航空自衛隊第1期操縦学生(29) 感動の入隊60周年記念大会を終えて

1.   厳しい80歳・傘寿の坂

 第1期操縦学生入隊60周年記念大会は、6月2日~3日浜松において開催され、無事終了した。第1期操縦学生会としては最後の同期生会となったが、有終の美を飾るにふさわしい大会となったであろうか。帰りの車中で同期の多くが異口同音に「ありがとう」の言葉を残していった。

 今回は大会の主旨の通り、第1期操縦学生会としての全体・組織的な同期生会の最後となることから1期生110名中57名と夫人5名の参加となった。物故者はすでに52名となった。総括してみると全体の概ね半分が参加でき、後の半分の者は施設に入ったり、家庭で介護を受けたり、病気・健康上の理由で参加できなかった者が多い。80歳・傘寿の坂は「厳しい壁」であることを実感した。

 大会の実施に当たっては、浜松在住の同期生が中心となった実行委員会を結成して企画・実施・運営に当たった。企画立案を進め、本年2月に「第1期操縦学生入隊60周年記念大会実施構想」を案内し、参加回答のあった者に対して、5月初旬、再度細部計画を案内した。

 この間、参加したいが参加できない者、自分は動けても妻の介護でいけないもの、老老介護など同期生の様々な人生模様や事柄が浮き彫りになった。

 昨年の同期生会に出席して元気に語らい、本年の入隊60周年記念大会を楽しみにしていた村山昌道君、恩田守君は病に倒れ旅立ってしまった。

 このように様々な事情で、最後の記念大会に参加できなかった同期生の諸々の思いはいかばかりであったであろうか。その心中は察するに余りあるものがある。 

 

❶ 大会参加を楽しみにした故村山昌道君

 毎年九州から必ずといってよいほど元気に同期生会に参加していた村山昌道君は、昨年6月東京の同期会に参加し後、脳溢血で他界してしまった。「「来年は浜松だから、名古屋から新幹線にするかな~」と話しておりました」と返信を下さった光子夫人はこのように認めてこられた。故人の切なる思いを私共実行委員会に届けてくださり、ぜひ「第1期操縦学生入隊60周年記念大会」を成功させてほしいと励ましを下さった。その心づかいに実行委員会一同涙し勇気づけられたものであった。ありがとうございました。

 毎年いつも会うたびに元気で同期の話しの中に入り、楽しそうにしていた村山昌道君の笑顔が思い出されてご冥福とご遺族へのご加護を祈った。

f:id:y_hamada:20140602165221j:plain

《 平成25年6月2日東京での第1期生会 右は在りし日の村山昌道君、左は黒田功君、村山君のご冥福を祈ります。 》 

 

❷ 大手術後の執念参加の黒田功君

 黒田功君は、平成25年度の1期生会長として本大会開催を推進してきたが、突然の入院となり5月25日に大手術を受けた。入院前から「どんなことがあっても同期会には参加したい」との執念から1週間後に退院し、大手術と病後のそぶりを全く見せないで大会に参加してくれた。最後となる全国大会に寄せる同君の固い意志と熱い情熱に感動した。

f:id:y_hamada:20150602203723j:plain

  《 左の豊釜勇区隊長と右は大手術後、大会に参加した執念の黒田功君 》

 

❸ 60年ぶりに再会した異色の道を歩んだ川又巳三男君

 多くの同期生は、川又巳三男君とは60年ぶりに再会した。操縦学生基本課程後、大学に進みカトリック牧師の道へ進んだ彼は、各地のカトリック教会司祭として活動している。私も手紙と写真ののやり取りだけであったが、今回、会うことができた。

 青年時代机を並べて薄暗い裸電球の下、扇風機さえなかった粗末な蒸し風呂のような教室で勉強したころが思い出された。当時と全く変わらぬ、人を大切にする落ち着いた人柄はまさしく聖職者そのものであった。

f:id:y_hamada:20150602200103j:plain

《 左から天野勝君、真ん中はカトリック聖職者の川又巳三男君、右山田繁君、60年前と変わらぬ人柄に接して心が豊かになった。 》

 

❹ 3.11の風雪に耐える鈴木弘直君  

 鈴木弘直君は、3.11による原発避難組の一人で、各地を転じても今なおわが家には帰れず、つくば市で暮らしている。携帯酸素を必要としている生活であるが、今回は久仁子夫人と一緒に参加してくれた。

 不自由な身体状況にありながら大会に参加した鈴木弘直君の「同期の皆に感謝の意を伝えたい」とする強い意志とそれを支えて同行された夫人の心情に思いを致すとき本大会の意義が一層光輝いた。

 

f:id:y_hamada:20150602200343j:plain

《 酸素を携帯してはるばる避難先のつくば市から夫婦で参加してくれた。左は鈴木正直君、右は水野達雄君 》

 

 ❺ 故恩田守君の思いを届けてくれた名酒「加賀鳶」と挨拶状

  恩田守君は、毎年同期会には参加していた。昨年も東京市ヶ谷で開かれた同期会にリックを背負ってやってきたが、本年4月黄泉の彼方へと旅立っていった。

 美智子夫人から大会に際して、告別式の挨拶状とともに名酒「加賀鳶」2本が届けられた。2次会で銘酒を分け合って、恩田君を偲びつつ語り合った。立派に航空人として、親父の役目を果たした彼はきっとこの大会を見守ってくれたであろう。

 恩田守君の生きざまは、等しく第1期操縦学生一人一人の人生とも言えるのではなかろうか。雄々しく生き抜いた「操学1期」の人生でもある。

 

f:id:y_hamada:20140602141058j:plain

  《 平成25年6月2日東京で開催した第期操縦学生同期会、在りし日の恩田守君 》

f:id:y_hamada:20150602215232j:plain

《 恩田美智子夫人から届けられた名酒「加賀鳶」、恩田守君を偲び名酒を味わった。名酒は五臓六腑にしみ 見事なまでにあっという間に2本が空になった。ありがとうございました。御冥福を祈ります。》

 

f:id:y_hamada:20150619204305p:plain

f:id:y_hamada:20150619204405p:plain

 《 故恩田守君の告別式における挨拶状の一部、家族からも周囲からも愛され惜しまれながら旅立った「操学1期恩田守君」の生前を偲ぶ一文でもある。》

 

2.  第1期操縦学生入隊60周年記念大会の案内

 第1期操縦学生入隊60周年記念大会は、6月2日~3日浜松において開催されたが、最初の案内は2月、第2回目は5月初旬であった。次の通り案内が行われた。

                            平成27年5月吉日

第1期操縦学生各位 

                 操縦学生第1期生会 会 長 小林  誠

                 大会実行委員会   委員長  濵田 喜己

         第1期操縦学生入隊60周年記念大会のご案内

  謹啓、新緑の候、第1期操縦学生の同期諸兄におかれては、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

 さて、今年は、昭和30年6月2日に第1期操縦学生として入隊して以来60周年を迎えることになりました。第1期生会として最後の記念大会を開催するにあたり、先に実施構想をもってご案内したところ多数の諸兄の参加が見込まれております。参加する旨の返信をいただいた方に改めてご案内申し上げます。季節柄健康に留意されてご参加くださるようお願い申し上げます。 

                                   謹言

          第1期操縦学生入隊60周年記念大会実施計画

1. 大会の主旨

   本年は、第1期操縦学生にとって、6月2日で入隊60周年を迎えます。近年、先立つ同期生を見送る中、はや80歳・傘寿となります。1期生会も将来を見通して、ある程度元気が残っているうちにけじめをつけるべく、今回の大会をもって全国規模の活動は終結し、地区ごとの活動に移行いたします。言うなれば「操縦学生第1期会としての最後の記念すべき総会・同期生会」となるものであります。

    このため、最後の操縦学生第1期会の記念大会となることから、かって青春を謳歌した航空自衛隊発祥の地である浜松基地、操縦者の道を歩むため学んだ英語教育隊、戦闘機操縦課程等々思い出の多い浜松といたしました。ここに同期の総勢が参集し、風光明媚な浜名湖畔のホテルに一泊して一緒に汗を流し語らい、総会及び懇親会等で同期の絆を大いに深めるとともにお互いの長寿を祈念する大会とするものであります。

    翌日は、午前中、近代化と充実発展しつつある浜松基地を訪れ、青年時代を振り返ることにいたします。

 往時と大きく変貌した基地の様相を眼に入れて、南北地区に所在する第1航空団、警戒航空隊、第1術科学校等で、飛行部隊指揮官から現況のブリ-フィングを受け、直接現場で現有の実機等の見学をした後、基地主要幹部等と思い出の多かった部隊食を喫食し最後に、航空自衛隊浜松広報館を見学して散会することといたします。  

 同期会の最後の記念事業として、第1期生の誇りと意気を後輩に末永く伝承するため、100万円を航空学生連合会に贈呈いたします。その内容は航空学生の諸行事で先頭に立つ航空学生旗及び指揮者の儀礼刀並びに航空学生顯彰館の整備等に充てるものであります。

   これらの経費は第1期生会で保有するものから拠出し、今回の大会経費の充当と合わせて、すべて会計を清算整理することにいたします。

    このたびの大会の開催に際しては、浜松基地司令並びに関係部隊長等から積極的に支援・協力する旨の言葉をいただいております。

   本大会は、第1期同期生が一堂に会する最後のものとなりますので、一人でも多くの同期生並びにご夫人の皆様のご参加を期待するものであります。不参加とされている方でも都合のつく諸兄がおられればお誘いくださるよう重ねてお願い申し上げます。 

2. 方針

(1) 今回の第1期操縦学生入隊60周年記念大会は、最後の1期生会とすべく有終の美を飾るにふさわしい大会とする。(今後は地区主催の同期生懇親会に随意参加する方式へ移行するものとする。)

(2) 大会実施に当たっては、浜松地区在住の同期生を主体に実行委員会を設けて計画し、円滑な実施を図る。

(3) 操縦学生第1期生会として同期会は最後となるため、出来る限り多くの同期生、夫婦の参加を呼びかける。

(4)  最後の第1期生の記念事業として、第1期生の名誉と業績を永遠に記念するため、航空学生制度創設60周年記念行事に際して、100万円を航空学生連合会に寄贈し、航空学生旗及び儀礼刀並びに航空学生顯彰館等の整備に充当するものとするとし一任する。

(5) 本年6月5日・6日防府で行われる航空学生制度創設60周年行事には、航空学生連合会長から招待を受けたので第1期生会代表として、会長等を送り祝賀するものとする。

(6) 大会の実施に当たっては、会費のほか同期生会から相応の支出をもって充当し運営するものとする。

(7) 本大会のスナップ写真を中心とした「第1期操縦学生だより」を作成・配付する。合わせて大会終了後における地区別同期生会の幹事役、メ-ル等による情報連絡網の構築等を中心に持続可能な範囲のものを設定する。

3 大会実施の概要

  別紙のとおり          省略

4 来賓及び招待者               

   区隊長 豊釜 勇様

   航空学生連合会代表等(浜松) 5名

5 会費 〔宿泊代、懇親会代、入浴代等、〕 省略      

6 参加申し込みの確認          省略

7 担当

  操縦学生第1期生会  

   会 長  小林 誠  幹 事  山田 繁   幹 事  馬場 雍

  実行委員会 (浜松地区在住同期生全員)

 

   委 員  前川 誓孝  西山 淳      村田 隆  天野 勝 

       平山 貞男  打井 亮吉  畠山 吉秋                                                                    以上