昭和の航空自衛隊の思い出(164 ) 指揮幕僚課程と昇任

1.指揮幕僚課程卒業者の人事管理

 昭和48年7月一年間の指揮幕僚課程を修了し、各級司令部及び航空幕僚監部等を勤務した。一般的に世間一般では、CSを卒業したたら「〇〇まで昇任間違いない」、「昇任が早い」といったことがささやかれていた。しかし、実際は必ずしもそのようではなかったとの印象が強い。三自衛隊でも人事管理は様々であったように記憶している。  

 当時、航空自衛隊における指揮幕僚課程卒業者については、人事管理上資格的に取り扱い又は別管理を行うことはしない。これがため、昇任・補職は勿論、高級の学生の選抜に当たっても本課程卒業者の特別の取扱いは行わないとされていた。当時の昇任状況の実態を見てもそのようであったように記憶している。

 航空自衛隊においては、私の在隊間においては、指揮幕僚課程を卒業した当時とそれほど基本的な人事取扱いに変更はなかったように感じていた。

2.  指揮幕僚課程卒業後の能力発揮

 私が担当した分野は、航空幕僚監部及び各級司令部の人事幕僚として、主として准尉・空曹・空士の人事管理であった。准尉・空曹の昇任に関しては、資質能力と勤務成績が基本であったと記憶している。幹部自衛官の昇任管理及び経歴管理については、空幕で直接その業務を担当することはなかったので差し控える。

 別の視点から言えることは、 指揮幕僚課程を一年間修学することによって、将来進伸する資質能力を高めたかどうかである。その後の勤務において課程修学を基盤にして持てる資質能力をどの程度発揮したかどうかであろう。

 能力発揮の面では、指揮幕僚課程卒業者は、航空幕僚監部等及び各級司令部等に補職される。配置される担当職務は様々であるが、等しく能力発揮の機会が与えられる。

 各人の資質能力は、教育を担当する側から見た評価のほか、指揮幕僚課程で一年間勉強していると学生間では出身期別に関わらず自ずとそれぞれの実力・資質能力がある程度分ってくるものである。

 指揮幕僚課程の一年間の修学は、各人の性格・資質能力が浮き彫りになるものだ。同期生間である程度の評価が定まってくる。その点では厳しいものがある。

3.等しく羽ばたく機会と活用

 当時を振り返ってみると、本課程の修学によって、視野が広がり、識能が向上し、指揮官・幕僚として自信を持って職務にあたることから大いに羽ばたく機会が与えられることになったことは間違いないであろう。それを活かす鍵は本人の取組みと伸長にかかっているといって過言ではなかった。

 さらに言えることは、実力と運であろう。運とはいわく言いがたいものだが、ピンチがチャンスとなっていくなど運も実力に裏打ちされたものと見るべきであろう。一歩一歩階段を登りながら足元を固め実力をつけ、周りから高い評価と信頼を受けていく過程で人生には運というものがついてくることがある。ただ単に運が突然生まれるのではなく、精進の結果の運であり、運は実力と一体のものとみるべきではなかろうか。