昭和の陸上自衛隊の思い出(15) 「徒然の記」   ベッドの整頓

陸上自衛隊の思い出・「徒然の記」

 この記は、昭和54年11月浜松基地にある飛行教育集団司令部人事第1班長(自衛官人事担当)(現航空教育集団司令部)として勤務した、2 佐・44歳の頃、浜松医療センタ-に短期間、検査入院した折に「徒然の記 」として、24年前の昭和30年陸上自衛隊に入隊し教育訓練を受けたころを回想したものである。

  *現在から当時を見てどうであったのか所感と説明を【  】に加えることにした。

 

19.  ベッドの整頓 

 新隊員教育において内務班は生活の場であり、ベッドは個人の城みたいなものである。集団生活においては、ここが唯一の個人の城であった。また、自衛隊生活の起居の場であり、基本動作と切っても切り離せないほど関係が深い。

 最初の頃、要領を得なかったベッドの整理整頓も日が経つにつれて上手になり、コツを覚えたものである。

 整理整頓といっても、見た目にはなんでもないようだが、それなりに苦心があるもので、整然とすることができる。

 しかし、行き過ぎて病いこうじて、要領の良いものは板を見つけて、角を直角に立て幾何学的に90度となるように工夫する連中も出てきたのには驚いた。

 例の元自衛官の古参と称する隊員など生活の知恵の恐ろしさというか、しぶとさといったものを知った。

 多くのものは、大体手でしわをのばす、角を付けたりして整頓していた。途中でベッドに腰掛けると形が崩れるので、ベッドに腰掛けないでいたことがある。

 教育の後半からは、ベッドの整頓の特に悪いもの、靴の磨きの良くないものは何者かによってはぎとられており、唖然するすることがあった。私はこんな目に合ったことはなかった。その後の営内生活の中でも、こうした経験をすることはなかった。

 

【 何事もそうであるが、要領・コツを覚えればそれほど苦労をすることなく、見た目にも美しく映る整理整頓はできるものである。

    そのよい例がホテル等のベッドメ-キングであろう。それなりのノウハウがあるものだ。

 最近の自衛隊におけるベットは優れたものになっているやに伺っている。

     昭和の30年代は米軍方式で簡素であった。毛布とシ-ツを使って基礎メ-キングをしっかりとすれば安定した見た目にもきれいに整然としたものが出来上がる。又。毛布をたたたんでおく場合も同じであった。

 基本をしっかり固めずいい加減なメ-キングをすればいつの間にやら形が崩れる。何事をやるにも要領とコツをつかむことを学んだような気がする。

    新隊員の教育期間中は、全てが隊員としての基本的なものを身に着けさせることにある。

    隊内生活で、短時間のうちに要領よく自分でべッドを作ることは基本中の基本である。

    時として、教育指導の一つとして、ごまかしや基本を守らないものに対して、ベッドの毛布等を剥ぎ取る衝撃的なシヨックを与える手法を用いることもあるであろう。

    卒業後の部隊では実勤務が忙しくて、そのような指導をしている暇などないからだ。】