昭和の航空自衛隊の思い出(257) 上級空曹と要務特修課程

1.  要務特修課程

 ❶  要務特修課程の概要

  要務特修課程は、主として補給・調達・人事・総務・会計・厚生・給養・施設・輸送・車両整備・消防・警備等の職域において、初級幹部の補佐者として、その職務を遂行するに必要な知識及び技能を習得させるために設けられた課程で当該職域における1等空曹としての資質を養うことにあった。

 特に、1曹としての任務の重要性を認識させ、任務遂行に必要な精神要素の涵養、服務指導能力の向上と小隊程度の指揮能力を重視していた。この課程は、昭和55年11月曹長制度の新設に伴い後年、曹長が対象となった。

 この階層は、部隊等においては先任空曹として、職域のベテラン中のベテランであり、海千山千の武者ぞろいで、無くてはならぬ存在であった。

 従って、課程主任は科長に次ぐ先任幹部の野中宏之3佐を配置していた。野中3佐は人事分野の第一人者で部隊経験が豊富で俊腕を発揮して強者ぞろいの学生を心服させて、充実した教育を進めることができた。私の転出後は第4科長に昇格し、科を率いることとなった。

❷ 「上司の望む先任空曹五章」

 この課程では、正規の教育課目のほかに時間を見つけては、「上司の望む先任空曹五章」なるものを毎回15分間程度のスピ―チをし先任空曹のあり方を問いかけた。小話に対する反応は早く、課程修了後、多くの卒業生から便りをいただいたり、部隊訪問の折声をかけてくれた。

 「上司の望む先任空曹五章」の根底となったものは、昭和の32年4月、第1期操縦学生として大空への飛躍を志すも適性面から操縦コースを外れ、第1術科学校総務課に勤務し、空士・空曹時代の数年を福田正雄先任空曹のもとで鍛えられた。先任空曹としての活躍は見事で、その働きぶりに「これぞ自分の目指す上級空曹だ」とあこがれ、目標としてきたものであった。

 昭和30年代の創設期の学校総務課において、福田正雄先任空曹は、実質的には今日の自衛隊で言う陸自最先任上級曹長・海自先任伍長・ 空自准曹士先任と同じような位置づけであり、学校首脳部、わけても時の大物の総務課長石原格太郎2佐・鶴田千秋2佐・岩月良行2佐の度量をもって、福田正雄先任空曹に空曹・空士を束ねさせた方策とともに、存分に俊腕を発揮する福田先任の在り様を見て、航空自衛隊の精強化のためには「上級空曹はかくあるべし」との信念を持っに至った。

 幹部任官後、要撃管制幹部、次いで人事幹部に転進後においても、各部隊で同様の先任空曹に接しその信念は一層強くなり、部隊において「上級空曹をいかに位置づけ活躍の場を与えるか」を終生の命題とするようになった。

 当時、こうした思いを胸に秘めていたので、要務特修課程の学生に対しては、特別なる思いを託して話をし問いかけた。「人事業務実践アドバイス」と同じように、いつどこでも話せるように話の構想をまとめ準備しておいた。

 後年、空幕人事課人事第2班長として、航空自衛隊の准尉・空曹・空士の人事を担当する役割を与えられた。准尉、空曹及び空士の新経歴管理基準の制定に参画し、先任空曹制度の施策化と運用に関わるとともに積極的にあらゆる場所で先任空曹クラスに、「上司の望む先任空曹五章」を問いかけたことは申すまでもない。

2014.11.1昭和の航空自衛隊の思い出(46)  目指す理想の先任空曹に出会う

 

(  次回から、「上司の望む先任空曹五章」を紹介する。)

 

第11期要務特修課程 

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 《  第11期要務特修課程  s56.11.4~56.12.18・20名、前列左から教官波多腰(永井)正 2尉・教官中山博2尉・課程主任野中宏之3佐・第4科長濵田喜己2佐・第1教育部長野中壽1佐・副校長桐山敏生1佐・第2教育部長・学生隊長等、後列は学生、学生長皆川勝・岡留博美・濱部司・石田秀男・黒川勲・菅原眞・横山次男・江口敏行・森田智章・田村重敏・原田増之助・奥野幸広・宇野保・佐々木精一・秋本吉之・小原英昭・阿部正志・鈴木久芳‣田松政之‣坊ノ下時男の各氏で全国各地の先任空曹クラスが集まった。 》

 

 第12期要務特修課程 

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《 第12期要務特修課程  s57.1.27~57.3.12・15名、前列左から教官波多腰(永井)正 2尉・教官中山博2尉・課程主任野中宏之3佐・第4科長濵田喜己2佐・第1教育部長野中壽1佐・副校長桐山敏生1佐・第2教育部長・学生隊長等、後列は学生、学生長柿本均‣梅北重孝・山口秋吉・吉川一次・岩崎悟・佐藤一雄・進正憲・須見利光・今野才治・細川三郎・西屋和哉・林彰・川久保広之・松落忠男・菅谷成三の各氏で全国各地の先任空曹クラスが集まった。 》

 

第13期要務特修課程 

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《 第13期要務特修課程s57.5.12~57.6.22・19名、前列左から学生隊区隊長・教官後藤悟准尉・課程主任野中宏之3佐・副校長桐山敏生1佐・第2教育部長・学生隊長等、後列は学生、宮原雅登・永浜喜久雄・宮尾末・高浜繁嘉・宮崎忠司‣城島満教‣伊東道廣・土生勇雄・川滝博‣笠井昇・白鳥清雄・渡邊力・津田忠雄・正尾薫・岡金作・宮崎彦二・有田宏‣板野克彦・松田満俊の各氏で全国各地の先任空曹クラスが集まった。   》 

 

 

第14期要務特修課程

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《 第14期要務特修課程s57.10.27~57.12.10・17名、前列左から教官長岡勝義2尉・課程主任野中宏之3佐・第4科長濵田喜己2佐・第1教育部長濱島誠1佐・副校長桐山敏生1佐・第2教育部長・学生隊長等、後列は学生・学生長竹本奎介・足立一之・三山通有・高木啓介・谷治輝・山口修平・濱田春義・河野康信・清野企久夫・山城捷・佐藤軍吾・吉良理安・玉山昇・小泉秀昭・ 藤本冨二正・神野裕吉の各氏 で全国各地の先任空曹クラスが集まった。  》

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第15期要務特修課程

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《 第15期要務特修課程s58.1.26~58.3.11・17名、前列左から学生隊・課程主任野中宏之3佐・第4科長濵田喜己2佐・第1教育部長濱島誠1佐・副校長山口博1佐・第2教育部長・学生隊長等、後列は学生、学生長宮田邦昭・二本柳昭一・黒木義宣・笹田清・近藤哲・村田雅俊‣小田桐俊雄・山本昌男・下村国男・吉田万亀夫・上村道徳・三上嘉一・徳富正人・石川文男‣鬼頭洋一・村上義和‣山野豊彦の各氏で全国各地の先任空曹クラスが集まった。》

 

2.  上級空曹特別講習

    上級空曹の役割の拡大と識能の向上は精強な部隊等の運営に資するものであった。学学校長福岡靖也将補から特命を受け、昭和57年10月、第1回上級空曹特別講習を担当実施した。初めての試みであり、第1教育部長浜島誠1佐の指導の元、第4科の総力を挙げて教育内容の研究策定と講習実施にこぎつけた。

 研究と講習実施で多くの教訓、改善向上策につなげることができた。同年11月には第4科が学校長から第4級賞状を授与された。

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