その時何を考え立ち向かったか
自衛隊勤務において、本との関わりは非常に強かったように思う。退官後長年の夢だった書斎も設けた。今は家人から本の整理をせがまれている。整理するといいながら一日延ばしにしているわが心境は自分だけにしか分からないのかもしれない。
私にとっての自分の本は単なる紙やくずではなく、自分を支えてくれた何物にも代えがたいものであったように思える。多くは書き込みや赤線引かれている。これが愛着というものであろうか。
これは,私の「タイムカプセル」の「自衛隊勤務で血となり肉となった本」である。
「自衛隊勤務で血となり肉となった本」
1.本の引っ越し
自衛隊勤務において、わが家の引っ越しで最も重くて数の多い荷物は本であった。引っ越し手伝いに来た人は二十世紀梨箱があまりにも多いのに驚き、中身は何であろうと疑問に思ったにしちがいない。すべての荷物には荷札を付けて整理番号と品名を記入してきたので多分納得したのではなかろうか。
毎年、郷里鳥取県の湯梨浜町宇野から送られてきた鳥取名産二十世紀梨の箱も結婚以来一つづつ保存して荷物用に活用してきた。本を整理するのに梨箱を活用した理由は重さが適当で持ち運び易かったとにあった。
何しろ数が数十個と多いため官舎の階段を何回も上り下りしなければならないのが玉にきずである。お手伝いの皆さんには、私の五体の一部を毎回背負ってもらったようなものでお疲れさまとでしたと感謝の気持ちでいっぱいであった。
2.思い出が詰まった本
子供の頃から本を読むのは好きであったが、昭和48年指揮幕僚課程(CS)卒業後、とみに本を購入することが多くなった。通勤の帰路あるいは買い物の途中、本屋があれば必ず立ち寄って必ずこれはと思ったら手当たり次第に平均毎月十冊ほど買った。主として、戦史・戦記物・歴史・随筆・社会経済・人事管理に関する単行本が多かった。いつの間にやら蔵書も二千冊以上になってしまった。
顧みると、自衛隊生活とともに歩んだ書物の一冊一冊に思い出が重なる。家族は私が何よりも本を大切に取り扱うので不満らしいが、何といっても小遣い銭をはたいて買った本だけに忘れ難い貴重な宝物である。
3.自分の血となり肉となった本
自衛隊入隊以来、どうしたわけか本は他人や図書館から借りて読むことはなく、自分の金で買って読むものだと最初から決めてかかっていた。
図書館にはあらゆる種類の本が閲覧できるが、自分の血となり肉とするには自分で稼いだお金で買うことか゛一番だとの思いがあった。 したがって他人から借りた本を読んだことはまったくといっていいほほど記憶に残っていない。
自分で買った本は、自由に書き込みや赤線を入れることもできる。誰にもわずさわれることなく、読みたいときに読めるのが楽しい。この辺に自分で買った本に対する愛着があったのかもしれない。
4.書斎をもつのが夢
転勤の度に官舎に住んだ私にとっては、狭い部屋が本でさらに狭くなり、せめて蔵書を心置きなくおける書斎を持つことがささやかな夢であった。定年退職を控えて永住の地を家内の里である浜松に決め、自宅を作る段になって四畳半の小さな書斎でも設計図に入れることができて、長年の夢がかなえられることになった。
《 平成8年ごろ 書斎は狭いながらもわが城 》