昭和の航空自衛隊の思い出(172 ) 西部航空方面隊司令部における人事幕僚勤務

1.准尉・空曹・ 空士の人事業務 と上下の期待 

 西部航空方面隊司令部勤務になるまでは、主として群レベルの幕僚勤務であった。その職務は、中部航空警戒管制団の整備補給群本部総務人事班長1年6月、基地業務群本部人事班長2年及び団司令部での若干の経験、次いで、長官直轄部隊の教導高射隊本部総務班長4月の勤務経験を有していたので、現場部隊の人事業務についてはそれなりの知識経験を積んでいた。そして、現場で直面した課題の解決や施策の実行に、上級司令部でいつの日か参画したいと考えていた。

 人事幹部の配置に就く前に、要撃管制幹部として、第一線の警戒監視・要撃管制任務に就き、かつ群本部の運用班長2年を勤務したことから作戦運用面についての知識経験を有していた。更に団司令部副官という職務にも就いたことから一般の人事幹部からすれば異色の経歴であった。これらのことが、方面隊司令部人事幕僚としての活動に役立ってきた。

 一般から見ると部内幹候出身者で指揮幕僚課程を卒業してきたというので、実力以上に多少買いかぶられる面があったが、担当職務を遂行する上では非常にやり易かったことが印象に残っている。人事部内においては、業務処理するにあたって、予想以上に上下の期待と信頼があったように記憶している。

 従って、その期待に応えるべく鋭意精進努力することになった。このことにより一層幕僚業務の内容が充実するようになったようだ。ふり返ってみると全般的に見てプラスに働く要素が大きかったように感じている。

 

2.何でも人事部門の代表として参画

 第21期cs修了者から西空司への配属は1名であったが、毎年各期から1名程度は配置されていた。こうしたことから特別な課題を与えられて、若手幕僚が中心となった次期防など新しい取り組みの研究会・検討会的なものには、常に人事部の代表として参画する機会が与えられた。また、司令官へのブリ-フングなども人事部門を代表して担当することが多かった。

 要するに、幹部学校でたてなので、厳しい修練の場へ投入して、あらゆる場面で積極的に鍛えてくれたわけである。ありがたいことであった。これはその後の上級司令部においても同様であった。

 

3.総合演習等における人事幕僚の活動

 有事における方面隊司令部活動は、どちらかというと初級幹部の段階で作戦運用部門を多少でも経験したことから人事幕僚としては得意な分野であった。積極的に作戦運用幕僚と調整して、人事見積、人的戦力に関わる諸計画を作成した。

 その点では、その後の飛行教育集団司令部、航空総隊司令部勤務においても人事幕僚として、積極的に関与することができた。後年、教官として総務・人事・要務教育の現場責任者となった折は、こうした経験から学生に指揮官の補佐と部隊・作戦運用に積極的に関わるよう陣頭に立って教育に努めた。

 したがって、私にとって方面隊司令部勤務は人事幕僚としての修練に極めて有意義であった。さらには、幕僚の手足となって補佐してくれる准尉及び上級空曹との良好な関係、一体となった業務処理の仕方、優れた資質能力の活用など学ぶところが多かった。

 

4.3等空佐への昇任と役割の自覚

 昭和48年7月、指揮幕僚課程修了後、西部航空方面隊司令部部へ勤務して1年たった49年7月3等空佐へ昇任した。1等空尉の昇任が昭和44年7月であるので、5年の在職期間を経たことになる。

 昇任は基本的に人事評価に基づくものである。経歴管理の人事方針もある。部内幹候出身者の私の場合、2尉~1佐への昇任は、昇任に要する在職期間の1.5~2倍であった。3佐への昇任だけは意外に早い昇任であったといえる。

 昇任については、部内幹候に進んだ時から特別の関心もなく、後輩幹候期に追い越されても気に留めることはなかった。実力を蓄え、発揮することに専念し、ある面では達観していたといえる。

 だだ、自分の考え抱いている命題、人事施策などを実現・実行したり、その事業に参画するにはそれなりの階級と職務につかなければ単なる夢に終わってしまうことになる。そのような観点から3佐への昇任は、将来の自分の役割を一層自覚することになった。

 

自衛隊
(昭和二十九年六月九日法律第百六十五号)の抜粋

(隊員の昇任、降任及び転任)
第三十七条  隊員の昇任及び転任(自衛官にあつては、昇任)は、隊員の幹部職への任命に該当するものを除き、人事評価に基づき、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める能力及び適性を有すると認められる者の中から行うものとする。
 自衛官 任命しようとする階級において求められる能力
 自衛官以外の隊員 任命しようとする官職の属する職制上の段階の標準的な官職に係る標準職務遂行能力及び当該任命しようとする官職についての適性
 隊員を降任させる場合(隊員の幹部職への任命に該当する場合を除く。)は、懲戒処分による場合を除き、人事評価に基づき、当該隊員が、前項各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める能力及び適性を有すると認められる階級又は官職に任命するものとする。
 国際機関又は民間企業に派遣されていたことその他の事情により、人事評価が行われていない隊員の昇任、降任又は転任(自衛官にあつては、昇任又は降任)については、隊員の幹部職への任命に該当するものを除き、前二項の規定にかかわらず、人事評価以外の能力の実証に基づき、第一項各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める能力及び適性を判断して行うことができる。
 前三項に定めるもののほか、隊員の昇任、降任及び転任(自衛官にあつては、昇任及び降任)の方法及び手続に関し必要な事項は、防衛省令で定める。

自衛隊法施行規則
(昭和二十九年六月三十日総理府令第四十号)の抜粋

(隊員の昇任)
第二十八条  隊員の昇任は、人事評価等(法第三十一条第二項 に規定する人事評価をいい、国際機関又は民間企業に派遣されていたことその他の事情により、当該人事評価が行われていない場合にあつては、当該人事評価以外の能力の実証をいう。以下この条、次条第一項、第三十一条の二第一項、第三十一条の三第一項及び第三十二条において同じ。)の結果に基づく選考によつて行う。ただし、次の各号に掲げる場合にあつては、試験によるものとする。
 准陸尉から三等陸尉への昇任
 准海尉から三等海尉への昇任
 准空尉から三等空尉への昇任
 陸曹長から三等陸尉への昇任
 海曹長から三等海尉への昇任
 空曹長から三等空尉への昇任
 陸士長から三等陸曹への昇任
 海士長から三等海曹への昇任
 空士長から三等空曹への昇任
 前項第一号から第三号までに掲げる昇任については、同項ただし書の規定にかかわらず、人事評価等の結果に基づく選考によつて行うことができる。
(昇任に要する期間)
第二十九条  自衛官の昇任のための選考(前条第二項の選考を除く。)又は試験(前条第一項第一号から第三号までに掲げる昇任のための試験を除く。)は、昇任しようとする階級の直近下位の階級(同項第四号から第六号までに掲げる昇任のための試験にあつては、それぞれ陸曹長、海曹長又は空曹長の階級)において、別表第七に定める期間(自衛官候補生から引き続いて自衛官に任用された者の一等陸士、一等海士又は一等空士への昇任にあつては、同表に定める期間から当該自衛官候補生としての任用期間に相当する期間を減じた期間)勤務した者について行わなければならない。ただし、人事評価等の結果に基づき勤務成績が極めて良好である者として防衛大臣が定めるものについては同表に定める期間の八割の期間(自衛官候補生から引き続いて自衛官に任用された者の一等陸士、一等海士又は一等空士への昇任にあつては、同表に定める期間の八割の期間から当該自衛官候補生としての任用期間に相当する期間を減じた期間)をもつて、防衛大臣の定める特殊な職務に従事する者については別に防衛大臣の定める期間をもつて同表に定める期間に代えることができる。
 前条第一項第一号から第三号までに掲げる昇任のための試験にあつては、それぞれ准陸尉、准海尉又は准空尉の階級において勤務した期間に関係なく、当該階級にある者について、前条第二項の選考にあつては、それぞれ准陸尉、准海尉又は准空尉の階級において三年以上勤務した者について行わなければならない。

別表第七 (第二十九条関係)

階級 昇任に要する在職期間 階級 昇任に要する在職期間
陸将補
海将
空将補
三年 一等陸曹
一等海曹
一等空曹
二年
一等陸佐
一等海佐
一等空佐
六年 二等陸曹
二等海曹
二等空曹
二年
二等陸佐
二等海佐
二等空佐
四年 三等陸曹
三等海曹
三等空曹
二年
三等陸佐
三等海佐
三等空佐
三年 陸士長
海士長
空士長
二年
一等陸尉
一等海尉
一等空尉
五年 一等陸士
一等海士
一等空士
一年
二等陸尉
二等海尉
二等空尉
三年 二等陸士
二等海士
二等空士
六月
三等陸尉
三等海尉
三等空尉
二年    
曹長
曹長
曹長
二年