昭和の航空自衛隊の思い出(225) 鏑木健夫空将と鏑木監察

 1. 鏑木健夫空将

    航空自衛隊の創設期に席を置いたもので、鏑木健夫空将、新郷英城空将の名前を知らないものはいないであろう。私の手元にも新郷・鏑木両空将将軍追想録刊行会が昭和61年12月に発行した「空将新郷英城追想録」と「鏑木健夫将軍追想録」(非売品)がある。

 新郷英城空将については、第1期操縦学生でパイロットとして戦闘航空団に勤務した者は豪傑将官の謦咳に接したが、私は残念ながら直接ご指導を受けたことがなかった。

 鏑木健夫空将については、「鏑木健夫将軍追想録」の刊行の辞で「故鏑木健夫空将は、前大戦中、陸軍の戦闘機隊長として圧倒的に強大な米支合同の空軍と中南支の航空戦場で勇戦敢闘し、戦後は航空自衛隊創設以降多くの要職に就き、豪放磊落、難局に処しても自若たる統率ぶりを発揮してその発展に多大の貢献をされました。」と認められている。

 昭和41年5月、私が入間基地で中警団司令の副官をした時、鏑木将補は上級司令部である中空幕僚長(将補)をしておられ、職務柄しばしば中空副官室に出入りしていた関係からご指導いただいていた。

 双方の副官室が鏑木幕僚長を囲んで一緒に花見を楽しんだこともあった。日ごろの勤務に対する慰労をしていただいたように記憶している。豪傑のようで大胆にして、且つ下々のことに細心の配慮をされていることを体感しており、尊敬する将官であられた。

  

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《「鏑木健夫将軍追想録」から 》

 

2.鏑木監察

 航空自衛隊は、昭和48年2月、岐阜基地で起きた燃料漏れ事故を始め、最近の飛行事故の原因に、過去の技術偏重主義から幹部の指揮統率力、隊員の士気にやや欠ける面があるのではないかとして、安全対策にとどまらず、指揮統率の基本を究明するという従来とは異なった角度で、昭和48年5月7日から1か月間,航空総隊司令官鏑木健夫空将を団長とする「特命監察」を行った。世にいう「鏑木監察」であった。

    今日、航空自衛隊創立60周年が過ぎ、新時代へ向かって進んでいる精強な航空自衛隊を見るとき、創立間もないころから勤務してきた者としては、こうした先達の「鏑木監察」に基づく改善などの基盤づくりが営々として行われた結果であることに注目するものである。

 「鏑木監察報告書」にある指摘事項は部隊運営上の反省・教訓・示唆がいっぱいである。いつの時代でも、原点にかえって組織を総点検することを怠ってはならないであろう。

 

❶ 鏑木監察報告書

 特命監察の報告書は、昭和48年年8月1日に発表された。当時、私は、同年7月14日に1年間の指揮幕僚課程を卒業し、西部航空方面隊司令部に着任したばかりであった。報告書の内容は、創隊20周年を迎える航空自衛隊に対する厳しい指摘であり、指揮統率、各種教育、服務等に対する体質改善と積極的な施策が求められた。

 人事幕僚の 一人として、どのように対処したらよいか、報告書の内容を自分なりに掘り下げ、幹部学校記事に取り上げられた「鏑木語録」を自分の反省の資としたものであった。

 一方、初級幹部時代から実践してきた現場における青年隊員に対する指導、内務班との関わり、自主積極的な隊務への参加や人事幹部に転進した時に課した命題など進むべき方向性に間違いはなかったと自信を強くしたものであった。

 こうした背景のもとで第6航空団における服務指導研究会、内務班長を中心とた内務班運営、営内衛隊員による納涼祭の運営などはその一環であった。

 また、人事担当はややもすると幕僚組織の一幕僚としての勤務が多くなることから、指揮官に対しは幕僚であるが、少数精鋭なりといえども班・部においては指揮官という強烈な意識と立場を保持した。管理者というより指揮官という立場・考え方で万事に対処したものである。

 

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 《「鏑木健夫将軍追想録」から 》

 

❷  特命総合監察における鏑木語録

     かって取り上げた島田航一元総隊司令官の幕僚準則 に始まり、鏑木監察における鏑木語録は、内容が具体的で分かり易く日常の勤務において実践する大きな目標となった。 在隊間、事あるたびに読み返し、自らの日常のありように照らし反省と向上の資とした。いつの時代にも通じる示唆に富んだ鏑木語録である。

 

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《「鏑木健夫将軍追想録」から 》