がんとの闘い(27)   がんと付き合いながらの生活

1.    がんについての受け止め方 

    がんは「死に至る病」ではなく、治療しながら、「付き合っていく病」になった。

    私はがんと診断されてから、周りに自分はがんになったことを自分の口から告げ、治療を受けていることを公言してきた。

      昔は難しい病気に罹れば、家庭内にとどめ家族以外には絶対に口外せず、硬く守りを固め「隠し通す」のが、世間一般の風潮であった。

     ましてや、 がんは「不治の病」・「死に至る病」「死を待つ病」と世間一般が受け止めており、一度がんに罹ればあらゆる面でマイナスとなることが多かったのではなかろうか。

    働き盛りの人には、「戦列外」の宣告であり、仕事からも外され、生活の基盤が一変に崩壊する危険を秘めていたものである。

    医学の進歩により、まだまだ未解明の部分があるにしても、かなり解明されて予防と早期発見、医療技術の向上により「治る病気」になりつつある。 

    医師からの患者への告知も一般的となった。つい最近まで家族も本人に病名を告げないことが「いたわりの心」「家族の愛情」と考えてきた面がある。末期がんならずとも本人を中心に家族全員でがんと向き合うようになった来た。

 

2.  私のがんとの付き合い方

      私の場合は、平成2年航空自衛隊を定年退職、自算会勤務も卒業したが、人生は「生涯現役」と考えている。

    がんと診断されだからと言って、自分の人生が終止したわけてなく、がんと上手に付き合いながら最後まで自分に与えられた役割を果たしていこうと生活している。    

    したがって、がんの診断、治療中だからと言って、他の人に迷惑がかからないで役割が果たせるかぎり、現に担っている役割、責任を放棄しないで果たす考えである。

    間もなく79歳となる。ここまでくると、「報恩」の念のみである。少しでも役立つことがあれば命ある限り役立ちたいと思っている。

      

3. 治療と 仕事が両立する社会

    3月4日の産経新聞が、がん患者について「治療と仕事が両立の社会を」と社説で提言しているのを読んで流石と前向きな内容に共感するところがあった。

 このたび厚生労働省が、がん患者・経験者の就労支援のあり方について検討会を設けたとのことである。

  その背景には、仕事を持ちながら通院治療する患者は32万人に上るようになったこと。患者の約3割が働く世代であること。診断から5年経過した生存率は6割に迫り、初期発見なら9割に近くなったことなどである。

 私も今までがん病棟に検査・手術で3回入院して、働き盛りの患者にも接してきた。がん治療で苦闘している姿を身近に見てきた。ぜひとも仕事と治療が両立する社会が確立されてほしいと切望する。

 それには社会全般のがんに対する理解、働く職場における勤務時間・仕事量への理解、通院・入院治療についての便宜と協力支援や処遇、がん経験者の職場での処遇など様々な課題があるであろうが、前向きな施策が社会に定着して欲しいものだ。

 一方、がん患者の7割は高齢者である。歳だからと言わないでがんとうまく付き合い心豊かな生活を送りたいものである。たった一度の人生だ。しょぼくれて暮らす人生はつまらない。命ある限り何かに役立つ存在でありたいものである。