってくるからであった。

    航空自衛隊全般の人事部門のクテータスアップと人事担当者のレベルアップに少しでも寄与できればと考えたからであった。

    このことは連鎖して、人事担当者の上下左右の連けいが緊密になり、人事部門の質の向上と指揮官の評価・信頼につながっていった。

     部隊訪問に際して、基地所在部隊人事担当者との懇親会等での挨拶では必ずと言っていいほど、指揮官から絶大な信頼を得る人事部門のあり方、作戦運用と一体となった人的戦力の人事管理と運用を強調したものであった。

   これは、青年幹部時代に要撃管制官として作戦運用に従事し、作戦運用と一体化した人事運用、第一線部隊及び各級司令部の人事幕僚と実務経験をした私の持ち味であった。この持ち味を生かせる職位・場が与えられたことに感謝し、思い切り職務を遂行することができた。

     部内幹部出身者・航空学生出身者が空幕班長・1佐職に補職されたことに対して、将来の後輩のためにも、極めて重要な人事配置であった。これこそが本当の人事であり、時の人事課長はじめ人事教育部長、空幕長の英断に深謝し、その期待に応えるよう努力した。