昭和の航空自衛隊の思い出(223) 航空総隊司令部勤務の総括

 航空総隊司令部勤務は、昭和52年8月1日から54年7月31日までの2年間であった。この間、54年7月2佐へ昇任した。同年8月1日付で飛行教育集団司令部(人事第1班長・自衛官人事担当)へ転任を命ぜられた。 

 

1. 島田航一元総隊司令官の幕僚準則を執務の参考

 航空総隊司令部勤務に当たっては、 昭和の航空自衛隊の思い出(165 )  「島田航一元総隊司令官の幕僚準則」に記述した如く、昭和52年8月、作戦の最高司令部である航空総隊司令部に人事幕僚として勤務するにあたり、改めてこの幕僚準則を読み返し、「指揮要綱」「指揮幕僚」教範とともに執務の参考とした。

幕僚十則

1.当司令部の作戦的体質を健全にせよ

2.部隊の実情を把握せよ

3.タイミング

4.令達の権威を維持せよ

5.部隊レベルの責任と権限を明らかにせよ

6.幕僚政治

7.チェックリスト化とフォロ-アップに努めよ

8.幕僚は事務員となるな

9.要務

10.欠

 実際に2年間勤務して、島田航一元総隊司令官の幕僚準則に示されたその本意を身をもって体験し理解することができた。まさしく指揮官及び幕僚勤務に関し時代を越えてうなずける説得力のあるものであった。

 特に、「当司令部の作戦的体質を健全にせよ」、「幕僚は事務員となるな」は、言葉を変えて人事幕僚としての指針とした。

 

2.航空総隊司令部勤務の総括

 ❶ 作戦最高司令部における幕僚勤務を経験したこと

幹部自衛官として、編制単位部隊・群・団・方面隊を経て、航空総隊と作戦部の最高司令部の勤務を経験したことは指揮官・幕僚として識能の練成と向上に最高であった。

 初級幹部時代に要撃管制官として、防空の第一線部隊で24時間体制の勤務を経験し、実動部隊はいかにあるべきか、指揮官及び幕僚はいかにあるべきかをそれぞれの部隊・職務で追求し、指揮幕僚課程でも一年間学んできただけに、作戦最高司令部において人事幕僚として、警備・防衛関連の人事諸計画の立案に参画できたことは誇りとなった。 

 とりわけ、有事における人事幕僚として司令部活動への参加、主担当として准尉・空曹・空士充員計画の作成などは貴重な経験であり、事後の勤務に自信を持って臨むことができた。 

❷ 部隊指揮運用と一体となった人事業務を推進せよ

 一般的には、防衛白書等でも、人に関しては、「人的基盤」「人的防衛力」「兵力」という言葉が使われている。行政的な表現はともかく、部隊指揮運用からは「人的戦力」という作戦的なとらえ方ががすっきりする。

  人事は部隊指揮及び統率の基盤をなすものである。平時における人事部門は、行政的・事務的手続き等が多くややもすれば事務処理に追われることがある。人事関係法規に基づく公正・的確な業務処理は当然であるが、部隊指揮運用からは「人的戦力」としてとらえ施策する必要があった。

 航空総隊司令部における諸活動の中で、人事幕僚は常に部隊指揮運用と一体となった作戦的な感覚を持った人事管理と人事業務の推進が求められていることを実感した。

 従って、その後の勤務においては、「部隊指揮運用と一体となった人事運用」、「人事幕僚は事務屋になるな」を現場実務や教育で強調した。

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