昭和の航空自衛隊の思い出(219) 航空総隊司令部における詰めきり作業

1.准尉・空曹・空士充員計画の作成

 計画担当の主要な業務に年2回(計画と後期修正)、准尉・空曹・空士の充員計画の作成があった。

 空幕人事課の人事第1班の幹部の人事計画、人事第2班の准尉・空曹・空士充員計画と並行して航空総隊の准尉・空曹・空士充員計画を作成した。後年、空幕人事第2班長に補職され航空自衛隊全般の准尉・空曹・空士充員計画を作成することとなった。

 この作業は、空幕の作業と同時並行で行うもので隣接の部屋において行った。移動・設営・撤収等を含めて約1週間ほどの詰めきり作業となった。当該年度における各部隊の准尉・空曹・空士の人員を特技別にどのように配分して充足していくのかの膨大な計画書の作成であった。

 全体の年度防衛・編成・装備・教育・その他の諸計画に対応して、各部隊における定員に対して、予算上認められた充足率を基準に、実員をどのㇾベルをどの時期にどのように配置していくのか人事部門においては重要なものであった。これらは年度の特技員の養成数、減耗見積数を元に各部隊の充足率をどの程度にして人員の質・量を構成するかの作業である。

 部隊の新編・改編、部隊移動、さては隊員の沖縄交流・離島勤務者交流・一般異動等を含んだ計画となり、部隊にとっては任務遂行に直結した人事計画となるものであり、これに基づき実員を充員していくことになる。 

 

2.充員計画の詰めきり作業

 航空自衛隊全般の准尉・空曹・空士充員計画の進行と同時に主力を占める総隊の総枠の中で各方面隊等ごとの計画数を策定し、総隊分の中身を逆に空自計画に取り入れる相互計画を協力し合って行う。この間、各方面隊の人事担当を招き内容のすり合わせを行いながら作業を進めた。

 この作業に当たっては、当然、充員計画の方針、重視事項及び充員要領の大綱についてしかるべく決裁を得て作業を進めた。

 詰めきり作業は、計画担当の私のもとに幹部及び有能な空曹を充当し、朝から真夜中まで明けても暮れてもち密な作業を繰り返した。時には朝方までかかったこともあった。

 この作業は、何万という人数を対象としたものであり、当時パソコンの活用がない時代で、積算・計数整理等複雑で非常に厳しい毎日の作業となるが、一週間も一緒に寝食を共にしての作業で、各人の性格・特殊能力などがよく分かり相互の信頼感・一体感が生まれた。

 まさに平時における戦友であった。この辺の思いは一緒に寝食を共にした者だけが感じるものなのかももしれない。担当幕僚としては黙々と協同作業した同志に対しては戦友であり、終生感謝し忘れ難い思い出がいっぱいである。

 

3.充員計画及び異動計画作成の意義

 こうした作業の経験は、後年、空幕人事第2班長に補職され、航空自衛隊全般の准尉・空曹・空士の人事を担当した時、充員計画の作成はもとより、全体の人事管理に役立つことになった。

 准尉・空曹・空士の異動についても、全国の人事担当者を沖縄に集合させ「生きた人事管理」を目指し、ち密で効率的な「人事異動計画の作成」を行った。このため、時の南混団司令以下の理解の元、空幕人事課長にも作業状況の視察・督励などをお願いし、実行していただいたことがある。

 これは、平時における人的防衛力の骨幹をなすもので、数万という准尉・空曹・空士の充員計画は、部隊任務の達成・部隊運用・指揮統率をも左右する重要なものであった。その作成作業は防衛・警備の諸計画と並んで遜色のないものだとの認識に立つものして臨んだ。

 人事第2班の全勢力を集中し、年度「准尉・空曹・空士の充員計画」の作成、それに基づく具体的な「人事異動計画」の作成に精魂を込めた理由はここにあった。