昭和の航空自衛隊の思い出(10) 空自創設60周年に思う

(つづき)

4.   創設建設の礎となった殉職隊員

❶  航空自衛隊の任務と礎となった殉職隊員   

    航空自衛隊の任務は主として空の守りである。創設60周年に際して、思い浮かぶのはこの間、任務遂行・訓練等で殉職した英霊のことである。

   航空自衛隊創設以来、殉職隊員は403柱とのこと。自衛官は、「服務の宣誓」の「身をもって、職務の完遂に努め」のごとく、いついかなる時でも国家・国民から託された使命・任務を完遂するには、毎日の厳しい苛酷な教育・訓練・演習、実任務で個人能力を練成、部隊戦力を強固にすることが必要不可欠である。

    自衛隊の厳しい任務を遂行するためには、最善の安全確保を図りながら平素から時には極限の練成訓練しなければ実力を発揮することができない。これが自衛隊というものである。

 時代とともに、新設部隊の編成、運用体制の向上、新装備機材の導入、各種も訓練の多様化など大きく変容しつつあるが、 航空自衛隊60周年を通じて変わらないものがある。それは国家、国民に忠誠を誓い、その負託に応えようとする自衛官の存在であろう。

    私が奉公した昭和の時代と今日と全く同じである。時代を超えた共通の国家・国民に対する自衛官の使命・任務であり、普遍の責務であるからだ。

 

国民の支持と後顧の憂いのない体制づくり

    3.11の東日本大震災自衛隊の活動以来、国民の防衛意識、自衛隊に対する信頼は、極めて高いものがあるが私が自衛隊に勤務したころと比較すると雲泥の差である。

 昨今の集団自衛権の容認閣議決定に伴う世論や議論に見られるごとく、国家・国民を守る自衛隊の存在自体を否定する論はさておいて、自衛隊が効果的に任務を遂行できる、後顧の憂いのない体制づくりの面から見ると、まだまだの感を強くする。

 世界のいずれの軍隊といえども、その国家・国民から負託された使命・任務を全うするために交戦規定(部隊行動基準)・法制・処遇などの体制が確立されている。こうした観点で見ると、政争の駆け引きなど本当に任務に当たる自衛官の立場になった議論が少ないのが残念である。

  昭和の航空自衛隊で、24時間勤務の防空司令所の要撃管制官として勤務した折は、日夜、レ-ダ-サイトにおいて警戒監視を続けつつ、戦闘航空団のパイロットと連携して戦術・戦技の研究と練成に励んだ。いつの時代も警戒管制部隊は不便な離島等で任務を果たしている。 

 転じて、戦闘航空団の司令部人事班長として勤務した折は、飛行訓練中はいかなる事態にも対処できるよう基地内に待機した。夜間といえども「訓練終了」全機着陸の放送を聴くまでは絶対に持ち場を離れなかったものだ。日常の飛行訓練においても管理部門といえどもそうした心構えと準備態勢を維持していた。これが戦闘航空団というものである。

  志し半ばにしてその職に殉じられた403柱のご英霊に対して謹んで哀悼の誠を捧げつつ、航空自衛隊の更なる発展と充実を祈念する。