元自衛官の時想(5) 行方不明の子ども捜索対処と発見保護

    5月28日に北海道七飯町東大沼の山林で行方不明となった子供が見つかったニュ-スにはびっくりした。小学2年の田野岡大和君(7)が6日ぶりに無事に保護されたということで日本の全国民が安堵と歓喜につつまれたと言って過言ではないであろう。

 発見は6月3日朝、陸自函館駐屯地(函館市)所属の掛川勇一陸曹長(52)ほかの隊員2人と共に、ミーティングを開くため自衛隊の演習場(北海道鹿部町)の宿泊施設を訪れた。ドアを開けると、目の前に驚いた表情の男児が立っており、「大和君かい」と呼び掛ると大きくうなずいた。「やつれたように見えたが、しっかり立っていた」という。

 おにぎりとお茶を差し出すと、田野岡君は立ったまま急いで食べた。「座ってゆっくり食べたら」と話し掛けると、段差の上に腰掛けて食べ続けたという。
 「泣きもせずに受け答えし、意志が強そうな子。無事に発見できてよかった」と安堵(あんど)の表情を浮かべたと掛川勇一陸曹長の記者会見の様子を報じた。

 新聞テレビ報道で一週間に及ぶ捜索活動、1日2日には陸上自衛隊も捜索に参加しても発見できず、捜索隊の縮小の矢先であり、大きな反響とともに様々な教訓を残したように思う。

しかも、陸上自衛隊駒ケ岳演習場は捜索範囲外であったと報ぜられている。

 これから細部状況が判明するであろうが、この種の捜索活動のあり方について、最高指揮官と指揮系統、指揮所、指揮管理と通信、捜索人員、捜索範囲及び捜索要領などについて貴重な教訓を残したように思われる。誰の責任といった小さな事柄ではなくて、問題点と改善事項を徹底的に詰めて、今後の大きな改善施策にしてもらいたい。

 古来、作戦・戦闘では、作戦中に観戦武官はもとより戦訓収集班が随伴し将来の戦訓を収集し次の作戦に備えるものである。海外へ派遣される自衛隊の部隊も同じである。

物事のすべてに当てはまることで、平戦時、官民を問わない。

 災害派遣も同じである。警察・消防の任務遂行も同じである。災害などの市町村の行政の指揮管理も同じである。会社の危機管理の指揮管理も同じである。

 今回の捜索指揮活動も同じである。何が足りなかったのか、どこに盲点があったのか、それぞれの立場で調査分析検討すれば、問題点などが明確に浮き彫りになるものである。問題点が明確になれば自ずと対処策は出てくるものだ。あら探しの立場からは良いものは生まれない。よりより方策、施策、行動をさぐるためのものである。今後のこの種の事案に有効適切な対処ができるであろう。

 あらゆる事案に対して想定外はないのである。あらゆることを想定し対処するのが常道である。

男児が保護された陸上自衛隊駒ケ岳演習場の建物(後方)前で、発見時の様子を語る陸自函館駐屯地の掛川勇一陸曹長(中央)=3日午後、北海道鹿部町(時事通信)

《 時事通信出典 》