昭和の航空自衛隊の思い出(18)   自衛隊勤務と読書

その時何を考え立ち向かったか      

    昭和の航空自衛隊の全体像を私ごときが語ることなど毛頭考えてもいないし、出来ることではない。
    大組織にあって、一隊員の勤務経験などたかがしれているが、私が歩んだ足跡を基軸に自衛官人生を綴ることはできる。
    その主点は昭和の航空自衛隊に勤務した当時を回想し、自衛官の勤務経験と生活を軸に、どのように勤務し、どんな問題と取り組み、何を考え、行動したか。どんなことに悩み、立ち向かったかなどを「昭和の航空自衛隊の思い出」として綴ってみたい。
    自衛隊勤務と読書」は、今から25・6年前の航空自衛隊の定年退官(平成2年4月)が近づいたころに記した所感である。

    自衛隊に入隊以来、文学全集はもとより割合に幅広く本を読んでいたように記憶している。特に東京での指揮幕僚課程(CS)での1年間の勉強や航空幕僚監部での勤務は往復に時間がかかったので、電車の中ではもっぱら本を読むことにしていた。

 読書に対する考え方が教養や識見を高めるという志向から次第に読みたいから読む、楽しいから読むと心境の変化が出てきたあたりのことはこの文面を見て「そんなことがあったか」と驚いている。

     まさにこれは,私の「タイムカプセル」の「自衛隊勤務と読書」ある。

 


自衛隊勤務と読書」

1.東京での電車通勤 

 東京における航空幕僚監部等での勤務は4年間であった。この間、西船橋から六本木までの電車往復に毎日約2時間を要した。通勤には鞄に必ず書物を1冊入れていた。その日の混み具合や座席に座れるかどうかで書物を読むことができた。

 身動きもできないほどの車内の時は書物を開かずその場の状況に合わせて、もっぱらじっと目を閉じて思索にふけることで過ごした。

2.軍事に関する書物への投資

 自衛官は軍事専門家だと気負ってはいないが、軍事に関する書物については、よく書店に行き、自衛隊や旧軍あるいは他国の軍事に関するものを手当たり次第に買って読んだ。

 国防の一端を担う一員として、軍事に関する識見を高めるためそれなりに投資をして勉強することは当然のことと考えており自己啓発の源泉になったように思う。

3.世界週報の定期購読

 自衛官生活で、いろいろな雑誌の中で十年以上継続して購読したのは、世界の政治・経済等の情報誌である「世界週報」だ。内容が最もしっかりしており、信頼できるもので自己の識見を高めるうえで有益であったと確信している。年間購読したため時事通信社から直接わが家に送られてくるので、毎週次号が楽しみな雑誌であった。

4.読みたいから読む、楽しいから読む

 読書も青年時代は教養を高めるためとか、自衛隊幹部になって階級が上がるにつれて、それ相応の識見を備えるために本を読もうと、目的意識が強かったように思う。どちらかというとやや肩肘を張って本を読んでいたところがあったようだ。

 定年が近づくにつれてそんな気負った気持ちはなくなり、本は楽しい時間を過ごし、心を豊かにするものだと考えるようになり、ごく自然な姿になってきた。そこには無理もなく、読みたいから読む、楽しいから読むといったように心境の変化が出てきた。

 

世界週報

● 世界週報は、時事通信社から発行されていた週刊の国際情報誌、大正7年から始まり、80年以上の伝統ある国際政治・経済の専門誌で各分野で定評のある学者、官民の専門家、記者が分析・解説していた。

● 今年 3月27日号(3月16日発売、通巻4287号)をもって休刊した。