航空自衛隊第1期操縦学生(13)  航空学生(操縦学生)採用試験の今昔

 私が航空自衛隊第1期操縦学生の採用試験を昭和30年に受験してから間もなく60周年を迎えようとしている。

   当時と 現在とでは、比較にならないくらい航空学生に関する諸制度は充実・確立され優れた操縦者養成制度となっている。 航空学生制度は、今や航空及び海上自衛隊における航空戦力の主力を形成する操縦者養成制度の一つとなっている。

    航空自衛隊操縦学生の創設期と比較して、どうのように充実したのか、私なりにまとめて見た。(創設期は「操縦学生」,その後「航空学生」と改称された。)

 

1.   採用試験内容の充実     

    航空自衛隊航空学生については、基本的に大きな違いは、第3次試験を設け、操縦適性検査及び医学適性検査を行うようになったことである。操縦適性検査は、実際に航空機(複座機)に搭乗して行う飛行適性検査及び面接検査が行われる。

 飛行適性検査は、経験豊富なパイロットが受験生を実機に乗せて飛行適性を判定する。パイロットしての素質があるかどうかを見極めるものであるとも言える。

    受験者の立場からすると、航空自衛隊の航空学生の採用試験は第3次試験の操縦適性検査が行われ、厳しいと受け止められているようだ。創設期の操縦学生が操縦課程で直面した多数の操縦免という不条理とも言え弊害が改善された結果であり、むしろ喜ぶべきことではなかろうかと理解している。 

    航空自衛隊航空学生採用試験に合格し、航空学生に任命されることは、飛行適性があると認められたものであり、学生としてふさわしくない者を除いて、一人前の操縦者になるよう徹底して面倒を見る方向で育成しているものと受け止められている。

  操縦者の養成は、他の分野と異なって厳しい試練を経て一人前になることに変わりないが、採用試験で操縦者としての適性検査に合格することは、将来パイロットへの道に立ち向かう誇りと自信を保持することに繋がり、極めて妥当な試験制度と言えるのではなかろうか。

 

2.航空学生課程の充実

    創設期の操縦学生の基本課程は、わずか10ケ月であった。現行の航空学生課程は約2年間であり、航空学生としての基礎教育を受ける。

 1年目は、防衛学、人文・社会科学、自然科学、英語など、将来の幹部自衛官に必要な知識を修得する。2年目は、航空力学、電子理論、航空英語、航空生理など、飛行教育に必要な知識を修得する。

    現行制度における航空学生の教育体制、教育内容、教育環境、クラブ課外活動等を見学する機会が2回あったが、創設期からすると全てにおいて完備し恵まれ、雲泥の差があったことを覚えている。それにしても創設期は10ケ月間で、駆け足ですべてを学習したことが驚きである。

    ただ、特別羨ましいと思ったことはなかった。よくある「貧しいけれどわが家」と同じで「粗末な隊舎等環境であったが、区隊長・教官と学生が一体になつて創り上げた」との思いがあったからであろうか。

 

3.人事管理と教育課程の整合

    操縦学生の人事管理と教育訓練体系が確立し、バランスが取れたものとなった。

    航空自衛隊操縦学生の創設期は、操縦学生基本課程は10ケ月、英語教育、飛行準備課程を経て、初級操縦課程に進んだ。

    諸般の事情及び飛行適性等から操縦課程の途中で、多数が操縦免となり、「操縦学生」、「飛行幹部候補生」を免ぜられ、そのままの階級で一般隊員となり不安定な身分であった。新制度発足後の大きな問題として浮かび上がった。

    現行は、2年間の航空学生課程を修了すれば3曹となり、飛行幹部候補生となって飛行準備課程及び操縦課程に進んでいくが、創設期は第1初級操縦課程で多くの者が操縦免となり、空士長の階級で一般隊員となった。階級と教育課程との関係から生じたものであった。1期生の多くの優秀な人材が新しい人生を切り開かんと転進した。

    現在は、こうした問題は人事制度面と教育課程とが整合し安定した運用制度となっている。

  

4. 採用人員数

 採用予定数は、毎年防衛省から発表される。平成25年度の採用予定数は海上自衛隊航空学生約70名(うち女子若干名)、航空自衛隊航空学生約40名(うち女子若干名)とある。採用人員数は諸々の防衛計画、人事計画、養成計画などから決められるものであろう。

 航空自衛隊の創設期の1期生の約200名余の人数は、神代の時代となってしまった。今年4月の入隊期が70期、1期生が来年入隊60周年、80歳傘寿を迎えようとしている。まさに老兵であるが、若い世代の入隊式・卒業式の写真に接すると元気になってくるものだ。

 

5.  操縦学生募集要項

    平成26年度航空自衛隊海上自衛隊航空学生募集要項は、防衛省募集ホ-ムぺ-ジから抜粋した。

航空学生とは

航空学生イメージ

航空学生とは、高校卒業又は中等教育学校卒業者(見込みを含む。)、高専3年修了者(見込みを含む。)及び高校卒業と同等以上の学力があると認められる男女を対象にした、海上自衛隊航空自衛隊のパイロット等を養成する制度です。入隊後は「航空学生」として、全員が学生宿舎で規則正しい団体生活を送りながら2年間の基礎教育を受け、続いて飛行訓練を中心としたそれぞれの段階の操縦課程に進みます。

募集要項

 
応募資格 高卒(見込含)21歳未満
受付期間 平成26年8月1日(金)〜9月9日(火)
試験科目

第1次試験

筆記試験(必須:国語、数学、英語、選択:地理歴史・公民・理科のうちから1科目):高等学校卒業程度適正検査合格発表:地方協力本部への掲示及び本人宛通知(合格者のみ)
第2次試験
口述試験
航空身体検査
防衛省では、平成20年9月1日(月)に航空身体検査の合格基準を改正(緩和)しました。このため、航空学生募集要項の航空身体検査合格基準を修正いたしました。詳しくは「航空身体検査 主な検査項目の合格基準」をご覧下さい。
合格発表:地方協力本部への掲示及び本人宛通知(合格者のみ)
第3次試験
海上:航空身体検査の一部
航空:操縦適性検査及び医学適性検査
合格発表:地方協力本部への掲示及び本人宛通知(合格者のみ)
試験日程 1次:平成26年9月23日(火)
2次:平成26年10月18日(土)〜23日(木)の間の指定された日
3次:平成26年11月15日(土)〜12月18日(木)の間の指定された日
合格発表 1次:平成26年10月10日(金)
2次: (海上)平成26年11月12日(水)
   (航空)平成26年11月7日(金)
3次:平成27年1月21日(水)
入隊時期 平成27年3月下旬〜4月上旬

 

入隊後の流れ

海上自衛隊航空学生

山口県下関市の東端に位置する「海上自衛隊小月教育航空隊」に入隊し、約4年間の教育、飛行訓練を経てパイロットや戦術航空士の資格を取得します。その後、部隊で約2年間の訓練を積み重ね幹部に任官します。
※戦術航空士・・・(Tactical Coordinator)通称TACO(タコ)と呼ばれ、戦術飛行の中心的役割を果たします。

航空自衛隊航空学生

瀬戸内海を望む山口県防府市にある第12飛行教育団に入隊し、約2年間、座学を中心とした基礎教育を受けます。教育修了 後、飛行幹部候補生として約2年間の飛行訓練を中心とした操縦教育を経て、パイロットの資格を取得。その証として「ウイングマーク」を授与されます。さら にその後約4ヶ月から1年で、戦闘機、輸送機、救難機に分かれて教育訓練を受けて、各部隊に配属されます。

 

 教育課程チャート図

 
 
航空自衛隊防府北基地ホームぺ-ジから転載
 
 《 第68期航空学生卒業式、平成26年3月 》 
 
 
 《 第70期航空学生入隊式 平成26年4月 44名 》