昭和の航空自衛隊の思い出(124) 副官の飾緒

1.副官職の象徴

   副官職の象徴は何といっても、「副官飾緒」と言ってよいであろう。航空自衛隊において、副官と他の職との違いは副官飾緒を着用することであろう。多くの国の軍隊に共通するものとして、職を示すものとしては副官用と駐在武官用の飾緒がある。これらは常装に着用されることが多い。

 昭和の30、40年代は「飾緒」といえば、私の目から見れば大東亜戦争戦史や映画・写真で参謀が飾緒を着用しているとの印象の方が強かった。そのほか一般的には、飾緒としては儀仗兵や軍楽隊などに見られる服装に装飾として着けられるものを目にして、そのきらびやかさが強く残っている。

 航空自衛官になって、航空幕僚長等の初度視察時に随行の副官が飾緒を着用しているのを遠くから見かけたが「かっこいいなあ」と思ったことがある。幹部自衛官となって、まさか自分が副官飾緒を着用することになるとは思ってもいなかった。

2.副官の飾緒に関する訓令

 副官飾緒に関するものはすべて焼却して手元に資料がない。ネットで見るかぎり、「副官飾緒」に関しては、私が関った昭和40年代前半と全く変わりなく、部隊の新編・改編によって「着用者」が多くなったことぐらいのようだ。

 副官の飾緒については、 防衛庁訓令第74号. 自衛隊法(昭和29年法律第165号)第58号第2項及び自衛隊法 施行規則(昭和29年総理府令第40. 号)第19条の規定に基き、「渉外事務を行う際に 着用する副官の飾緒に関する訓令」( 昭和33年8月1日)に定められている。訓令の一部改正は 、部隊の新編・改編によって 副官飾諸の着用者に変更がある都度行われている。

⑴ 副官飾緒の着用者

    昭和40年代初めの副官飾緒の着用者は、❶統合幕僚会議陸上幕僚監部海上幕僚監部及び航空幕僚監部副官 ❷ 陸上、海上自衛隊の関係分省略  航空総隊司令部、飛行教育集団司令部、航空方面隊司令部、航空団司令部及び航空警戒管制団司令部の副官であったように記憶している。

 これらは副官飾緒訓令によって、部隊の新編・改編の都度、訓令の一部改正により着用者が定められている。 

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《昭和42年度末の航空自衛隊の編成組織 》

⑵ 副官飾緒の制式

    副官飾緒の制式は、訓令に「白色の丸打ひもを三つ編みにし、両端に銀色の金属製金具をつける。(陸上自衛官である副官のものには桜花及び桜葉を、海上自衛官である副官のものにはいかりを、航空自衛官である副官のものにはわしをつけたものとする。)を付ける。」と定められている。

 (副官飾緒の形状及び寸法 省略)

⑶ 副官飾緒の着用

 副官飾緒の着用は、訓令に❶日本国外に出張する場合 ❷日本国内において日本国以外の国の軍隊、軍艦又は大使館若しくは公使館との連絡業務に従事する場合 ❸そのほか、渉外事務を行うため必要がある場合に着用する。 」と定められている。

副官飾緒の着用区分及び着用要領は、自衛官服装規則に定められている。

3.副官飾緒の雑感  

 ❶ 団レベル以上の部隊における副官

 昭和41年5月から43年7月まで2年余、入間基地に所在する中部航空警戒管制団司令部副官の配置に就いた。

  当時、航空自衛隊において、航空幕僚監部副官は2佐と3佐、航空総隊司令部副官は3佐、方面隊司令部副官は1尉、航空団司令部・航空警戒管制団司部副官は2尉が配置されていたように記憶している。

 指折り数えれば、副官の配置は少数であった。なかなか経験できないポストに配置されたことに感謝した。各級の指揮官及び幕僚は一般的であるが、副官のポストは特定の配置で数が限られており、職務に特殊性がある点で大変ではあるが、得難い経験ができるポストであり魔力を秘めた配置ではなかろうか。

❷ 副官飾緒の着用

   昭和の40年代初めに、私が副官の配置について気がついたことは、方面隊司令部レベルの副官は、司令官の視察、儀式等日常的に副官の飾緒を着用していたが、団司令部レベルの副官の場合はあまり着用していないようであった。

 最近のことは承知していないが、航空団・警戒管制団レベルの副官は階級的に2尉クラスが配置されることが多いと思われる。どちらかというと、司令部の並み居る主要幕僚より階級は低いことから副官飾緒を着用するとめだって躊躇している面があるように感じたがどうであろうか。

 当時、昭和30年代,40年代初頭にかけては、書物の中で昔の参謀の飾緒などの写真をみかける程度で、司令部の中に副官の飾緒を着けた経験のある者はいなくて、着用の仕方など教えてくれるものはいなかった。

 現在のようなネットの時代であれば写真でチェックできるが、みようまねようであった。

 過日、行われた浜松防衛団体連合会長の交代レセフションで航空教育集団司令官の副官は副官飾緒を着用しているのを見かけた。階級ではなく職務を主体とするものであり、正々堂々と着用させて副官の職務に誇りと自信を持たせることが必要であるように感じた。

4.副官の選考

 遥か昔のことといえども、人事に関することであまり語ることはできないが、後年、人事幕僚として、副官の選考に関わるようになった。副官の選定に当たっては高級部隊指揮官に直接関わることであるので、最終的には指揮官に伺いを立てて決定することになる。

   選考に当たってはすべてにわたって分析検討し、慎重かつ綿密に選考することになる。一番難しい人事であることは間違いない。付随して副官付の選定も同様である。

 私が経験した感じからすれば、団レベルの副官のポストは、将来伸びていくであろう青年幹部の育成の場として配置活用すると人材育成の点から成果は絶大であると確信していた。

 こうした観点から、人事幕僚として、副官の選考具申に当たっては、候補者の将来と合わせてどの配置よりも慎重に取扱い、かつ指揮官の性格等も考慮したものである。 

 

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 《 「航跡 空の守り20年》編集発行 朝雲新聞編集局から転載(出典) 白川元春航空幕僚長と副官  》