昭和の航空自衛隊の思い出(182)  地方連絡部に対する支援業務の担当

1.地連勤務者に関わる業務の担当

   昭和の時代は「自衛隊地方連絡絡部」と称していたが、今日は「自衛隊地方協力本部」と名称が変わった。航空方面隊司令部において、人事幕僚として関係の地方連絡部に勤務する准尉及び空曹に関わる業務を担当したが、厳しい募集難の時代であったことから優秀者の地連勤務者の選定及び集合教育の設営等 は印象に残る業務であった。

2.地方連絡部勤務者の想像を絶する苦労

 地方連絡部は、各都道府県と自衛隊との窓口であり、隊員の募集業務を担当し、自衛隊の存立に関わる重要な機関である。 

   とりわけ、 昭和40年代における自衛官の募集環境は、経済状況から厳しいものがあった。民間会社は支度金と手土産を持参して、血眼になって求人している時代であり、それに対抗して良質の隊員を確保するには地方連絡部の募集業務は極めて苦労が多く、募集広報官にとってその業務は精神的、肉体的、時間的、経済的にも負担のかかる想像を絶する仕事であった。

3.地方連絡部支援

 募集情勢が厳しい時代であったことから、航空自衛隊における地方連絡部に対する支援は全部隊が総力を挙げて支援をしたものである。

❶ 地方連絡部補職

 適任の優秀者は一度は地連勤務をという方針で優秀者を補職し、特別昇給、地連勤務終了後の配置等に最大の優遇処置がとられた。部隊の通常の職務とは異なり、営業マン近的な任務的なセンスも必要とされており、その補職は難しいものがあった。

❷ 地方連絡部臨時支援

 良質の航空自衛隊入隊者を確保するするとともに、困難な地方連絡部の業務を支援するため、要請に応じて全部隊が積極的に支援した。臨時勤務で隊員を派遣支援した。

 縁故募集の推進

 縁故募集は、良質の航空自衛官を確保するための有効かつ効果的な手段であるとともに地方連絡部の最良の支援として推進した。知人に適格者がいる場合、航空自衛隊のPRをするとともに、情報提供を行った。

 

4. 防衛白書に見る「自衛隊地方協力本部」 ( 防衛白書から出典)

 昭和の時代の「地方連絡部」と今日の「地方協力本部」は基本的にその任務に変化はないと思われるので、防衛白書から「自衛隊地方協力本部」の募集・採用について一部を転載した。

 「防衛省自衛隊が、その防衛力を最大限効果的に機能させるためには、これを下支えする人的基盤を充実・強化させることがきわめて重要である。また、防衛省自衛隊の様々な活動は、国民一人ひとり、そして、地方公共団体などの理解と協力があってはじめて可能となるものであり、地域社会・国民と自衛隊相互の信頼をより一層深めていく必要がある。

 

第1節 防衛力を支える人的基盤

1 防衛省自衛隊の職員の募集・採用

防衛省自衛隊が各種任務を遂行するためには、質の高い人材を確保することが必須の条件であり、様々な制度を設けて職員の募集・採用を行っている。

1 募集

 近年、防衛省自衛隊に対する国民の期待と支持はこれまで以上に高くなっている。その一方で、わが国では、少子化・高学歴化が進み、募集の対象となる人口が減少しており、自衛官の募集環境は、ますます厳しくなっている。これを踏まえ、わが国の防衛という自衛隊の任務の特性上、自衛隊に興味を持つ者、または自衛官を志望する者に対し、国の防衛の担い手という役割、業務や訓練、特殊な生活環境(営内生活など)や人事管理(若年定年制任期制、階級制度)などを詳細に説明したうえで、確固とした入隊意思を持つ優秀な人材を、広く全国から募る必要がある。

参照図表IV-2-1-1(募集対象人口の推移)

 

図表IV-2-1-1 募集対象人口の推移

このため、防衛省自衛隊では、学校説明会、就職情報誌への広告掲載などに加え、時代の変化に応じた募集活動を充実させ、全国50か所(北海道に4か所、各都府県に1か所)に自衛隊地方協力本部を置き、陸・海・空自で部隊勤務経験のある自衛官を広報官として配置し、学校関係者の理解と募集相談員などの協力を得ながら、志願者個々のニーズに対応できるようにしている。

また、地方公共団体は、募集期間などの告示、広報宣伝などの自衛官の募集事務の一部を行うこととされており、防衛省は、そのための経費を地方公共団体に配分している。より質の高い隊員を確保していくためには、地域に密着した地方公共団体による募集協力を含め、募集活動をより充実させていくことが不可欠である。

2 採用
(1)自衛官

 自衛官は、志願制度(個人の自由意志に基づく入隊)のもと、幹部候補生、一般曹候補生1自衛官候補生2防衛大学校学生、高等工科学校生徒3など様々な区分に応じて募集される。

参照図表IV-2-1-2(自衛官の任用制度の概要)

図表IV-2-1-2 自衛官の任用制度の概要

自衛官は、その職務の特殊性のため、一般の公務員とは異なる人事管理4を行っている。その中でも、一般の公務員と比べて大きく異なる点は、自衛隊の精強さを保つため、「若年定年制」や「任期制」という制度をとっている点である。採用後、各自衛隊に入隊した自衛官は、各自衛隊の教育部隊や学校で基本的な教育を受け、その間、一人ひとりの希望や適性などに応じた職種が決定され、その後全国の部隊などへ赴任する。

参照資料65(自衛官の定員および現員)資料66(自衛官などの応募および採用状況(平成25年度))、図表IV-2-1-3(自衛官の階級と定年年齢)

図表IV-2-1-3 自衛官の階級と定年年齢

(2)即応予備自衛官予備自衛官予備自衛官補

有事などの際は、事態の推移に応じ、必要な自衛官の所要量を早急に満たさなければならない。この所要量を迅速かつ計画的に確保するため、わが国では即応予備自衛官予備自衛官および予備自衛官補の三つの制度5を設けている。

参照図表IV-2-1-4(予備自衛官などの制度の概要)省略