昭和の航空自衛隊の思い出(153) 指揮幕僚課程の勉学

1.困難な課題作業と鍛錬

 指揮幕僚課程においては、教育課目の各段階で課題が多く出された。学生の資質練磨のため、適宜多大の課題作業等による厳しい鍛錬の機会を与え、困難な条件下にあってもひるまぬ強固な精神力と的確な判断力の涵養に努めさせることを狙ったものである。

   課程の前半の課題は個人作業が多かった。課題に取り組むにあたっての基礎的な講義・説明の後は課題が付与された。課題に応じた資料収集、読書、分析検討、策案の作成など苦労もあったが、やり甲斐もあった。 

2.自由・独創的な発想と体験

 固定観念・既成概念にとらわれないで、自由かつ独創的な発想を試みることができた一年間であった。学生の身であるから職務・職場・上司・部下などのすべてから解放されて勉学できたことは終生最高の幸せの期間であった。

 古来戦いにおいて、戦理はあっても定形なしである。意表をつく作戦で戦勝を得ることもある。兵学の原理・原則、部隊運用のドクトリンはあっても一つの戦法、一つの方式に固定することは有害であり、各種状況に応じて運用の妙を発揮する実力を見につけることにあった。

 山に登るのに360度の方向からいくつものル-ト、手段方法がある如く、任務目的を達成する最良の方策は、いくつもの行動方針についてあらゆる点から実行可能性等、利点・不利点・問題点を探求して策定するものだ。 

 当時、建設期の航空自衛隊においては、創造力が特に強調されていた。CS卒業後、あらゆる場面で新しい発想で諸業務に取り組むことができた。今日に至るも年老いてもどちらかというと、先進的・積極的・独創的な物の考えを持ち続けているのはこうした考え方・体験が骨の髄までしみこんでいったせいではなかろうかと思われる。良き時代を過ごせたと思っている。 

3.活発な発表討議

 課題作業が終われば、研究結果の発表があった。いかに全員に理解してもらか多くの機会が与えられた。自分の発表もさることながら他の学生の研究成果を聞くのが楽しみであった。全く自分の考え方、とらえ方、アプロ-チの異なったものに特に興味を持ち参考になった。

    卒業後、各級司令部勤務において、主要幕僚列席の司令官へのモ-ニングㇾポ-トで人事部門を代表して報告することがあり厳しく鍛えられた。堂々と自信を持って短時間に簡潔明瞭にして的確に報告できるようになったのも鍛錬の成果であった。

4.指揮統率のあり方

 指揮幕僚事例研究や戦史などの勉学を通じて指揮官・幕僚としてのあり方を学ぶことが多かった。卒業後、各級の司令部の幕僚勤務において、どんな課題でも最良の方策を作り上げることにチ-ムの総力を結集して努力したことが思い出される。

 人事幕僚作業においては、基礎デ-タの積み上げなど自主積極的に人事空曹が手足となって実に良く活動してくれた。口数は少ないが実行型の優秀な人事幹部と空曹陣がバックアップしてくれた。現場では理論より実行あるのみで陣頭に立って立ち向かった。懐かしき時代であった。

 

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 《 課題作業の発表 》

 

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 《 講堂の机の席次は幹部名簿の通り前から並び40名中33番目であった。私の右隣が藤原忠晴1尉(防6)、左隣が永富嘉一郎1尉(航5)、前が永尾和夫1尉(防6)、斜め前が髙橋伸治1尉(防6)であった。》

 

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《 講堂における様子、分厚い資料を基に沈思黙考、熟慮に熟慮を重ね、最良の策案を作る作業が続いた。》