昭和の航空自衛隊の思い出(19)   自衛隊勤務と空曹・空士の昇任

その時何を考え立ち向かったか      

    昭和の航空自衛隊の全体像を私ごときが語ることなど毛頭考えてもいないし、出来ることではない。
    大組織にあって、一隊員の勤務経験などたかがしれているが、私が歩んだ足跡を基軸に自衛官人生を綴ることはできる。
    その主点は昭和の航空自衛隊に勤務した当時を回想し、自衛官の勤務経験と生活を軸に、どのように勤務し、どんな問題と取り組み、何を考え、行動したか。どんなことに悩み、立ち向かったかなどを「昭和の航空自衛隊の思い出」として綴ってみたい。
    自衛隊勤務と空曹・空士の昇任」は、今から25・6年前の航空自衛隊の定年退官(平成2年4月)が近づいたころに記した所感である。

    自衛隊勤務で、要撃管制幹部から転じ人事幹部・幕僚として、各級司令部及び航空幕僚監部人事課で准尉・空曹・空士の昇任業務を担当してきた。作業に当たってはいつも心を引き締めた。

 私の「タイムカプセル」の「自衛隊勤務と空曹・空士の昇任」である。

 

自衛隊勤務と空曹・空士の昇任」

1.新世界が開けた3等空曹昇任

 自衛官生活でもっとも喜びがふくらんだのは何といっても「3等空曹」になった時である。大空への夢が破れ、操縦学生を免となった空士長時代はどことなくふわふわして将来に対する展望がなかったように思えた。

 それが3等空曹に昇任し、腕の階級章から、襟に3等空曹の階級章を付けると人生がいっぺんに変わったように思えた。新しい目で眺めている自分にびっくりしたり、世の中が変わったように思えた。

 空曹への昇任がこんなにまで、自分の心を変えるものかと今でも昨日の出来事のように思える。

2.1士昇任の喜びと決意

 第3術科学校の教育部で第4科長(2佐)時代、ある日、初級人事員課程を卒業した婦人自衛官(WAF)の教え子数名が2等空士から1等空士へ昇任し、誇らしげに「科長ありがとうございました。1等空士へ昇任しました」と真新しい階級章を付けて、私のところに挨拶に来た。

 あの初々しい誇らしげな姿が今も瞼に焼き付いて忘れられない。階級社会の自衛隊生活において1階級昇任するということは、それぞれに新たな決意と喜びもたらすものだと心を新たにした。

3.昇任業務にあたって

 毎年昇任時期になると思い出すことがある。人事幹部・幕僚になって、指揮官を補佐し、准尉・空曹・空士の昇任業務に従事する折、いつも脳裏をかすめたのは、自分が3等空曹へ昇任したときのこと、WAFの1等空士への昇任の喜びの姿であった。

    下の階級であればあるほど喜びはひとしおであり、昇任の及ぼす影響はさまざまである。業務に当たっては心を引き締めた。

 

階級章      (自衛隊大阪地方本部のホ-ムぺ-ジから抜粋)

制服等の肩又は襟(士は左腕部)につけ、自衛官の階級が分かります。

自衛隊呼称
(※外国軍人呼称)
陸上自衛隊
JGSDF
海上自衛隊
JMSDF
航空自衛隊
JASDF
定年
幹部 将官 幕僚長
(大将)
陸上幕僚長
陸上幕僚長
海上幕僚長
海上幕僚長
航空幕僚長
航空幕僚長
60

(中将)
陸将
陸将
海将
海将
空将
空将
将補
(少将)
陸将補
陸将補
海将
海将補
空将補
空将補
佐官 1佐
(大佐)
1等陸佐
1等陸佐
1等海佐
1等海佐
1等空佐
1等空佐
56
2佐
(中佐)
2等陸佐
2等陸佐
2等海佐
2等海佐
2等空佐
2等空佐
55
3佐
(少佐)
3等陸佐
3等陸佐
3等海佐
3等海佐
3等空佐
3等空佐
尉官 1尉
(大尉)
1等陸尉
1等陸尉
1等海尉
1等海尉
1等空尉
1等空尉
54
2尉
(中尉)
2等陸尉
2等陸尉
2等海尉
2等海尉
2等空尉
2等空尉
3尉
(少尉)
3等陸尉
3等陸尉
3等海尉
3等海尉
3等空尉
3等空尉
准尉   准尉
(准尉)
准陸尉
准陸尉
海尉
准海尉
准空尉
准空尉
曹士 曹長
(上級曹長
曹長
陸曹長
曹長
海曹長
曹長
空曹長
1曹
曹長
1等陸曹
1等陸曹
1等海曹
1等海曹
1等空曹
1等空曹
2曹
(軍曹)
2等陸曹
2等陸曹
2等海曹
2等海曹
2等空曹
2等空曹
53
3曹
(伍長)
3等陸曹
3等陸曹
3等海曹
3等海曹
3等空曹
3等空曹
士長
(上等兵)
陸士長
陸士長
海士長
海士長
空士長
空士長
-
1士
(1等兵)
1等陸士
1等陸士
1等海士
1等海士
1等空士
1等空士
-
2士
(2等兵)
2等陸士
2等陸士
2等海士
2等海士
2等空士
2等空士
-

自衛隊と外国の軍隊とでは制度が異なるため、正確な対比はできません。( )内は      一例
・「※」は、統合幕僚長又は陸上、海上、航空幕僚長
統合幕僚長の定年は、年齢62歳
・医師、歯科医師及び薬剤師である自衛官並びに音楽等の職務に携わる自衛官の定年 年齢は別に定められている。